ロンドン食と農の便り(Monthly Report)

ロンドンの食とイギリスの農業について毎月レポートを書きます。

第34回 現代に生きる王室御用達の名店コレクション(後編)

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前回より、英国王室御用達(royal warrant)のお店をご紹介しています。皆さんの身近なところで王室御用達の紋章がたくさん見つかっています。

では後半は、観光客の姿をあまり見かけないような、ちょっと風変わりなお店を探検しましょう。

 

1.H.R.Higgins

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Bond Street駅の近く、高級店の並ぶ Mayfair に、H.R.Higgins(H.R.ヒギンズ)は小さなお店を構えます。店の奥に並ぶ年季の入った缶の中に、選りすぐりのコーヒー豆と紅茶リーフが入っています。

コーヒーと紅茶、どちらも甲乙つけがたい品質の高さですが、このお店は女王陛下から「Coffee Merchants」(コーヒー商)の認証を受けているということなので、まずはコーヒーを買ってみましょう。

f:id:LarryTK:20180604170046j:plain f:id:LarryTK:20180504062435j:plain 日本人スタッフが応対してくれるときも

豆の種類を選ぶと、缶の中からザラザラと豆を取り出して、目の前で挽いてくれます。大きな天秤に分銅を乗せて豆の重さを測るところが楽しい!

挽いた粉は袋に密閉してくれるので、お土産として持ち帰り可能でしょう。それでもスーツケースに入らないよ~という方は、地下のカフェで挽き立てコーヒーを味わっていきましょう。アンティークに囲まれて、街歩きに疲れたときの立ち寄りスポットとしてもお勧めです。

f:id:LarryTK:20180604171240j:plain f:id:LarryTK:20180604170755j:plain 地下のカフェでくつろぐ

 

2.Berry Bros & Rudd

バッキンガム宮殿のすぐ近く、王室御用達の名店の立ち並ぶSt James's Street の一角に、ワイン屋さんがあります。このお店、Berry Bros & Rudd(ベリー・ブラザーズ・アンド・ラッド)こそ、300年にわたって英国王室にワインとスピリッツを卸し続けている由緒正しきワイン商なのです。

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居並ぶワインの多くはフランス産。300年も昔から、英国貴族はフランスの良質なワインを好んできました。近年では世界中でワインが作られるようになって、このお店にも各国から選ばれたワインが加わっています。

王室や貴族を相手に商売をしているお店ですが、気後れする必要はありません。私のようなワイン音痴がフラフラと入っていっても、店員のおねえさんが丁寧に対応してくれるし、ワインの値段も(高いのもあるけど)10~30ポンド程度のものが揃っています。

 

勧められるままに、ボルドーの赤ワインを購入。ラベルの両脇に、女王陛下と皇太子殿下のマークが輝きます。

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お店に入ったらぜひ見てほしいのは、"ordinary" (オーディナリー)ワインシリーズです。「普通のワイン」シリーズ??

貴族向けの高級ワインだけではなく、価格を抑えたワインも取り揃えて、市民に幅広くワインの美味しさを知ってもらおうと作ったのが オーディナリー・ワインだとのこと。私たち一般庶民へのお裾分けということですな。

f:id:LarryTK:20180504075006j:plain 「素晴らしい普通の白ワイン」という名のワイン

「普通のワイン」のコンセプトをようやく理解したところで、さらにその横に"good ordinary"とか"extra ordinary"もあります。直訳すると、「良い普通」とか「素晴らしい普通」とかになるのでしょうか。良いのか普通なのかわけがわからんけど、いずれにしても、キリリと引き締まった味に"extra ordinary"感があるとか、勝手に解釈しておきましょう。

 

3.Carluccio's

Carluccio's(カルッチオ)は、ロンドンの至るところで見かけるイタリアン料理のチェーン店です。Covent Gardenの通りを歩いていて、カルッチオの店の前でお馴染みの紋章を発見。これはチャールズ皇太子の紋章じゃないですか。

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なぜレストランチェーンが皇太子の認証を受けているのかという疑問と、そもそもレストランのようなサービス業は王室御用達の認証を受けられないはずという、二重の不思議に包まれて店内に入ってみます。

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お店の中は、いかにもカジュアルな雰囲気のイタリアンレストラン。デート中のカップルも、ビジネスマンのグループも、観光客の若い女の子も、みんな楽しそうにパスタやピザを食べております。

 

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レストランの隣に、イタリア食材を揃えるショップがありました。このショップの存在が、王室御用達の源泉であるようです。

チャールズ皇太子はこのお店を「Supplier of Itarian Food and Truffles」(イタリア食材とトリュフの提供)と認証しています。店の歴史を調べてみると、元々このお店は、カルッチオさんというイタリア人がロンドンに開けたカフェが原点となっていて、その後チェーン展開するに至ったとのこと。

チャールズ皇太子はカルッチオさんと懇意の仲で、いっしょにトリュフ探しに出かけたりもしていたらしい。だから「トリュフの提供」なんですね。皇太子が実際にこのお店に来られるのかどうかわかりませんが、店と皇太子との親密さの証としての紋章だったわけです。

 

4.Waitrose

チャールズ皇太子と食とのつながりを語るには、Waitrose(ウェイトローズ)に触れないわけにはいけません。

ウェイトローズは、このブログでも何度も取り上げたとおり、高品質でこだわりのある品揃えに定評のある高級スーパーです。中でも特に力が入っているのが、"Duchy Organic"’(ダッチーオーガニック)というチャールズ皇太子と連携して立ち上げられたブランドです。

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チャールズ皇太子は、環境保護や動物福祉への関心が大変高く、自らHighgroveという王室所有地で有機農園を経営しているほどです。その皇太子が先頭に立って、有機栽培や放牧飼育に取り組む農家とともに質の高い食品を消費者へ提供し、収益の一部をチャリティーに寄付するというコンセプトで、「ダッチーオーガニック」ブランドが大々的に展開されています。

動物福祉に対する市民の関心の高いイギリスならではの、時代を先取りした取組ではないでしょうか。王室御用達の仕組みとは異なりますが、王室と消費者とのつながりの将来の姿が垣間見えるように感じられます。

