ロンドン食と農の便り(Monthly Report)

ロンドンの食とイギリスの農業について毎月レポートを書きます。

第27回 10ポンドでランチのできる日本食レストラン

ロンドンの外食は高い。ランチでも、料理と飲み物にサービス料を加えて18ポンド(2700円)くらいが相場だ。事務所近くに10ポンドの定食があって重宝していたが、最近12ポンドに値上がりしてショックを受けた。

ロンドンでは10ポンド出してもご飯が食べられないのか。。

絶望の中、ロンドンの雑踏を彷徨っていたら、そこには予想外に素敵なお店との出会いが隠されていた。

 

1.太郎(Soho)

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ロンドンで最もごちゃごちゃした街ソーホーの一角に「太郎」の看板を発見。微妙な似顔絵が目に焼き付いて離れない。どんな店なのか、恐る恐る覗いてみる。

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店内は大賑わい。家族連れに友達同士、ビジネスマン風の人もいる。人種も多様だ。みんな楽しそうに食事していて、するするっと店内へ引き込まれていく。

ところで、例の似顔絵はなんだったんだろうと思ったら、、、

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目の前に、「太郎」さん。

名前を確認したわけではないが、彼が太郎さんでなければ、果たして誰が太郎さんであろうか。

 

テーブルは満席のため、カウンターに通される。 席の向こう側はキッチンとなっている。オープンキッチンというよりは、客席と厨房を隔てる壁を作り忘れたかのように、雑然とした厨房が丸見えとなっている。

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メニューを拝見。鶏照焼丼7.90ポンド、スパイシーソースをかけても

8.90ポンドだから、10ポンド以下に収まる。今日のランチはこれにしよう。

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目の前の厨房にはスタッフが6人ぐらいいて、焼きそばにカレー、餃子やラーメン、注文を次々と捌いていく。あ、チキンをザクザクと切っている。これは俺の注文だな。

5分も経たずに鶏照焼丼が目の前に。チキンが山盛り。2ポンド足すとさらにチキン倍増らしいが、そんなにたくさん食べられないわ。社員食堂のようなボリューム感だ。

 

ところで、「太郎」さんと俺。店員にもお客さんにも日本人が見当たらない中で、お互いにかなり気になっていた模様。食事のあとになんとなく会話が始まった。

太「どこにお住まいですか」

俺「ロンドンに2年いるんですけどね。この店は初めてですわ。ボリューム満点で美味しかったですよ。」

太「うちもね、そんなに恥ずかしいもの出してるつもりはないんだけどね。」

なんとまあ日本人的な謙遜と自信。いろんな人種に囲まれて、太郎さんも頑張ってるんだな。 

 

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スパイシー鶏照焼丼8.90ポンドにサービス料10%の80ペンス。10ポンドで30ペンスのお釣りが戻ってきた。

太郎さんとお友達になると、こっそり味噌汁を持ってきてくれたりして、ちょっと得した気分。また行きますよ。

 

2.東京ダイナー(Leicester Square)

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昼も夜も人通りの絶えない中華街の東端に日本食レストランがあると聞いて、行ってみた。

「東京ダイナー」というちょっとカッコいい名前だが、店内は早稲田の定食屋のようで、いつでも気軽に立ち寄れる雰囲気だ。

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お客さんも学生さんかと思われる若者が多い。早稲田と違っているのは、俺以外は全員イギリス人だという事実。

 

ランチメニューを見てみよう。茄子の揚げびたしセットが£8.50。惹かれますな。

隣のテーブルで、ビジネスマン風のイギリス人がメニューも見ずに「ナスノアゲビタシ、プリーズ」と 注文している。常連さんなんやね。俺もそれください。

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料理を待っている間にお茶とお茶うけが出てきた。こんなの頼んでないよと思ったら、どのテーブルにも運ばれていて、店からのサービスのようだ。他の店だったらこれだけで£3とられるわ。なんてお客にやさしい店だ。

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ナスノアゲビタシ定食登場。酢の物もついてきて、懐かしい日本の味が楽しめました。

 

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この店のユニークなのは、店内のいろんなところに「チップはいただきません!」という張り紙がしてあること。メニューにも「No Tip!」と明記されている。日本のスタイルでやっているので、チップは受け取らない主義だということだ。なにもそこまで頑なに拒否しなくても、、と思って、お店のお姉さんに聞いてみた。

俺「なんでチップを受け取らないんですか」

姉「料金の中にサービスも含まれてるからね」

俺「くれるものは貰っといたらいいんじゃない」

姉「特別なサービスをしてるわけでもないのに、お客さんから余計なお金貰うなんて気持ち悪いわ

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下町っ子のような歯切れよさにこちらもすっきり。美味しいランチをいただいた感謝の気持ちだけ残して、お釣りの1.50ポンドは持って帰ろう。

 

3.名古屋(Marylebone)

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ロンドンでもっとも賑やかなOxford Streetから北に徒歩10分ほど、オフィス街の広がる真ん中に「Nagoya」が出現する。控えめな外観なので、赤ちょうちんがなければ気づかずに通り過ぎてしまうかもしれない。

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店内は純和風の小料理屋的な造り。昭和の時代がまだ留まっているような佇まいだ。イギリスには昭和時代はなかったけど。

 

こちらもなんだか落ち着いてきた。じっくりとメニューを確認する。

チキンカツ定食とから揚げ定食が8.90ポンド。では大好物のから揚げにしよう。

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サラダもついて、食後のフルーツも出てくる。こうやってゆったりと食べていると、新橋の路地裏に隠れて昼休みを過ごしていた頃を思い出す。

