第17回 日本人の行かない日本食レストラン
ロンドンには日本食レストランがたくさんある。正統派の京都懐石からなんちゃって寿司ロールまで、種類も様々。新橋の居酒屋みたいなところもあって、私たち日本人に寛ぎの空間を提供してくれているのだが、果たしてイギリスの人たちにはどんなお店がウケているのか。
今回は、地元の人たちに人気で、いつもお客さんがいっぱい入っているんだけど、ついぞ日本人の姿を見かけたことがない、というお店をいくつかご紹介したい。
1.Sexy Fish
Berkeley Square House,Berkeley Square. London W1J 6BR
Sexy Fish | Asian Seafood Restaurant Mayfair London
高級レストランの集まるメイフェア(Mayfair)地区のど真ん中、バークリー広場(Berkeley Square)に面した通りに、2年前、忽然と姿を現した。
事務所の近くなので、店の前を通るたびにとても気になっていたのだが、窓にはスモークが貼られていて、中の様子をうかがい知ることができない。店の看板にカタカナで「セクシーフィッシュ」と書いてあったり、メニューにSushiとかRobataとかあるところから、いちおう日本をイメージしたレストランなのだろうと推測する。
店の中をみてみたい。行ってみよう!
こういった高級店は、ランチでも予約は必須。ネットで予約して、その日を待つ。
当日。予約時間どおりに店に入る。
うぉー。ぴかぴかだー。
大きな絵の描かれた天井、フカフカのソファー、壁には豪華な装飾品。時間がゆったりと流れる別世界に迷い込んだようだ。
店名どおりのセクシーな女性が私たちを席まで案内してくれる。ソファーへ落ち着いた瞬間に、イケメンサーバーがメニューと水を持ってくる。
これが、高級店のサービスというものか。。
ため息をつきながら、メニューを眺める。時間の感覚とともに、金銭感覚もマヒしてきたようだ。メニューの数字が気にならなくなってくる。
料理を頼もう。周りのお客さんがどんな料理を食べているか、他のテーブルをチェックしてみる。
食べてない。。
みんな、ワイングラスをもっておしゃべりに熱中している。テーブルの真ん中に寿司ロールが何切れか残っている。
そう、ここは社交の場だ。ご飯をガツガツ食べるところじゃない。私たちも、控えめに注文することにしよう。ということで、以下、料理の一部をご紹介。
Sexy Fish Roll。£14(2,000円)。ご飯が入ってない。
ホタテの炉端焼き。これで£30(4,000円)は随分強気。
常陸野ネストビールがあってビックリ。
デザートは前衛的な抹茶アイス。
てなわけで、ちょこちょこと料理つまみながらお酒飲んでぺちゃくちゃしゃべっていたら、あっという間に2時間くらい経ってました。その間も、イケメンが何度もやってきて、皿を取り替えたりお酒を注いだり。そういえば、「ちょっと、すみませーん」と店員を呼び止めることは一度もなかったかも。
サービスにお金を払う。そんな高級店には、繊細な日本料理が合うのかもしれない。
2.Chotto Matte
11 - 13 Frith St, Soho, London W1D 4RB
Home - Chotto Matte | Nikkei cuisine | London
ロンドンで最も賑やかな地区、ソーホーは、各国の料理店にパブやバー、なんだかわからん怪しい店がごちゃごちゃっと並んでいて、昼も夜も若者がワイワイやっている街。このレストランバーも、店の外にまでお客さんが溢れている。
ん?チョットマッテ?一寸待てよ。もしかして、これ、日本語か?(混乱)
いったん家に戻って店のHPを確認。"Nikkei Cuisine"て「日系」てこと?日本-ペルーの融合とか書いてある。どんな料理だ?(再び混乱)
これは行ってみるしかない。
改めてお店へ。大人気の店らしく、予約がとれたのが8:45pm。既に街は混沌としている。
店の中に入るやいなや、縦ノリの音楽と立ち飲み客の喧噪に包まれた。予約してあると伝えると、上の階へ。
かっこいい。薄暗い店内でテーブルの上のローソクがゆらめく。壁には青っぽい絵が浮かび上がっている。
周囲を見渡してみる。若者のグループやカップルたち、ビジネスマンに親族の寄り合いみたい人たちまで、いろいろ。これからクラブへ向かうであろう黒いドレスの女性たちもウロウロしている。
みんな、大いに飲み食いしているようだ。次々と酒と料理がテーブルに運ばれていく。Sohoのパワーの源を感じる。
よし、我々も負けずに注文しよう。天ぷら、餃子、寿司ロールあたりがNikkei料理のようだ、ペルー料理からポテトやししとう焼きなど。ペルー風のバーベキューを頼もうとしたら、「それはお勧めしない」とウェイトレスに断られてしまった。そんなフランクさもこの店の人気の秘訣なのか??