 

ところで、ウェイトローズは女王陛下と皇太子から王室御用達の認証を受けています。買物袋にもしっかりと両方の紋章が入っています。

下の写真は、バッキンガム宮殿に近いBelgraviaのお店で見つけた紋章。ウェイトローズの店舗は全国に数多くありますが、紋章を見かけたことがありません。もしかすると、ここは王室がお忍びで買い物に来られる貴重なお店なのかもしれませんね。

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5.Wilkin & Sons

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ダルメインのマーマレード祭りでお世話になったWilkin & Sons社の方から、Tiptree(チップトリー)ジャム詰め合わせのプレゼントが届きました。

チップトリーのジャムには小瓶の一つ一つに女王陛下の紋章がついていて、日本でもお馴染みですね。

ところで、チップトリーとは何のことでしょうか。気になって調べてみると、なんとジャム工場のある地名のことでした。ロンドンから車で1時間半で行けて、カフェやショップも併設されているらしい。これは行ってみるしかないでしょう。

 

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チップトリーに到着しました。

オシャレなカフェで、チップトリーの商品をふんだんに使ったサンドイッチやティーを楽しんでいます。私もティーを飲みながらくつろいでいると、目の前に"Farm Tour"(農場ツアー)のチラシが。チップトリーの所有農場を案内してくれるとのこと。行くしかありません。 

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毎週土曜限定で行われる農場ツアーは、ショップの前から出発するトラクターに乗って広い農場を巡ります。おねえさんの解説付き。

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100年以上続くチップトリーのジャムづくりは、原材料となるフルーツの栽培から始まります。農場では常に最新の栽培技術を取り入れているそうで、高く持ち上げられた畝でイチゴづくりが行われていました。

ツアーが終わってショップに戻ってきました。あの農場で作られたイチゴやブルーベリーがジャムになったのね~と思うと、そりゃ爆買いしますわな。

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最後はいつものごとく農場巡り紹介となってしまいましたが、王室御用達シリーズはこれで一区切りです。

私の任期も残りわずかとなりました。書きたいことはまだまだたくさんあるのに。猛ダッシュであと数回は書き終えたいですな。

第33回 現代に生きる王室御用達の名店コレクション(前編)

英国には「王室御用達」(Royal Warrant) 制度があります。

日本の「宮内庁御用達」は戦後に正式な制度で無くなってしまったそうですが、英国では15世紀頃から続くRoyal Warrantの伝統が、現代の合理的な認証制度に変身を遂げ、いまも800の業者が王室より紋章を授与されています。

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日本からの旅行客に人気のスイーツ店や、駐在員の通うデパートなどでも、王室御用達の紋章を見つけることができます。

この紋章が商品に付いていると、なんだかリッチな気持ちになりますね。宝探しをする気持ちで、ロンドン市内で見つけられる紋章のコレクションに出かけてみませんか。

 

How to apply

紋章探しに出かける前に、Royal Warrant についての基礎知識を少し。

現在使われている紋章は3種類。エリザベス女王、エディンバラ公(女王の旦那さん)、チャールズ皇太子(プリンス・オブ・ウェールズ)の3名に認証の権限があり、それぞれの紋章を授与しています。

1840年には王室御用達協会が設立され、業者からの申請の受理・審査などの手続きを行っています。いったん認証を受けたら一生安泰というわけではなく、5年毎に再審査され認証が更新されます。このあたりの手続きはとても合理的なのです。

王室御用達の認証を受けるのは、業者であって商品ではありません。王室が具体的にどの商品を買っているかは明らかにされていないため、商品のパッケージに女王の紋章がついていても、実際にその商品を女王が使っているとは限りません。

ただ、認証の際に「チョコレート製造」とか「紅茶商」といった業種の指定が行われるので、王室がその業者から購入する商品の種類については、だいたいの想像がつくようになっています。

前置きが長くなりました。では街へ繰り出しましょう。

 

1.Charbonnel et Walker

高級ブランド街 Bond Street に隣接して小さなお店を構える Charbonnel et Walker(シャルボネル エ ウォーカー)は、1875年から続く老舗チョコレート屋さん。エリザベス女王から「チョコレート製造」の認証を得ています。

f:id:LarryTK:20180429164022j:plain f:id:LarryTK:20180429164333j:plain 若かりしエリザベス女王の写真も

マダム・シャルボネルの秘伝のレシピを守って手作りされているというトリュフ型のチョコが有名。そして、パッケージの美しさはピカイチですね。

高級チョコなので(私には)少々お高いように思えますが、お手軽に買える3個入、4個入の小さなパッケージもあります。そういえば、日本から来てバレンタイン用に爆買いしていったおねえさまもおられました。。

f:id:LarryTK:20180429164430j:plain f:id:LarryTK:20180429164510j:plain パッケージにしっかりと紋章

 

2.Prestat

Prestat(プレスタ)もまた、1902年から続く老舗チョコレート屋さん。「チャーリーとチョコレート工場」の作者 Roald Dahl のお気に入りの店だったということでも有名です。女王よりPurveyors of Chocolates (チョコレート専門店)との認証です。

f:id:LarryTK:20180429170735j:plain がが~ん、改装中

Piccadillyに面したアーケード街に本店があったはずと訪ねて行ったところ、なんと改装休業中でがっかり。

気を取り直して。本店は後日訪問してレポートすることにして、今回はプレスタのチョコを買いにSelfrigdesまで足を延ばしました。

 

3.Selfridges

ロンドンの銀座通り Oxford Street に大店舗を構える Selfridges(セルフリッジ)は、1909年創業の高級デパート。デパートといえば Harrods(ハロッズ)が有名ですが、こちらの方が日本のデパートに通じる上品さがあって、個人的には好みです。

f:id:LarryTK:20180512061424j:plain f:id:LarryTK:20180429170922j:plain 重量感あふれる玄関

化粧品コーナーをササっとすり抜け、チョココーナーへ。ロンドン土産にチョコをという方にはお勧めの品揃えです。先ほどのシャルボネルもあるし、もちろんプレスタもたくさんの種類が取り揃えられています。

f:id:LarryTK:20180429171051j:plain f:id:LarryTK:20180429171125j:plain 充実のチョココーナー

プレスタのチョコは、棚を覗くたびに新しい商品が加わっているのが楽しいですね。

今回見つけたのは、London Gin (ロンドンジン)味。ジンは、いまロンドンで最も流行っている商品です。私も流行に乗って買ってしまいました。

f:id:LarryTK:20180429171248j:plain f:id:LarryTK:20180429171340j:plain こちらもパッケージに紋章