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目の前の板前さんが難しそうな顔をしているのが気になる。思い切って声をかけてみる。

俺「なんでこの店は『名古屋』なんですか」

板「えっ、なんですか?私が名古屋の出身なんでね。味噌カツとかメニューにあるでしょ」

俺「あちゃー。味噌カツにすればよかった」

なんだかぎこちない会話で始まってしまったが、話しているうちにだんだん打ち解けてくる。

板「うちは〇〇さんみたいな高いお金とる店じゃないからね」

俺「気軽にランチできますね。ありがたいお店ですわ」

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会話が止まらなくなってきたが、次の予定があったので途中で離席。お釣りの1.10ポンドは、これからもお世話になりますという印にテーブルに置いていこう。

 

10ポンドでランチのできる日本食レストランは、どこも人情味にあふれるお店であった。

入れ替わりの激しいロンドンのレストラン業界ではあるけれど、こうやって地元に根付いて頑張っているお店は、探せばまだまだあるのかもしれない。ちょうど今日、11月24日は、いいにほんしょくで「和食の日」だそうだ。ロンドンにも「いいにほんしょく」がたくさんあることを、もっともっと皆さんにお伝えしていこう。

第26回 イギリスでみつける地域名産品

イギリスはどこへ行ってもFish & Chipsしか食べるものがなくて、がっかりするね~

というのはよく聞く話。これはある意味真実だ。私自身、イギリス国内を旅行するとFish & Chipsの食べ過ぎでいつも(さらに)太って帰ってくる。

ほんとうにイギリスには地域名産品といえる食べ物が無いのか?今回はロンドンの大手スーパーマーケットを巡りながら、実態を探ってみることにしたい。

 

1.スコットランドの牛肉

巨大な倉庫で食品や日用品を大量に売るCOSTCO(コスコ)。アメリカ資本だが世界中に展開し、日本にもイギリスにも巨大店舗を構える。ちなみに、日本で「コストコ」としてお馴染みのこのお店、英語では T を発音しないで「コスコ」と呼ばれている。

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ロンドン郊外にあるCOSTCOには、英国産にこだわる商品が多数揃っている。牛肉もすべて英国産で、特にScotch Beef(スコッチビーフ)を推しているようだ。

イギリスの最北端に位置するスコットランドは、広大な草原や荒涼とした自然といった英国人にとっての原風景の残る地域だ。そんな大自然の中で作られたスコッチウイスキーは味わいに深みがあるでしょう、ということで世界的に有名になったが、同じイメージでもってスコッチビーフのブランド化も進んでいるようだ。

 

早速購入してきたスコッチビーフの塊肉。ラベルの隅に、丸くて黄色いマークが付いているのにお気づきだろうか。このマークこそが、今回のレポートのテーマである。

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黄色いマークをさらに拡大してみよう。Protected Geographical Indicationと刻まれている。略してPGIと呼ばれるこのラベルは、日本語に直訳すると「保護された地理的表示」。特定の地域で生産・加工された農産物や加工食品で、その地域特有の品質や特徴をもち、高い評価を得ている製品をEU政府が認証したもの。

簡単にいうと、その地域でしか生産できない質の高い特産物に、国(EU)がお墨付きを与えた証拠である。例えばスコッチビーフでいえば、子牛が生まれてからお肉になるまでの一生をずっとスコットランドで過ごす。伝統的な餌やりの方法を守っているので肉の品質もいいという。

このマークを探し歩けば、イギリスのおいしい名産品に次々と出会えるのではないか??

 

次の名産品探しに出る前に、スコッチビーフを焼いておこう。既に糸でグルグル巻きにされている牛肉にフライパンで焦げ目をつけ、オーブンに放りこんで1時間。

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できあがり!いい色のローストビーフになった。この柔らかい肉質がスコッチビーフの特徴なのかな。グレービーソースをつけていただきます。

 

2.ウェールズのラム肉

次にやってきたのは、以前にもお世話になったドデカWaitrose。これまでに見たスーパーの中でもっとも品揃えがいい。

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肉コーナーには、牛肉、豚肉、鶏肉といっしょにラム(羊)肉が並んでいる。イギリスはラム肉の大生産国となっていて、豚肉と同じくらいの生産量がある。

棚に並ぶラム肉はすべて英国産。その中に、例の黄色いマークを発見した。

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Welsh Lambとはウェールズ地方のラムのことだ。イギリス西部のウェールズ地方は、未開発の自然が残るミステリアスな場所。以前レポートした、羊さんたちが道路にはみ出してきているところ。あそこがウェールズ。

larrytk.hatenablog.com

Welsh Lambは、ウェールズで育てられた羊であるのはもちろんのこと、ウェールズ固有の品種をルーツに持つとか、自然のままの草原で育てられるとか、高い肉質基準を満たしているとか、いろいろな要件をクリアしたラム肉のみにマークが与えられるとのこと。

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果たしてどのように優れているのか、実際に確かめてみることにしよう。

ローズマリーを乗せてフライパンでジュージュー。焦げ目がつけばできあがり。独特の風味をもつラム肉はちょっと苦手という日本人も多いが、ツボにはまると止められなくなる。Welsh Lamb はしっかりとした歯ごたえと濃厚な味が特徴。ラム肉ファンにはたまらない羊界の王様だ。

 

3.ポークパイ

店内を歩き回っていたら、パイ製品コーナーにもうひとつ黄色いマークを発見した。

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その名は、Melton MowbrayのPork Pie(ポークパイ)。Melton Mowbray(メルトン・モーブレイ)はイギリス中部にある小さい町の名前だ。

なぜパイに町の名前がついているのか。そこがポイントのようだ。

 

Melton Mowbrayのポークパイがただのポークパイと違っているのは、型にはめずに焼くので、外側が弓形(bow shape)となっていること(??)、熟成されない(uncured)豚肉を使っているので、詰め物の肉がローストポークのような灰色であること(???)だという。どのあたりがすごいのかにわかには理解できないが、とにかくいろいろとこだわりがあるらしい。

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黄色いマークを付けることができるのは、Melton Mowbray及びその周辺の地域で作られたポークパイに限られている。この地域でポークパイが作られた歴史は中世にまで遡るということだ。当時、このあたりに広がる草原へキツネ狩りに出かけるGentlemanが、おやつ代わりにポケットへ忍ばせたのがMelton Mowbrayのポークパイの起源だという。

なんてイギリス的な!!