寿司ロールを目の前で炙る。炎が飛び散って結構危ない。
冷やしたスパークリング日本酒をわざわざ徳利に移し替えてくれる。突っ込みどころが多すぎて、かえって黙って盃を傾けることに。
めっちゃ立派なデザート盛り合わせ
いろいろ不思議なこともあったが、料理は意外とうまいし、値段もそれほど高くない。何より、店にいるだけで楽しい気分になってくる。十分に満足して下の階に降りると、縦ノリがますます激しくなっていた。Sohoの危なっかしい夜はまだまだ続くようだ。
こうやってみんなで楽しく食べられるのも、日本食の魅力なのだ。
他にもご紹介したいお店はいっぱいあるけれど、とりあえず今回はここまで。どちらの店も満員だったが、日本人客は私たちだけだった。日本人の知らない人気の日本食レストラン。私たちの周りのお客さんたちが、日本料理を食べる目的でこの店に来ているわけではないことは、なんとなく察しが付く。
ゆったりと時間を過ごしたい。仲間と楽しくワイワイやりたい。そんな期待をもってお客さんはお店を選ぶ。そして、そのお客さんの期待に応える料理が、どちらも日本食だったとしたら、それは十分に誇らしいことではなかろうか。
第16回 急成長中!イングリッシュワイン
イギリス産のワイン?こんな寒い国でまさかという皆さんにお伝えしたい。イギリスでもワインを作ってます。しかも、この数年間に急成長を遂げているというから、驚き!
1.イングリッシュワインを飲もう!
ロンドン中心部のデパート、M&Sの食品コーナーでイングリッシュワインを売っているという噂を聞いて、現場を尋ねてみました。
おおー。ありましたわ。スパークリングワインが4種類、白ワインが11種類。赤ワインが2種類。こんなに簡単に手に入るとは!
見つけたからには、買わないという選択肢も無い。スパークリングと赤白を1本ずつ抱えて帰ってきました。
それでは、試飲。う~ん、うまい!
どんな味かって?ワインの味をうまくお伝えできる自信も無いので、ここはプロの方の表現をお借りして、
『トーストしたカラメル・ブリオッシュの香りに、リンゴ・ナシ・アプリコットやキャンディ・アーモンドがほのかに感じられ、すっきりとした辛口の酸味とキャンディ・ブリオッシュの後味が残る。』(Glass of Bubbly)
まあ、だいたいそんな感じかな。ブリオッシュがなんなのかよくわかんないけど。
2.Chapel Down
イングリッシュワインの代表格としてあげられるのが、Chapel Downという銘柄。
今年、Downing 10(首相官邸)の公式サプライヤーになったというニュースが話題になりました。首相官邸では、フランス産のシャンパンを止めて英国産のスパークリングワインを使うようになったとのこと。
では早速試飲。ふむふむ、キリッとした酸味が舌を刺激する。食前酒には最適かな。(語彙が貧祖ですみません。)
M&Sを覗いたとき、日本産の甲州ワインが1種類だけ置いてあるのを発見したので、ついでに買ってきました。北半球の島国からやってきたワインということで、共通するものがあるかも、と思って飲み比べてみたところ・・・
ほ~。こんなにも違うのか。
さらりとした甲州ワインと、後味しっかりのイングリッシュワイン。甲州ワインを飲んでいると、なぜか日本酒のイメージが浮かんできます。イングリッシュワインには、フランスのシャンパンの風味がしっかりと引き継がれている。これがアジアとヨーロッパの文化の成り立ちの違いなのでしょう。
3.イングリッシュワインの産地
イングリッシュワインはどこで作られているのか?
ガイドマップの地図をご覧ください。(見にくければ、リンクを開いてみてね。)
ロンドンの南東、KentやSussexといわれるイギリスで最南端に位置する地域に、ワイナリーが集中しているのがわかります。ドーバー海峡を隔てた向こう側はもうフランス。かの有名なシャンパーニュ地方とは、直線距離で200kmくらいしか離れていません。
気候が冷涼なためにブドウが育たなかったイギリスですが、このあたりの土質はシャンパーニュ地方とだいたい同じだそうで、地球温暖化の影響で平均気温が上がってくると、ワイン作りに最も適した地域に生まれ変わりつつあるといわれています。逆に、シャンパーニュ地方では夏の日照りが強すぎて、いいワインを作るのが難しくなっているとか。
4.ワイナリーへ行ってみよう!
なんと、ロンドンの近くで作っているんじゃないか。行くしかない!