 

ところでここセルフリッジも、女王から認証を受けているはずなんですが、例の紋章が見つからない。店の内外もぐるぐる回ったし、オリジナル商品のパッケージも黄色い紙袋も眺め尽くしたけど、どこにも見当たりません。

セルフリッジが女王から認証を受けたのは2001年と、100年以上の歴史あるこのデパートとしては比較的最近のこと。高級デパートとしてのブランドが既に確立しているので紋章は不要なのかなと勝手に推測して いますが、ひょっとして私の見落としかも。見つけた方がいたらぜひご一報を。

 

4.Partridges

高級住宅街 Chelsea(チェルシー)の玄関口となるSloane Square に店を構えるPartridges(パートリッジ)は、正面にエリザベス女王の紋章が輝く高級食材スーパーです。

毎週土曜には店の前の広場で青空マーケットが開かれ、チェルシーの住人たちが集まります。優雅な休日ですな。

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店内にも高級食材が並びます。英国産のジャムやクッキー、フランス産のテリーヌの奥にはアメリカ産のスナックなどもあって、目移りすることこの上ない。

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オリジナルブランドの紅茶は、箱に女王の紋章が入っています。ティーバッグの一つずつにも紋章があって、毎回ロイヤルな気持ちでティータイムを楽しむことができます。

値段もお手頃で、お土産にお勧め。このお店でしか購入できないお値打ち品です。

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5.Fortnum & Mason

Fortnum & Mason(フォートナム・メイソン)は、日本人には紅茶のブランドで有名ですが、Piccadilly本店は様々な食材やワインを揃えるデパートとなっています。女王からも「食材及び必需品商」と認証されていて、この店が紅茶専門店でないことがわかります。

f:id:LarryTK:20180429164124j:plain フォートナム氏とメイソン氏の脇を通り、立派な紋章の下を潜る

 

1707年の創業以来、大英帝国の威信にかけて世界中から様々な食材を調達してきた フォートナム・メイソンの栄光の軌跡は、昨年発売された The Cook Book に詳しく紹介されています。

下の写真は、フォートナム・メイソンがはるばるインドから運んできたカレー粉と、北海で獲れるタラを組み合わせたKedgeree (ケジャリー)のレシピ。イギリスの伝統的な朝食メニューです。イギリス人も昔は美味しい料理を作っていたのね。

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f:id:LarryTK:20180508060702j:plain 見返しに紋章をみつけた

 

紅茶が山と積まれた地上階を抜けて、らせん階段を降りていくと、地下は食品コーナーになっていて、オリジナルブランドの調味料や瓶詰などが並んでいます。

上の階には、いろいろな商品を組み合わせたhamper(ピクニックバスケット)も揃っています。 ビクトリア時代の貴族文化がそのまま残っているのですね。

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お土産を買いにフォートナム・メイソンへ行ったら、地上階の紅茶だけでなく、他の階へもぜひ足を延ばしてください。おしゃれなエプロンやティーカップなど、ついつい買いたくなる商品がたくさん見つかりますよ。

 

王室御用達のお店はまだまだたくさんあって、とても1回では周りきれませんでした。次回も引き続き、コーヒー屋さんなど素敵なお店をご紹介します。

 

第32回 速報 Lambing Season(子羊の季節)到来!

 

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日本では桜が開花すると「春がきた!」と感じますよね。イギリスに春の到来を告げるのは "Lambing" なんです。

"Lambing" とは、「子羊(lamb)の出産」です。羊は秋に発情期が来るので、寒くて暗い冬を越えて、ようやく明るく暖かくなってくる3月末から4月にかけて、一斉に子羊が生まれます。

 

この季節には、農場を開放してLambingを見学できるようにする農家もたくさんあります。いってみましょう!

f:id:LarryTK:20180413062203j:plain f:id:LarryTK:20180413062253j:plain 子どもたちがいっぱい

 

イングランド南部のPortsmouth(ポーツマス)近くの農場。 

羊小屋を覗くと、生まれたばかりの子羊が、お母さんにペロペロされていました。まだ足元がおぼつかない感じ。

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下の写真は昨年の光景。初めは立てなかった赤ちゃんが、お母さんにペロペロ(licking)されているうちにあっという間に立てるようになります。

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お腹のどってりと大きくなったお母さん羊(ewe)が大量に群れています。お腹が重すぎて地面にへたり込んでおります。

羊の赤ちゃんは、通常は双子で産まれます。たまに三つ子や四つ子のこともあるとのこと。妊婦(羊)検診でソナーを当てて赤ちゃんの数を確認し、スプレーの色で区別して管理しています。 

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出産の光景をみたくて、羊小屋の前で待ってみました。体を壁にゴシゴシ擦り付けるのは出産の前兆と聞いて、しばらく粘ってみたけど、出産の瞬間には立ち会えず。残念。

 

出産の合間も農場の飼育員たちは大忙し。羊たちに消毒液を塗って、飲み水を汲んで藁を敷いて、清潔な環境を作ります。

子羊のしっぽを輪っかで縛る(tail docking)のも重要な仕事です。しっぽが長いままだと、ハエがたかったりして衛生状態が悪くなり、皮膚病になってしまうとのこと。

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先ほど出産した親子も、柵で囲まれたプライベートルーム(pen)に移動していました。ここでしばらく親子水入らずで暮らします。

 

羊小屋の中で数日過ごした後、子羊はお母さんといっしょに牧場デビューします。広々とした牧場のあちらこちらで、お母さん羊にぴったりくっついて子羊が移動している姿は、なんともかわいらしいですな。