 

みなさんも、旅行ついでにMelton Mowbrayへお立ち寄りの機会があれば(ないと思うが)、こだわりポークパイの素朴な味をぜひお確かめいただきたい。というか、ロンドンのスーパーでふつうに売っているので、ぜひお試しください。

 

4.ロンドンのスモークサーモン

Whole Foodsはアメリカから来たスーパーマーケットだが、英国のオーガニック食品や地場産品など、こだわりの商品を取り揃える。

スモークサーモンのコーナーにも、お高めのこだわり商品が並んでいる。その中でもひときわ値段の張るのが、黄色いマークの光るH Forman & Son社のスモークサーモンだ。

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原料のサーモンはスコットランド産だが、スモークハウスはなんとロンドンにあるという。"London Cure"(ロンドン燻製)と銘打たれたこの製法は、100年以上も前からロンドン東部のスモークハウスで守られてきたそうだ。

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London Cureでは、とれたてのサーモンをスコットランドから48時間以内にロンドンへ運び、オーク材で燻蒸し、人の手で皮と骨を取り除いて一枚ずつ丁寧にスライスしているという。

Forman家のひい爺さんが始めたこだわりの手作り製法を、子どもたちが今の時代まで受け継いできたところ、とうとうEU政府のお墨付きを貰うまでに至ったということやね。

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こだわりサーモンを試食してみよう。大量生産される薄切りサーモンと違い、肉厚があって表面がザラザラしている。しっかりした塩味もこだわりの味付けのようだ。

 

ということで、今回は4種類の名産品をご紹介できた。EU認証マークはイギリスの84商品につけられているというから、探せばまだまだ見つかるのだろう。

おっと。イギリスの名産品としていちばん有名なスティルトンチーズを紹介するのを忘れていた。しかし、イギリスのチーズ事情はなかなか奥が深くて、ここには書ききれない。次回に改めてご紹介することとしよう。

第25回 ロンドンで買える世界の食材

ロンドンは人種の博物館。街を歩いていても、地下鉄に乗っていても、英語以外の言語が常に聞こえてきます。そして、人種のバラエティに呼応するように、世界からあらゆる食材が集まってきます。世界中の食材が街中でいつでも手に入るなんて、すごく魅力的じゃないですか。

 

1.ポーランド

ポーランドは、2004年にEUへ加盟して以来イギリスへの移民が急増し、現在1千万人のポーランド人がイギリスに住んでいると言われています。移民の中で最大勢力となったポーランド人は、住居地域も広がっているようで、街中の至るところにポーランド食材店があります。

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ロンドン中心部から西へ車で40分くらいの Greenford (グリーンフォード)の町。日本人の多く住む Ealingのお隣で、様々な移民の住む町です。いろんな場所でポーランド店を見つけるたびに店内を覗いてきましたが、ここは私が見つけた中で最大のマーケットです。

 

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店内はあらゆる種類のポーランド産食品で埋め尽くされていました。ヨーグルトもインスタントラーメンも生卵も、ぜんぶポーランド産。スーパーマーケットが丸ごとポーランドから運ばれてきたみたいです。

 

対面コーナーには魚の燻製が並んでいました。日本の居酒屋でよく見かけるような商品がたくさんあってびっくり。

f:id:LarryTK:20170830145439j:plain f:id:LarryTK:20170830145525j:plain 鮭とばに出会えるとは

圧巻だったのはハム売り場。

f:id:LarryTK:20170830145620j:plain ハムがぎっしり

ショーケースの中があらゆる種類のハムで埋め尽くされています。しかもどれも美味そうだから困ります。店のおばさんがひとつひとつの特徴を丁寧に説明してくれました。

 

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先ほどの鮭とばと、ロースハムと牛タン煮こごりを購入して、ルンルン気分で帰宅。さっそく試食ですね。ビールは冷えてるかな。

 

2.アラブ諸国

ロンドンの街中を歩いていると、顔を布(ブブカ)で覆った女性をたくさん見かけます。イスラム教の人々ですね。イギリスにはイスラム教徒が300万人いると言われています。イスラムの皆さんは、実はとても外出好き。若い女性たちが楽しくお買い物する姿や、夜中に家族連れでレストランに入っていく光景をよく見かけます。

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Ealing (イーリング)にも、日本人だけでなく多くの移民が住んでいます。ポーランド食材店、ケバブ屋、タイ料理、アフリカンアメリカンの経営する散髪屋さんなど、様々な店が並ぶ中に、とてもきれいな外観のアラブ系スーパーマーケットがありました。

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アラブ系スーパーマーケットの特徴は、店先に並ぶ色とりどりの果物と野菜と、ハラルの肉売り場。以前も特集しましたが、アラブの人々はイメージと違って野菜好きなんですよね。

larrytk.hatenablog.com

 

この前の店と同じく、店内にはピクルスがわんさか。

f:id:LarryTK:20170903152632j:plain ピクルスずらり

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通路にまでピクルスの列が。日本の梅干しみたいにして売ってます。2ポンドと書いてあるけど、ほんまかいな。

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向かいの棚には、豆類の袋がずらり。ここまでいろいろ種類を取り揃える必要があるのかなと思ってしまいますが、きっと食へのこだわりが強いんですね。

'ADZUKI'と書いてあるのは、どうやら日本の小豆のようです。「アズキ」が世界共通語になっているとは知らなかった!

 

アラブ系マーケットは未知の世界でとても面白いけど、さて何を買おうかと店内を見渡すと、意外と手にとれそうなものがない。いろいろ迷ったあげくに野菜だけ買って出てきました。

 

3.韓国

イギリスに住む韓国人は4万人。6万人いる日本人(在留邦人)よりすこし小さめの勢力です。しかしながら、イギリスの韓国コミュニティには大きな特徴があります。

ロンドン中心から電車で30分ほどのNew Malden (ニュー・モルデン)という駅を降りると、そこはまるでソウルのよう。多くの韓国人がこの地域に居住し、大規模なコリアン・タウンを形成しているのです。

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New Moldenにはたくさんの韓国食材店や韓国料理店が集まっています。その中でひときわ賑わっているのがHMartというスーパーマーケット。韓国人のお客さんに交じって遠くから車で買い物に来る日本人もたくさんいます。私もその一人だ。

 

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韓国マーケットの陳列棚をみると、なんだかホッとします。食材の種類が日本のマーケットと似ているからでしょうか。特に、野菜や果物の品揃えが懐かしさを呼び起こします。

ロンドンの日本食材店も立派ですが、 こんなふうに一つのお店ですべての食材が手に入るような大型マーケットは無いんですよね。うらやましいな。

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もちろん、韓国スーパーですから、キムチと唐辛子の品揃えは半端ない。どのキムチを買おうか迷ってしまいます。

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鮮魚コーナーも種類豊富。現地スーパーの魚は目が濁っているとお嘆きの皆さん。ロンドンにも新鮮な魚はあるんですよ!

 

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韓国マーケットのいちばんのありがたみは、スライス肉が手に入ることです。店内のスライス機で一日中シャコシャコ肉を切っています。これも現地スーパーでは手に入らない逸品です。

 

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スーパーマーケットをぐるぐる廻っていたら、お腹がすいてきました。New Malden には韓国レストランもたくさんあります。まずはチゲ鍋でもいただくことにして、後でお買い物に戻ってくることにしましょう。

第24回 ロンドンのお勧めフードショー

 ロンドンではたくさんの食品展示会が開かれます。'Trade only'(業者限定)で一般の人たちが入場できない展示会もありますが、入場料を払えば誰でも参加できるイベントもいろいろあります。

どのイベントも入場料はだいたい£15~20くらい。会場内で料理を食べたり食材を買ったりするには別途お支払いが必要ですが、いろいろな料理を気軽に試せたり、お店で買うよりも安く買えたりすることで、お得感を生んでいるようです。

さて、どれくらいの満足感が得られるものか、早速イベント巡りに繰り出しましょう。

 

1.Taste of London

一年で最も日が長く、夜10時になってもまだ空の明るい6月半ば、Regent's Park(リージェンツパーク)の一画を仕切って 'Taste of London'(ティスト・オブ・ロンドン)が開かれました。

 

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会場内はすでに賑やかな人たちでいっぱい。青い空と緑の芝生と白いテントに包まれて、「ロンドンの短い夏を楽しんでいる感」が溢れ出ています。

Taste of London のウリは、普段はなかなか行けない高級レストランが小皿で料理を提供していて、気軽に食べ歩きできること。ロンドンの最近のレストラン事情を反映して、多国籍なレストランがずらりと並びます。

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小皿料理はだいたい£7くらい。それほど安いわけでもありませんが、レストランに入って食事をすれば£50はかかるかも、と思えば、あれもこれもと手が出てしまいます。

日本料理は無いのかな、と会場内を見渡したところ、

f:id:LarryTK:20170820080916j:plain 大賑わい

地元で大人気のRoka(ロカ)がありました。店内はお客さんで溢れていて肝心の商品が見えませんが、牛串焼きなどを売っている模様。これが日本食かどうか議論はあるとしても、いずれにしても大繁盛しておりました。

 

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Taste of London のもう一つのウリは、いろいろなお酒も楽しめること。ロンドンではビールを凌ぐほどにジンやウォッカが流行っていて、会場内にもクラフトジンなどがたくさん出店していました。

f:id:LarryTK:20170813231714j:plain f:id:LarryTK:20170813231751j:plain かっこいい!

最近ロンドンでは、どのバーに行ってもFever-Tree(フィーバー・ツリー)のトニックウォーターが出てきます。会場限定のジントニックをおねえさんに作ってもらいましょう。

 

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'Taste of London'では、食品の頒布・販売をする業者も多く出店しています。中華系調味料がセットで£5と聞いて、フラフラと購入。 怪しげな健康食品もいろいろと試せます。

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「味!」のバナーが目立つ醤油屋さんを発見。日本から醤油を輸入して、トリュフ味をつけて販売しているのだとか。普段はなかなかお目にかからない商品に出会えます。

 

f:id:LarryTK:20170813231153j:plain f:id:LarryTK:20170820080816j:plain まったり

食べて、飲んで、買って、くつろいで。あらゆる角度から食を堪能できるイベントでした。次回は11月にTobacco Dockという屋根のある会場で開催されるようです。こんどはまた違った食の楽しみ方を見せてくれるのでしょうか。

london.tastefestivals.com

 

2.BBC Good Food Show

これは昨年11月のイベント。随分古い情報ですみません。Kensington(ケンジントン)にあるOlympia(オリンピア)という会場でBBC Good Food Show(グッド・フード・ショー)が開催されました。

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BBC Good Food Show は、質の高い食材がスーパーで買うよりも安く手に入ることで有名。会場には、大きな買い物かごを持参してきた人たちが次々と集まってきます。みんな買う気満々だ!