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農場をただ開放するだけではなく、観光農園として施設を整えて、動物とのふれあいの機会などを提供しているところもあります。

ここはCotswolds(コッツウォルズ)の観光農園。大人も子どももきゃあきゃあ言いながら、子羊にミルクをやっています。

f:id:LarryTK:20180411161922j:plain f:id:LarryTK:20180411161953j:plain かわいすぎる

飼育員のおねえさんが、Lambingの仕組みを詳しく説明してくれています。英語が難しくてよく理解できなかったけど、隣にいたお子さまたちはわかったのかな??

f:id:LarryTK:20180411162035j:plain f:id:LarryTK:20180411162058j:plain やめてくれよ~て顔がおもろい

別の農場では、飼育員が子羊を抱いて子どもたちの間を廻っていました。おっかなびっくりの子どもの周りではしゃぐ大人たち。

子どもたちに紛れて手を差し出したら、指を噛まれてしまった!しかしご心配無用。まだ歯が無いので痛くありません。太い指をお母さんのおっぱいと間違えたのでしょうか。

f:id:LarryTK:20180413061233j:plain f:id:LarryTK:20180413061315j:plain 指をかみかみ

 

どの農場も、ベビーカーひいた家族連れや遠足の幼稚園児などで大そう賑わっておりました。イギリスの都会の人々には、週末に子どもを連れて郊外へ出て、自然や動物と触れ合おうという意識が強いように思います。

農場の方も、遊び場を設けたりスナックコーナーを出店したりして、子どもを飽きさせないように工夫しているようです。

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農家の方々がどのように働いているかを間近に見る貴重な機会でもあり、農業の現場と都市の住民との距離を縮めることにも役立っているようです。

ただ、ひとつ気になるのは、「子羊がかわいい!」というところばかりが強調されていること。羊はペットではありません。私たちは彼らの命を頂いて生きているという事実に気づかないふりをしているというのも、この国の特徴かもしれません。

第15回のつづき ヒースロー空港で買えるお土産(JAL編)

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イギリスの玄関口、ヒースロー空港には5つのターミナルがあって、日本との直行便を運航するJALは第3ターミナルから発着します。

先日、久しぶりに第3ターミナルを使う機会があったので、このターミナルでどんなお土産(食品)が買えるかを取材してきました。ANA(第2ターミナル)とBA(第5ターミナル)のお土産については、以下の回をご参照ください。

larrytk.hatenablog.com

なお、以下の取材内容は2018年3月時点のもの。その後の商品入替えなどのために見つからないお土産があっても、どうぞご容赦願います。

 

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第3ターミナルの出発ロビーは、第2や第5と比べるとやや小さめ。卵型の空間に、待合席を囲むようにお店が並んでいます。

端から端までお店を覗いて回っても、それほど時間はかかりません。では、サクサクっとお土産探しに行ってみましょうか。

 

1.定番のお土産

Duty Free Shopには、Fortnum & Mason (フォートナム・メイソン)やTwinings(トワイニング)など、有名メーカーの紅茶が並んでいます。品揃えもなかなかに豊富。

甘い甘いチョコレートのCadbury(キャドバリー)が特設コーナーを設けていました。「チャーリーとチョコレート工場」の舞台となったメーカーですから、お土産としての価値は高いです。甘すぎて歯茎が痛くなるチョコレートは、インパクト十分。

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定番のバラマキ土産であれば、雑貨店のWH Smithでも揃います。Walkers(ウォーカーズ)のクッキーなど、まとめて安売りしてました。

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高級デパートのHarrods(ハロッズ)も食品コーナーが充実。紅茶やクッキーは実はそれほど高くないので、高級感溢れるお土産を持ち帰りたい人にはお勧めですね。

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2.非定番のお土産

一風変わったロンドン土産を持って帰って、同僚に「お~」とか言われたい方むけに、私から何か提案できないかと探してみました。あまり広いロビーではないので、選択肢は限られる模様。さて、どんなものがありますかね。

 

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ロンドンの街中を歩き回った人なら、いちどは"Caffe Nero"(カフェネロ)にはお世話になったはず。イタリア風のカフェだけど実はイギリス発祥のお店です。(詳しくは 第10回 英国コーヒー界の新参者 "Flat White" - ロンドン食と農の便り(Monthly Report) をご覧ください。)

お店の前で、コーヒー豆を空港限定の缶付きで売っていました。自分用に買って、我が家で缶を眺めながらロンドンの街並みを懐かしむというのはいかが?

 

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お次はYo! Sushi。この店の意義については、 第5回 "Wagamama"と"Yo! Sushi"はなぜイギリス人にウケるのか - ロンドン食と農の便り(Monthly Report) 参照。自分で言うのもなんだけど、いろんな特集を手掛けてきたものですわ。

カウンターに並んでいたのは、小さな袋に入ったアラレやおかき。どこの国の原産かもわからないし、食欲をそそるわけでもないけど、面白いのはパッケージ。「酸味」、「苦味」とか「甘み」とか、好き放題に書いてあって、実際のところ、どの味やねん!と突っ込まざるを得ないですわ。ハリーポッターの百味ビーンズのようなスリルを味わえる??お土産です。

 

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待合スペースのど真ん中にあったパディントン・ベアのお店。熊のパディントン君がロンドンを大冒険するお話なので、ロンドン土産としては最適。 パディントン君の大好物のマーマレードがあればバッチリだったんですが、それほど気の利いたものはなくて、キャンディのようなものが並んでいました。それでも、かわいらしい瓶に入っていて、お土産としての価値はありそうです。

空港内のお店は回転早く替わってしまうので、いつまであるかわかりませんが、もし見つけたらぜひ覗いてみてください。

 

第31回 美しく食べるビーガン料理

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昨年、Free From食品を特集したときに、ベジタリアン(vegetarian)やビーガン(vegan)の人口がイギリスで増えているとレポートした。

あれ以降も、肉や魚を食べない人たち、特に乳製品や卵など一切の動物性食品を受け付けない「ビーガン」はますます勢いを増すばかりだ。

今年1月には、"January" と "Vegan"を掛け合わせた "Veganuary"という標語とともに、「年の初めに誓いを立てて、ビーガンに挑戦してみよう!」という呼びかけが世間に溢れた。