 

このイベントには世界各国の食材が集まっていて、日本食材もたくさん出店しています。すこし覗いてみましょう。

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キッコーマンのブース。ごはんに醤油をかけただけの試食品が配られています。イギリス人に醤油の味を知ってもらうには、これがいちばん効果的なのかも。

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日本から来たという米菓やさん。給水機みたいなところから、'あられ' が転がり出てきて、なんだか面白い。イギリス人もなんだなんだと集まってきます。

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味噌やさんとお茶やさん。いずれも日本では見ない英国ブランドですが、厳選された日本産の食材を使っていることを強調していました。

 

BBC といえば、Saturday Kitchen(サタデーキッチン)を代表とするお料理番組が有名。会場内のホールにもキッチンスタジオが作られていて、愉快なトークと華麗なクッキングデモが披露されていました。とてもテンポがよくて、本物の番組を見ている感覚に包まれます。

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いつの間にか、私も大量の商品を両手に抱えていました。オリーブオイルにジンジャーリカー、ポップコーン、チョコレート・・・

そろそろ会場を出ようかというところで、長い行列を発見。何だろなと思いながら行列の後ろにくっついてみます。

f:id:LarryTK:20170820080703j:plain  f:id:LarryTK:20170814061330j:plain どっさり

すると、大きな袋を手渡されて、いろんな試供品が次々と投げ込まれます。あっという間に袋いっぱいに。お土産袋だったんですね。満足感さらにアップです。

 

ロンドン会場も十分な賑わいでしたが、イギリス第二の都市 Birmingham(バーミンガム)では年2回開催され、地元の人たちがこぞって押し寄せて大活況を呈しているそうです。イギリス人の心をしっかりと掴んでいるのですね。

今年のロンドンでは、 'Feast'(饗宴)と題したイベントが9月にTower of London(ロンドン塔)行われるようです。歴史ある会場で開かれるFood Sowがどんな趣向になるのか、これまたとても気になりますね。

www.bbcgoodfoodshow.com

 

3.Night Market

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今年6月、Night Market(ナイト・マーケット)という初めてのイベントが、Kensington Gardens(ケンジントン公園)の一画で開かれました。

 

Nightといっても日は長いので、「夕涼み市」といった雰囲気。Evening Standard(イブニング・スタンダード)という無料夕刊紙が主催していて、新聞や地下鉄の広告で大々的に宣伝されたので、多くのロンドン市民が気になっていたのでしょう。会場は大変な混雑ぶりでした。

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イベントの雰囲気は、Taste of Londonと似た感じ。規模は少し小さめで、食材の物販が無く、レストランが中心でした。芝生と周囲の緑の美しさはこちらの方が上かな。

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なにしろすごい人混みで、お店で何を売っているのか見えない状態。中でも一番列の長かったロースト肉のお店にエイヤッと並んでみました。

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並ぶこと約30分。自然に前後の人同士で会話が生まれたり、周囲の人と冗談を言い合ったりして、並んでいる間も意外と楽しく過ごせるところにロンドンらしさを感じます。

f:id:LarryTK:20170814061727j:plain 列に並んでる間にカクテルを買いに走る

ようやくゲットした豚肉ローストとウォッカトニックが本日の夕食。賑やかな広場で食べるのは楽しいですね。

 

ほとんど列に並んでいただけという気もしないでもないですが、なぜか満足して会場を去ります。ようやく日が沈んで、本物の 'Night Market' になっていました。

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Taste of Londonとお客の取り合いにならないか心配でもありますが、ロンドンの夏の風物詩としてこのイベントも定着してくれるといいですね。

 

第23回 甦った! バラマーケット

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6月3日土曜日の夜10時過ぎ、白いバンがロンドン・ブリッジを暴走し、車内から飛び出してきた3人がバラマーケット(Borough Market)を襲った。マーケット自体は閉店後だったものの、マーケットを取り囲む多くのパブやレストランは大いに賑わっている時間帯であった。

事件のあと、バラマーケットは実況見分のため閉鎖を余儀なくされた。しかし、わずか11日後の6月14日、多くのファンが見守る中でマーケットは力強く再開した。

 

<バラマーケットの再開を伝えるニュース>

www.theguardian.com

 

私も、これまで幾度となくバラマーケットを訪れ、また、多くの方々をご案内してきた。私とともにバラマーケットをこよなく愛してきた皆さんに、事件から1か月以上経ったマーケットの現在の様子をご報告したい。

 

1.バラマーケット参上! 

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バラマーケットの最寄り駅は地下鉄London Bridge駅。電車を降りたあたりから、今日は何を食べようかなどとワクワク感が抑えられなくなる。今回は事件後初の訪問というドキドキ感も加わり、気持ちが高まって足がもつれそうになる。

 

着いた!

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まだ午前中だというのに、すごい人出だ。事件前とまったく変わらない混み具合。

ストールはどうだろうか。お店の数が減ったりしていないか、さっそくマーケット内をグルグルと回ってみる 。

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あるあるある。

チーズの量り売り屋さん、3本まとめ売りのソーセージ屋さん、パルマハムのスライス屋さん、国内各地から選りすぐった果物屋さん。どこもここも、バラマーケットを訪れるたびに覗いて回るお店だ。いつもの場所、いつもの笑顔でいつもの商品を売っている。私もいつものように一つ一つのお店を覗いて回る。

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狭い道路を挟んだ向こう側には、世界各国の料理がずらりと並ぶ。おじさんが豚の丸焼きをグルグル回している。

ちっとも変っていない!

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ちっとも変わらないのは、マーケットを取り囲むパブやレストランも同じだ。人気のモンマスコーヒーには相変わらず長蛇の列。

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後日訪れた夜のバラマーケット。マーケットが閉店した後も、お店から溢れ出てくる人、人、人。パブ の中も外も、ビール片手に大声でしゃべり続ける人々で埋め尽くされている。

 

2.事件を乗り越えて

バラマーケットはすっかり賑わいを取り戻していた。もう事件の記憶は消えてなくなったのだろうか。

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'#LoveBorough' と書かれたハートマークのロゴ。マーケットのいろんなところにポスターがペタペタ貼ってある。素敵な手書きのロゴもあった。

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お店のレジにも同じロゴが。事件の被害者へのドネーションを呼び掛けている。

ストールに立つおじさんに声をかけてみた。「こうやってみんなで美味しいものを買いに来てくれるのが、いちばんありがたいよ。」

あんな事件があったからこそ、みんながバラマーケットをもっと好きになって、世界中からもっとたくさんの人々が集まってくる。ここにイギリスの力強さがある。

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ロゴの上にメニューのチラシが覆い被さっている。事件を乗り越えて前に進んでいこうとする逞しさを感じるのは、深読みのしすぎか。

 

3.あとは楽しむ!

それでは我々も、大いに楽しんでバラマーケットの復興に寄与することにしよう!

f:id:LarryTK:20170716173321j:plain f:id:LarryTK:20170716173359j:plain まずはシャンパンで喉を潤す

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大きなパエリア鍋から次々と試食させる光景を思い出す人は多いだろう。実はこの店の看板にデカデカと宣伝されているのは、イカのカラマリだったりする。塩コショウたっぷりの揚げたてカラマリをふーふー冷ましながら頬張る。

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生牡蠣を食べさせる店はマーケット内に何軒もあるが、こんなにデカい牡蛎を剥いてくれるのはこの店だけだ。

f:id:LarryTK:20170716174053j:plain メインデッシュの前にワインを補充

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ソルト・ビーフ(Salt beef: 塩漬けビーフ)は、実は隠れたロンドン名物ではないかと思っている。コンビーフの別名だと言われているけど、ぜんぜん違う!

パンの上にビーフを山盛りに積み上げて、サンドイッチにして食べる。食べにくいことこの上ないが、それでもまた食べたくなる。

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フィッシュ・アンド・チップス(Fish & Chips)の店の前にはいつも長い行列。それでも並ぶ価値はある。'Proper Fish & Chip' (正統派フィッシュ・アンド・チップス)の宣伝は決して誇張ではない。

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食後のアイスクリーム。あれこれ試食しているうちにお腹いっぱいになってくるから要注意。

 

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家に帰って、買ってきたモッツアレラチーズとソーセージで軽く一杯。

いろいろご紹介したが、バラマーケットの魅力はまだまだ語り尽くせていない。もっともっとたくさん通い続けないとね。

第22回 速報 オープン・ファーム・サンデー開催!

6月11日、年1度の農業イベント'Open Farm Sunday'(オープン・ファーム・サンデー)が開催された。

Open Farm Sunday とは、普段は都市住民との交流もない一般の農家が、年に1度だけそのゲートを開放し、農業の現場を見てもらうことで、消費者との距離を近づけようというもの。

2006年に始まり、今年で12回目となるこの取組は、英国全土で300以上の農家に20万人以上の市民が訪れる大掛かりなイベントとなっている。

Open Farm Sunday Logo

 

<農家訪問>

今年のオープン・ファーム・サンデーに家族を連れて訪問したのは、ロンドン郊外にある'Road Farm'。

Road Farm Countryways

Greater London(大ロンドン都)の外周を囲むM25(東京外環道のような高速道路)を越えると、風景は急に緑一色となる。開発が厳しく制限されているグリーンベルト地帯に入ったからだ。ロンドンの中心から1時間も経たないのに、既に静かな田舎のたたずまいとなっている。

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道路沿いの小さな看板を見つけて砂利道へ入る。開放された丘の上に車が30台ほど止まっていた。'Open Farm Sunday'のロゴマークと、小さく手書きされた'Road Farm'の文字を見つけて、間違いなく目的地にたどり着いたことを確認する。 

入り口におばさんが立っていて、農場の見取り図をくれる。入場料は無料。このイベントではお金儲けをしないことが原則だ。

 

f:id:LarryTK:20170612072804j:plain f:id:LarryTK:20170616154948j:plain 絵心あるね

この農家の経営耕地面積は約100ha。イギリスの農家の平均耕地面積が70haくらいだから、中規模程度の農家ということになる。どのくらいの広さかというと、見渡すかぎり丘のてっぺんまで全部が自分の農地という感じだ。

 

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農地の広さに比べると、家畜を飼っている畜舎は意外と簡素で小さい。つがいの牛が一組と子牛が2頭。羊の数も同じ程度か。。と思ったら、大間違い!!