肉や魚を食べない生活など到底考えられない私だが、世間を賑わす「ビーガン」とやらはいったいどんなものなのか。ちょっと覗いてみようではないか。

 

1.スーパーマーケットへ

前回の特集で、スーパーマーケットに"Free From"食品が豊富に揃っていることを確認した。

今回はビーガン商品に絞って調査してみよう。まずは、お馴染みの Waitrose へ。

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食材のカテゴリー毎に、ビーガン商品が並ぶ。通常の献立をイメージしながら、ビーガン向けの代替商品を選べるように工夫されているようだ。

f:id:LarryTK:20180321195014j:plain  f:id:LarryTK:20180321185646j:plain 牛乳棚の横にココナッツミルク

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f:id:LarryTK:20180321201318j:plain f:id:LarryTK:20180321201352j:plain ベジタリアンとビーガンの棚

 

ビーガン商品を3点購入して帰宅。

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サツマイモ&ココナッツスープに豆腐とゴマのステーキ、アーモンドヨーグルト。いずれもビーガン向けであることが一目瞭然なマークを付けている。

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では、恒例の試食タイム。

一口め。意外と味がしっかりとついていて、「これは結構いけるかも」と思わせる。しかし、3分の1くらい食べたあたりから、単調な味に飽きてきて、だんだんペースが遅くなる。

f:id:LarryTK:20180321190406j:plain f:id:LarryTK:20180321190438j:plain f:id:LarryTK:20180321190505j:plain

素材が豆だったり芋だったりするわけだから、食べているうちに満腹にはなるが、なんだか満足感が得られない。

もぐもぐと口を動かしながら、「いろいろ美味しいものがあるのに、なんで俺は豆と芋ばっかり食べてるんだ」などと考え始める。自分がビーガンの境地に辿り着けない理由は、この心の壁にあるんだなと感じつつ、志半ばで挫折。

 

2.ビーガン専門レストラン

ビーガンのためのレストランが、ロンドンで最近人気らしい。何が秘訣なのだろうか。

"Farmacy"というこのお店は、"Pharmacy"(薬局)に"Farm" (農場)を掛けたネーミングのようだ。"Food is medicine"「食は薬」というスローガンを掲げていて、東洋の「医食同源」と通じるものがある。

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平日にもかかわらず、店内は満員。インテリアもオシャレなら、お客さんたちもスマートでめっちゃオシャレだ。

「食は薬」なんて言うので、お寺の精進料理のイメージでいたが、お説教じみた雰囲気はまったく感じられない。お客さんも修行僧のように生活を律しているわけではないから、オーガニックのワインなど飲みながら、仲間同士でワイワイやっている。

 

我々も、オーガニックビール片手にビーガン料理を注文してみよう。

"チーズ"や"ヨーグルト"とあるが、もちろんすべて植物性で、いずれもメニューにカッコが付いてる。「肉や魚が食べられないのなら、野菜でも食べてりゃいいんじゃないか」という安易な発想に陥らず、より健康的な食材をできるだけ美味しく食べようとするのがビーガンスタイルのようだ。

f:id:LarryTK:20180321185233j:plain 玄米マカロニ&"チーズ"

f:id:LarryTK:20180321184916j:plain f:id:LarryTK:20180321185309j:plain millet(ヒエ?)、黒豆とマッシュルームのバーガー

f:id:LarryTK:20180321185342j:plain f:id:LarryTK:20180321185417j:plain chia seeds(チアシード)とフルーツの"ヨーグルト"。チアシードがぬるりと粘る

話題の「スーパーフード」(健康に良い食材)がふんだんに使われていて、少し濃いめの味付けと不思議な食感が面白くて、どんどん食が進む。

いちばん印象に残ったのは、デコレーションの美しさだ。家で食べるビーガン料理では満足できない理由がわかった。美しくないからだ。

ビーガン料理の流行は、「美しく健康的に食べよう」というコンセプトからスタートしていることがわかる。おいしさの基準は、美しさの後ろにくっついてくるイメージだ。いかにもロンドンらしい食べ方だと思う。

 

3.日本食ビーガン

ロンドンにビーガン向けの日本食レストランがあるという。

「いただき膳」というこのお店のメニューは、すべてがビーガン料理となっている。

f:id:LarryTK:20180405074212j:plain f:id:LarryTK:20180405074257j:plain ビーガン・ジャパニーズと書いてある

 

お昼時の店内は満席。若い女性グループからビジネスマン風のおじさん達まで、客層は様々だが、日本人は私以外誰もいない。

f:id:LarryTK:20180405074349j:plain  f:id:LarryTK:20180405074442j:plain おひとりさま席がうれしい

メニューには「きつねうどん」などもあって、ビーガン専門といった特殊な感じはない。いろいろ試してみたいので、幕の内的な弁当ボックスを注文。

弁当ボックスの中身は、野菜かき揚げ、野菜春巻き、揚げ出し豆腐、サラダ、雑穀ごはんと海藻の佃煮、味噌汁。丸の内の定食屋さんで普通に出てきそうなメニューだ。

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野菜や豆は歯ごたえがあって、しっかり噛んでゆっくりと食べている自分に気づく。いつもの倍以上の時間をかけて完食した。これがビーガン料理の健康の秘訣だ。

とてもおいしくいただきながら、日本食とビーガン料理との親和性が高いことに気づく。日本には精進料理の伝統もあるし、普段食べている例えば「ナス味噌定食」なんかも、実はビーガン料理だったりする。

今更騒がなくても、日本人はずっと野菜・豆中心の健康的な食事を楽しんできたというわけだ。

 

4.ビーガン日本食を世界へ

日本食とビーガンとのつながりを深めたいと願って、面白いイベントを企画した。

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Whole Foods Market は、米国資本の自然派スーパーマーケットだが、イギリスでも店舗を展開している。今回、ロンドンのお店で、日本の食材を使ったビーガン家庭料理のワークショップを開催した。

 

評判のクッキングスクールAtsuko's Kitchenを主宰する敦子さんがビーガン寿司を作り、人気ブロガーShiso DeliciousのSaraさんがビーガン弁当を披露する。

f:id:LarryTK:20180321204428j:plain f:id:LarryTK:20180321204340j:plain かわいらしいビーガン寿司たち

f:id:LarryTK:20180321204546j:plain f:id:LarryTK:20180321204521j:plain  なんとも美しいビーガン弁当

お米だけでなく、味噌、醤油、海苔、ゴマ、ワサビなど、たくさんの日本食材を紹介することもできた。食材はすべてオーガニック日本食材を取り扱うClearspringの提供。

ご飯を炊いたことがないというビーガンたちに、和食の基礎を教え、美しい盛り付けを学んで、おいしいお寿司とお弁当を一緒に食べて楽しんでもらう。新たな経験にみんなが満足し、私たちにも笑顔が溢れた。

 

「動物福祉や環境保護のことが気になって、お肉や魚を楽しく食べることができなくなるの」と私の隣で語ってくれた女性は、10年以上のベテランビーガン。私たちとはちょっと違った視点から食を見つめる彼女にとっても、ビーガン日本食は新鮮に映ったようだ。 

おいしくて健康的な日本食と、美しくて華やかなビーガン料理の融合が、新たな食の世界を切り開いていく可能性を予感しながら、今回のレポートはここで終わりとしたい。

 

第30回 イギリスでお米はどのように食べられているか?

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日本人はどの国に住んでいてもご飯が恋しくなるもの。ロンドンにある各国料理のレストランに入っても、"rice"をメニューに見つけるとつい注文してしまう。ところが、出てくる"rice"は日本のご飯とはまったく別ものだ。調理方法が和食と異なるだけでなく、お米の種類そのものが違っているようだ。

それではイギリスにはどんなお米があって、どのように食べられているのだろうか。片っ端から試してみようではないか。

 

1.お米バラエティ

こだわりの品揃えで評判のWaitrose(ウェイトローズ)には、世界各地のお米が揃っている。Waitroseのホームページには、様々なお米を紹介するページがあって、実に13種類の米が、食べ方と調理方法を添えて紹介されている。

www.waitrose.com

ここで紹介されているのは、シチューに添えるロンググレインやブラウンライス、イタリアのリゾット米、カレー用のバスマティ米、タイ料理に使う香り米、ホールチキンに詰めるワイルドライスなどなど。これらと並んで、「日本の伝統的な寿司に使うモチモチした米」として"sushi rice"(スシ米)が紹介されている。

 

私の訪れた店舗にも米の専門コーナーがあって、バスマティ米やリゾット米、パエリア米などバラエティ溢れるお米が並んでいた。

ところが、我らのスシ米が見当たらない。あれれ、と思って店内を見渡していたら、別の棚にアジア食品コーナーを発見。スシ米はそちらに置かれていたのだった。

f:id:LarryTK:20180219064822j:plain f:id:LarryTK:20180222171101j:plain スシ米だけぽつねんと

 

珍しい米を買ってみようと、イタリア産リゾット米をゲット。日本の米と同じく、ずんぐりむっくりした形の短粒種のようだが、比べてみると日本の米よりはるかに粒が大きい。

f:id:LarryTK:20180221171742j:plain f:id:LarryTK:20180221170633j:plain 左がリゾット米、右が日本の米

袋の裏の調理方法どおり、鍋で米を炒めてから徐々にスープを足していく。大きめの米粒がさらにふっくらして、おいしいリゾットができあがった。

f:id:LarryTK:20180221170705j:plain f:id:LarryTK:20180221170744j:plain チーズを溶かして美味しくいただく

 

2.粒の長いお米

イギリスではリゾットは必ずしもメジャーな料理ではない。

庶民向けスーパーのTESCO(テスコ)では、アメリカ産の長粒米(ロンググレイン)と南アジア産のバスマティ米が棚の大部分を占めていた。なおここでも、スシ米は別棚のアジア食品コーナーで発見。

f:id:LarryTK:20180219071209g:plain f:id:LarryTK:20180222171155j:plain こちらでもスシ米は仲間外れ

夫婦共働きの多いイギリスでは、レトルトや調理不要の食品の品揃えが豊富で、家に帰ってレンジでチンするだけというものが多い。お米コーナーにも、混ぜご飯や味付けご飯のレトルト製品がたくさん並んでいた。

 

一袋買って試してみたのは、egg rice というレトルト食品。中身の米にはロンググレインが使われている。袋を破ってそのまま電子レンジへ放り込み、90秒待つと出来上がり。

f:id:LarryTK:20180224073436j:plain f:id:LarryTK:20180224073530j:plain f:id:LarryTK:20180224073622j:plain パサパサ

円筒形のロンググレインは、茹でてもふっくらしない。少し塩味が効いていて食べれなくはないが、シャリシャリする歯ごたえは私の知っている米ではない。五穀米に入っている粟や稗に似た食感を味わいながら、米も穀物の一種であることを実感した。 

 

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チャイナタウンにあるビュッフェ形式の中華料理店には、必ず白米と卵チャーハンが並んでいる。粒の形からするとロンググレインを使っているようだ。ご飯だけ食べるとパサパサしていても、脂っこい中華料理と一緒ならちょうどよい組み合わせとなる。

 

3.バスマティ vs ジャスミン

伝統的な英国料理にはお米は登場しない。イギリスが世界とのつながりを深める歴史の中で、各地の食文化とともに各種の米も流入してきたわけだ。

中華系の食品卸・小売店舗を展開するLoon Fung(ルーンファン)は、中華料理だけでなく、各種のアジア料理に対応した食材を揃える。この店で販売されている米は、先ほど試食した長粒米に、スシ米とバスマティ米、ジャスミン米。

f:id:LarryTK:20180219082737g:plain 巨大な米袋がずらり

 