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私が見たのは繁殖用の畜舎だった。残りの家畜は広大な牧草地に放し飼いされている。牛40頭に羊300頭いるそうだ。

 

農家のおじさんが、家畜を育てる苦労を一所懸命説明してくれる。最前列に陣取った子供たちにも何かが伝わったはずだ。

f:id:LarryTK:20170612072357j:plain f:id:LarryTK:20170612072444j:plain 鶏小屋で本物のエッグハント

蜂の生態を教えるおばさんや様々なパンフレットも用意されていて、このイベントが農業教育の場として高いレベルを実現していることがわかる。

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畜舎の一角が緑のカーテンで覆われている。フォークリフトがうまく使われているなどと感心しながら中を覗くと、、

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こどもアーチェリー会場。本格的な矢がビュンビュン飛び交う。親にイヤイヤ連れて来られた子供たちも、これで大満足だ。

 

こちらの農家では、牧草地の他に、畑で小麦とライ麦を栽培している。どちらも栽培面積はさほど大きくない(日本の農家よりはるかに大きいが)ので、市場に出荷するというよりも、主に自家用の家畜の餌となるのだろう。

 f:id:LarryTK:20170612072540j:plain f:id:LarryTK:20170612072632j:plain ライ麦畑。風が通るたびに緑が波打つ。

f:id:LarryTK:20170612072912j:plain 小麦畑。大麦・小麦・ライ麦の違いは、穂が出るまではほとんど見分けがつかないそうだ。

 

大自然の中で自由気ままに農業を営んでいるようにみえるが、実はイギリスの農業は非常に緻密だ。

ライ麦と小麦を栽培しているのは、環境にダメージを与えないための作物ローテーションの一環。牧草地の外周には一定距離以上の緩衝帯を設け、小鳥が巣作りする季節には生垣を刈ることができない。

f:id:LarryTK:20170615152252j:plain 細かく描き込まれた営農計画図

 

<散歩道> 

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小麦畑を散歩していると、ドングリマークのついたゲートを発見。これは例のfootpath(フットパス)の入り口じゃないか!まさか畑のど真ん中で出会うとは。

larrytk.hatenablog.com

小麦をかきわけるように細い道が続いている。footpathは、常に人が通行できるように整備しておかなければならない。これは広大な土地を占有するイギリスの農家の果たすべき社会責任なのだ。

f:id:LarryTK:20170612073041j:plain 「小麦畑でつかまえて♫」

footpathは小麦畑を突き抜けて、さらに先に続いていた。踏み台を使って策を乗り越えると、、

f:id:LarryTK:20170612073141j:plain f:id:LarryTK:20170612073235j:plain 「止まれ!見ろ!聞け!」

なんと、列車の線路に達していた。そしてfootpathは、踏切の無い線路を横断して、その先の畑の中へ続いていく。。

f:id:LarryTK:20170612073340j:plain 線路内無断立ち入りじゃないよ。

 

散歩を終えて戻ってきた頃にはお腹がペコペコ。ホットドッグがおいしいよ!という声につられて購入。

f:id:LarryTK:20170612072234j:plain f:id:LarryTK:20170612072112j:plain ぱさぱさパンに焦げた豚肉ソーセージがゴロン

イギリスの味を強く噛みしめながら美味しくいただいた。

 

<まとめ>

以上が、今年の現場からの報告。昨年訪れた農家では、トラクターの後ろに乗って畑を一周したりして楽しんだが、今年の農家はこじんまりとしていて、これまた非常に面白かった。

農家にとって、都市の住民を敷地内に迎え入れるのは、とても勇気のいる行動に違いない。家畜に害を及ぼさないだろうか、子供が怪我したりしないか、畜舎が汚いなどと非難されないだろうか。不安はたくさんあるだろう。

オープン・ファーム・サンデーを主催するチャリティ団体のLEAF(リーフ)では、イベントに参加する農家に対して、無理をせずできる範囲で市民を受け入れるようアドバイスしているという。不安が大きければ、開放時間を限定したり、立ち入り禁止区域を作ったり、宣伝を控えめにすればいい。人数を限定したツアーを組んでもいい。

LEAFから農家に補助金が出るわけではない。農家からの相談に丁寧に対応し、農家のやりたいことをHPに掲載し、都市住民に向けてPRすることで、農家と都市住民の距離を縮めていくことがLEAFの役割だという。とても柔軟なアイデアだと思う。

いつか日本でもこんな取り組みが広がればいいなと思いながら、来年のオープン・ファーム・サンデーの日付け(2018年6月10日)にしっかりとチェックを入れて、今回の報告はここまで。

第21回 英国のファームショップ巡り

イギリスの田舎道をドライブしていると、 "Farm Shop(ファームショップ)はこちら" という看板に出会うことがあります。

日本の「農産物直売所」に近い形態ですが、イギリスのファームショップは、農場を散策できたり、レストランが併設されていたりと、施設も充実していてバリエーションもずっと豊かです。そして、どのファームショップも、地元の人たちで大いに賑わっているのです。

そんな魅力たっぷりのイギリスのファームショップに、ぜひ立ち寄ってみましょう。

 

1.北西イングランドのコミュニティ農場

陶磁器のWedgwoodで有名なStoke-on-trent(ストーク・オン・トレント)へ向かう途中、ファームショップを探してちょっと寄り道してみました。

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ここ、"Fordhall Farm"(フォードホール農場)と名付けられた農場は、隣接する工場の拡張に抗うため、一口オーナー活動を展開し、10年前に8000人の地主に支えられる農場となったとのこと。

早くからオーガニック農法にも取り組んできたというこの農場は、イングランド初の「コミュニティ農場」として活動が注目されています。

f:id:LarryTK:20170531151325j:plain 活発なコミュニティ活動

 