バスマティ米とはいったいどのようなお米か、確かめてみよう。

袋から出てきたのは、細長い米。ロンググレインも細長いが、こちらはさらにひょろ長く、先っぽが尖がっている。

f:id:LarryTK:20180221170308j:plain f:id:LarryTK:20180226163451j:plain 粒が長~い

鍋にお湯を入れて茹でなさいと指示されたとおりに作ってみる。お米だけだと味も匂いもそっけないが、本格的なインドカレーのお供には、やはりバスマティ米が必要だ。

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バスマティ米が使われるのはインド料理に限らない。

トルコ料理店でも、串焼き羊肉の付け合わせとしてバスマティ米が出てくる。 バスマティ米は水分を含ませすぎないことが肝心なようだ。パラパラした米をスプーンで掬って食べるくらいがいちばん美味しい。

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もう一種類、ジャスミン米も買ってみた。バスマティもジャスミンも同類の品種だということだが、比べてみると粒の形はかなり違っている。ジャスミン米は粒が小さく丸みを帯びていて、日本の米に近いようだ。

f:id:LarryTK:20180224072047j:plain f:id:LarryTK:20180226163542j:plain f:id:LarryTK:20180226163810j:plain  左がジャスミン、右がバスマティ

ジャスミン米は香り米と言われているそうなので、鼻をつけてくんくんと嗅いでみたが、どうもジャスミンの香りがするようには思えない。

そもそもジャスミンがどんな香りなのか知らないことに気づいて調べてみたところ、なんとジャスミン米の名前はジャスミンの白い花の色に由来するのであって、ジャスミンの香りがするわけではないらしい。

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そうと知って、ジャスミン米をもういちど観察してみる。バスマティ米よりも米独特の匂いが強く、その違いは炊くとさらにハッキリする。日本で食べ慣れたお米の香りに近く、噛むと口の中に甘みが広がる。

 

安くて美味しいと評判のタイ料理店では、大きな炊飯器でジャスミン米が炊かれていた。スパイスの効いたおかずが、ご飯の甘みを一層引き出している。

f:id:LarryTK:20180224072735j:plain f:id:LarryTK:20180224072808j:plain f:id:LarryTK:20180224072843j:plain うまい!

ここまでいろいろなお米を試してきたが、ジャスミン米は粒の形や香り、炊いたときの甘みなど、日本のお米と共通する特徴をいちばん多く持っているようだ。

 

4.日本のお米とショートグレイン

我々が日頃目にする日本のお米は、粒が小さくて短いので、短粒米(ショートグレイン)というカテゴリーに分類される。

私がロンドンへ来て間もない頃、スーパーマーケットのSainsbury's(セインズベリー)でショートグレインを見つけ、日本のお米の代わりになると思って炊飯器で炊いてみたことを思い出す。結果は大失敗であった。

f:id:LarryTK:20180222173053j:plain べちゃべちゃで噛み応えがない

その後、知ることになるのだが、イギリスでショートグレインとは、デザートの一種であるRice Pudding(ライスプディング)の材料のことなのだ。

ミルクにお米と砂糖を加えて煮るライスプディングは、スーパーマーケットでも様々な種類の出来合いの製品が売られている。スプーンで掬うと、お米はドロドロになってもはや原形を留めていない。

f:id:LarryTK:20180222172349j:plain f:id:LarryTK:20180222172423j:plain f:id:LarryTK:20180222172457j:plain ドロドロ

イギリス人の大好物だということだが、ライスプディングといい、ポリッジといい、穀物を甘く煮ることへの違和感が否めないのは、私だけかな。

 

日本へ帰ったとき、炊き立てご飯を食べてその美味しさに圧倒された。一粒一粒が立っている。イギリスの日本食レストランで食べるスシ米は、大抵お米がくっついてしまっていて、粒を見分けることもできない。

この違いをイギリスの人々にわかってもらうには、どうすればよいのだろうか。

f:id:LarryTK:20180226024622j:plain f:id:LarryTK:20180225172921j:plain 左はバーミンガムで食べた丼物。右は新橋で食べたご飯

初めに紹介したホームページで解説されているように、スシ米は「モチモチ・ネバネバしている」(sticky)のが特徴だと信じられていて、実際、すごく粘りっけのあるご飯に出会うことが多い。時には、米粒の形が崩れて糊のようになっていることもある。

日本のご飯は「ふっくらつやつや」しているのが美味しさの特徴であって、決してモチモチ・ネバネバではない。その違いは、米の品質だけでなく、炊き方や保存方法によるところも大きいようだ。

これまで見てきたとおり、イギリスでは「この料理に合うのはこのお米」といった形で様々なお米が食べられている。スシ米が「寿司専用の米」と思われているうちは、日本のご飯の美味しさを伝えることは難しいのかもしれない。「ふっくらつやつや炊き立てご飯」を、これとよく合う料理とともに、イギリス人に味わってもらいたいものだ。 

第29回 おいしいFish & Chipsを求めて

イギリスといえばFish & Chips!

日本からお客さんが到着したら、まずはパブへお連れして、ぬるいエールビールとFish & Chipsをお楽しみいただくのが定番のコース。

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ついこの前も食べてきたところなのだが、初めて本場のFish & Chipsを食べた皆さんに共通の感想。

魚がでかい。

意外とおいしい。これなら全部食べられるかも。

⇒ ぱくぱくぱく ⇒ やっぱり全部はムリ。

おいしかった。でももう食べなくてもいい。

 

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私自身の初Fish & Chipsは、3年前の夏。着任直後に勇気を振り絞ってパブに入り、注文したのをよく覚えている。そのときの感想を見返してみると、

残りの3年間はもう食べなくていいかな。

とFacebookに書き残してあった。

 

いやいや、そういうわけにもいかない。この3年間、なんだかんだで30回以上食べたでしょう。

そんなにたくさん食べたのなら、いったいどの店のFish & Chipsがいちばん美味しかったのか?と聞きたくなるよね。それが今回のテーマです。

 

1.Fish & Chips専門店

おいしいFih & Chipsを食べたければ、パブじゃなくて専門店に行かなくちゃ。

とはよく聞く話。

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ここはロンドンでたぶん最も有名なGolden HindというFish & Chips専門店。ランチタイムには、地元の人たちや観光客、ビジネスマンで超満員になる。

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100年の伝統を受け継いだという手作りの衣で揚げた白身魚は、ほどよいサクサク感とジューシーさが際立つ。LargeかSmallを選択できるのがありがたい。チップスも小ぶりだし、Smallだとムリなく食べきれて、程よい満腹感が味わえる。

 

Fish & Chipsに使う魚は、基本はcod(タラ)。イギリス近海でたくさん獲れたのでイギリス人のお馴染みになったということだが、最近は資源量が落ちているので実はそうでもない。

本格的なシーフードレストランへ行くと、cod以外にもいくつか選択肢がある。

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ノッティング・ヒルのオシャレな街にあるオシャレなレストランGeales。codのほかに、haddock(これも日本語に訳すとタラ?)、skate(かすべ??)、plaice(カレイ)、hake(タラに似ているがタラではない???)が選べる。

いずれも淡白な白身魚で大きなフィレがとれるところが共通していて、揚げるとどれも似たような形になる。

f:id:LarryTK:20180129091659j:plain haddock。codより味が濃くて好き嫌いが分かれる

f:id:LarryTK:20180129091736j:plain skate。ジューシーで食べやすい

f:id:LarryTK:20180129091827j:plain plaice。カレイの姿揚げを思い出させる味

勢いよく食べ始めたけれど、半分食べたところで手が止まった。衣がサクサクなのは嬉しいのだが、ちょっと油を使いすぎじゃないか?皿に敷かれた紙がボトボトに濡れている。

とても全部は食べきれないと思ったら、衣を剥がして残すとか、少し工夫した方がいいかも。もったいない神様には後で謝ろう。

 

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Sea Shellもとても有名なFish & Chips専門店。こちらではメニューに「groundnut oil(ピーナッツ油)で揚げています」と誇らしげに書かれていて、たしかに軽い仕上がりとなっている。

この店には、Take Away(持ち帰り)コーナーとレストランが併設されている。もともとは持ち帰り店としてスタートし、最近になってレストランを増設したそうだ。

そう。Fish & Chipsは本来、持ち帰り用のファストフードなのだ。

f:id:LarryTK:20180124084307j:plain f:id:LarryTK:20180124084344j:plain フィンガーサイズで食べやすいFish Box。codであることとチップスの量が多いことに違いはない。

 

2.持ち帰り用Fish & Chips

持ち帰り店といえば、バラマーケットに行列のできていた'proper'(正統派)Fish & Chips店を思い出す。衣に香ばしい下味がついていて、ポーションも小さめだったので美味しく食べられた。larrytk.hatenablog.co

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昨年夏にバラマーケットを訪れたときの写真を見返してみると、`National Fish & Chips Award`(全国Fish & Chips大賞)に優勝したとの垂れ幕が下がっていることに気づく。

これだ!

このAwardの受賞店を探していけば、おいしいFish & Chipsに辿り着くはず。と思って検索をはじめたら、なんと私の家のすぐ近くに''Top 10 best newcomer'(新規開店ベスト10)の店があるではないか。

 

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私の家から車で5分のStones Fish & Chipsは、店内にテーブルの無い持ち帰り専門店。アツアツのFish & Chipsを家に持って帰ってきて、テレビでも見ながらフォークでグジャグジャと突いてだらしなく食べるのが、この料理の本当の食べ方だと聞く。

 f:id:LarryTK:20180124084859j:plain 塩ドバドバドバ

f:id:LarryTK:20180124084935j:plain モルトビネガーじゃぶじゃぶじゃぶ

Fish & Chipsとは、そもそもファストフードのスナックのようなもの。上品で美味しい料理を探していたこと自体、間違っていたのかもしれない。好きなだけ塩とモルトビネガーをぶっかけて、家の中でいかにも不健康に食べるのがいちばん美味しい食べ方かも。

f:id:LarryTK:20180124085027j:plain チップスもしょっぱくてうまい

 

3.新世界のFish & Chips

「おいしいFish & Chipsは家の中にある」という、なんだか逆説的な結論に至ったわけだが、それでは物足りないという人々がいる。

ロンドンにはミシュランの星を獲得した日本食レストランが二軒ある。その一つがUMU(ウム)という京懐石料理店だ。

f:id:LarryTK:20180130172642j:plain 狭い路地の奥にひっそりと佇む

UMUの石井総料理長は、"Fish & Chips革命"というスローガンを引っ提げてNYからロンドンへ乗り込んできた。

その本来の意義は、イギリスでの鮮魚の流通形態を変えてやろうという活動にあるのだが、店で出てくる「魚と芋」は、それだけで十分に革命的だ。スナックとしてのFish & Chipsの姿が、見事に日本流に表現されている。

f:id:LarryTK:20180130172532j:plain f:id:LarryTK:20180124165704j:plain もちろんめちゃくちゃ美味しい

 

もう一つ挙げておこう。Street XOというナイトクラブのような怪しいアジアン料理店。店内は若者たちが大いに盛り上がっている。

f:id:LarryTK:20180124165435j:plain f:id:LarryTK:20180124165514j:plain すべてが怪しい

メニューのいちばん上に「ハマチ・カルパッチョ "Fish & Chips"」とあったので注文してみたら、出てきたのがこれ。

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白い紙の上にハマチが並んで出てきた。これのどこがFish & Chipsなのかと、店員に聞かずにはいられない。

"よく見てよ。サツマイモの角切りとポテトチップが乗っかってるでしょ。これをハマチでくるむと、ほら’Fish & Chips`のできあがり!"

 そこまでしてFish & Chipsにこだわる必要があるのか?と疑問は残るが、きっとイギリスの人たちは、魚と芋の組み合わせに何かしらの安心感を覚えるのだろう。

 

いろいろなお店を廻ってみたことで、Fish & Chipsはスナックだという事実を再認識することになった。石井シェフの創作「魚と芋」の姿がそのことを端的に表している。どの店がいちばんおいしいか?などとあまり肩に力を入れないで、しょっぱくて油っこいFish & Chipsをつまみながら、おいしいビールと楽しいおしゃべりの時間を過ごすのがいちばんじゃないか、というのが今回の結論。

さて、そろそろまた日本からお客さんが到着する時間だ。お馴染みのパブへ行って、エールビールとFish & Chipsで乾杯してこよう。