まずはファームショップを覗いてみます。

f:id:LarryTK:20170529161136j:plain f:id:LarryTK:20170531151245j:plain ニワトリがお出迎え

さすがオーガニックに長年取り組んできただけあって、地元で収穫されたオーガニックのキャベツやキノコ、ジャガイモなどが並びます。周辺の農家からも農産物を仕入れている模様。地域密着型の流通経路が出来上がっているのでしょうか。

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精肉コーナーには、「この農場の牧草地に一年中放牧して育てた」との表示。肉製品に対するこだわりの強さが伝わってきます。

 

では、農場へ出てみましょう。

f:id:LarryTK:20170531151134j:plain 木戸の向こう側が農場

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木戸をくぐった先は、豚が徘徊する放牧地。デコボコで水たまりだらけの牧草の上を歩いていくと、ずっと奥に羊の群れが見えます。どこまでが農場の敷地なのかぜんぜんわからんです。

f:id:LarryTK:20170602154936j:plain はるか遠くに羊の群れが見える

農場散歩を終えて、カフェで休憩。

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店員もお客さんも地元の人たちのようです。地域のコミュニティにしっかりと支えられているんですね。私たちも紅茶とケーキを注文してコミュニティに少しだけ貢献させてもらいました。

 

2.湖水地方の歴史保存農場

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観光地として有名な湖水地方へ遊びに行ったついでに、近くの "Old Hall Farm" (オールドホール農場)へ寄ってみました。看板には 'Historic Working Farm'(歴史的動態保存農場)とあります。いったい何があるのかな。

 f:id:LarryTK:20170528160338j:plain 快晴の湖水地方

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Shopというほど商品は並んでいなくて、代わりにいろいろな味のアイスクリームがずらり。ここで作っているようなので、とりあえず1つ買って味見を。

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素朴な味がしてうまい!

隣ではチーズ作りの実演もやってました。手作り感満載ですね。

 

それでは中へ。

この農場の売りは、動態保存されている農業機械の数々。100年前の蒸気トラクターや耕運機がまだ動ける状態で保存されています。

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これがまた、ビックリするほど大きい!正面からみると、蒸気機関車が並んでいるようです。一日に50エーカー(20ヘクタール)を耕せると説明してあります。

「イギリスは農場が大規模化しているので、トラクターの大型化も進んでいる」と思っていましたが、少し理解が足りなかった模様。イギリスのトラクターは100年も前からとても大きかったのでした。

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そのほかにも、70年前の籾摺り機やロードローラーなどが現役で動いていました。古いものを大切にするイギリスならではの光景ですね。

 

そろそろお腹が減ってきたので、ここでランチを。広場では家族連れがサンドイッチなど広げていました。絶好のピクニック日和ですね。

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ハンバーガーには地元産の豚肉を使用している模様。野菜もたっぷりでおいしくいただきました。

f:id:LarryTK:20170528160503j:plain ニワトリが分け前を要求しにきた

 

3.コッツウォルズのガーデンショップ

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コッツウォルズをウロウロしていたら、 'Farm Shop' と書かれた建物を見つけたので覗いてみました。"Lowden Garden Centre"(ローデン・ガーデンセンター)という看板をめがけて、車が次々とやってきます。

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野菜や果物がたくさん並んでいます。ただ、どこで採れた農産物なのかよくわかりませんでした。コッツウォルズは野菜生産が盛んというわけでもないので、他の地域から運んできたものも多かったかも。

ここの精肉コーナーにも「肉製品はすべて地元産」の掲示があります。どの農場も家畜を大切に育てているんですね。イギリスの農業がいかに畜産物を中心に成り立っているかがわかります。

 

ファームショップの隣は、ガラス張りの大きな温室のようです。車でやってきた人々が、みんな温室の中に入っていきます。

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温室の中を覗いて納得。ここはレストランになっていました。ガラス屋根から差し込む太陽光、テラス席のようなテーブル配置、そこに覆い被さってくる鑑賞樹。

ぜんぜんゴージャス感はないけれど、「自然の中にいる」みたいな感覚がイギリス人にウケているようです。老夫婦がゆっくりとお茶を飲んでいる姿がたくさん見えました。

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それでは私たちもランチにしましょう。ランチメニューが黒板に書かれていて、これが読みにくい!

解読できた範囲でいうと、レストランでも地元産の肉料理がウリとなっているようです。スペアリブのメニューにも 'Lowden' の冠がついているので、きっと地元産の豚が使われているのでしょう。もっとはっきり書けばいいのに。

 

巨大なスペアリブに大満足してレストランを出ると、隣のスペースでは植物の苗や庭の資材を売っていました。日本でも、郊外型ホームセンターの奥にガーデンコーナーがありますね。それと同じ雰囲気です。

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そういえば、この店では野菜や苗をいろいろ売っているけれど、周囲には農場が見当たりません。そもそも店の名前が「ガーデンセンター」ですからね。植物の苗を売るガーデンコーナーがこの店のメインで、そこにレストランとファームショップがくっついているというのが、この店の正しい理解なのでしょう。

 

田舎好きの英国人にとって、緑あふれるファームショップは週末の絶好のお出かけ先なのでしょう。ファームショップに併設されているレストランやカフェは、とりわけ人気があるようです。

コッツウォルズで立ち寄ったお店のように、農場とは直接のつながりのないホームセンターのガーデンコーナーみたいなのにオシャレなレストランがくっついている形態は、あれ以降もロンドンの内外でいくつも発見することになりました。なぜこの組み合わせが英国人にウケているのか、分析はまた後日に。