ロンドンから車を飛ばして約2時間。Tenterdenという蒸気機関車の走るかわいらしい街の外れに、Capel Downのワイナリーがありました。
ワインの並ぶショップには後で入ることにして、まずは2階のレストランで腹ごしらえ。
オープンキッチンのオシャレな店内。席が空くまで、スパークリングワインを片手にバーで優雅にくつろぎます。
食事も本格的でした(写真撮るの忘れた)。大満足。さて、お腹いっぱいになったら、ショップの裏のブドウ畑を散歩してみましょう。
ブドウ畑はこちら⇒
美しい。。
イギリスの土地で、ブドウはたしかに育っていました。なだらかな傾斜地に太陽が燦々と降り注いでいます。林に囲まれた畑には、ブドウの木がずらり。
ちょうど秋の収穫が終わったあとのブドウ畑には、熟れたブドウの実があちらこちらに摘み残されています。区画ごとにわざわざ違った種類のブドウを栽培して、お客さんがぜんぶ見られるように配置されていました。
左が(たぶん)Bacchus、右は(きっと)Chardonnay
ブドウ畑はまだまだ続きます。
これは(おそらく)Pinot Noir
ブドウ畑をぐるりと周ってショップに戻ってくると、1本ずつのボトルごとに違いが見えてくるような気がしてきます。ロンドンではお目にかかれない商品もたくさん。あれも買いたい、これも買いたい。。
工場は激しく稼働中。
迷った末に、いちばん変わり種のNectarを買って帰ってきました。ボトルが細い。
名前のとおり、甘~いデザートワインでした。イギリスではこんなワインまで作れるのね。イングリッシュワインの奥深さを堪能したところで、今回のレポートはここまで。
(2019年BA更新版)第15回 ヒースロー空港で買えるお土産(ANA,BA編)
イギリスへ旅行に来て、あれやこれやとお土産を買いに走り回ったつもりが、帰国直前になって、
あ~あれも買っとけばよかった~。もう一回お店に行こうかな。でも時間がもったいない。きっと空港にもあるはず。でも、もし空港に無かったらどうしよう。
なんてグダグダ迷うこと、ありそうですよね。ここでいちばん問題なのは、空港まで来てしまったら、お目当ての物が無くても、もう引き返せないこと。
そこで今回は、皆さんよりも一足先にヒースロー空港へ乗り込んで、どんなお土産を売っているのか調査してきました。
今回調査したのは、東京行きのANAが発着する第2ターミナルと、British Airwaysが発着する第5ターミナルです。
なお、当然ながら、お店の商品は頻繁に入れ替わるので、いつも同じ物が置いてあるとは限りません。あくまで2016年10月現在の調査結果です。
<2017年更新版>
前回の調査から1年近く経ったので、もう一度両ターミナルを訪問してみたところ、いくつか新しい発見がありました。2017年7月現在の最新情報を各ターミナル紹介の後に追加しておきますので、ご参考に!
<2019年BA更新版>
先日ロンドンを訪れた際に、第5ターミナルをグルっと見てきました。記事の最後に情報を追加します。
それから、JALの発着する第3ターミナルの調査結果を別の回にまとめました。以下のリンクをご参考に!
1.第2ターミナル(ANA)
イギリスの空港では、セキュリティゲートの手前にほとんど店が無いので、乗客はチェックインを済ませるとすぐにセキュリティゲートを通過して中に入ります。一方で、飛行機の搭乗ゲートは直前まで知らされないので、それまでの間、ぶらぶらお店を覗いたり、パブでビールを飲んだりして時間をつぶします。だから必然的に出発ロビーのお店が充実しています。
第2ターミナルは、セキュリティゲートを通過すると2階部分に出る構造になっていて、ゲートのある1階に降りたところが出発ロビー。このあたりにお店が集まっています。さて、調査開始しますか。
日用雑貨を扱うWHSmith。上の階にも店舗がありますが、下に降りると大きなお店がデンと構えてて、品ぞろえも豊富です。
お馴染みWalkers(ウォーカーズ)のショートブレッドが山積み。Twinings(トゥワイニングス)の紅茶なども何種類か置いてあります。
定番のDuty Free Shopへ。こちらも両方の階にあるけど、下の階のお店の方が大きい。
もちろんウィスキーは充実。
こちらにもWalkersがどっさりと置いてある。英国最大のお菓子ブランドCadbury(キャドベリー)もあります。イギリスの子供たちはみんなCadburyのDairy Milkを食べて育つのだとか。
イギリスの二大紅茶ブランド、Fortnum & mason(フォートナム・アンド・メイソン)とTwiiningsもいろいろ揃っています。
ロンドンの老舗デパート、Harrods(ハロッズ)も店を出しています。
Harrods熊がお出迎え
紅茶やチョコレートなど、Harrodsブランドがズラリ。本店で買いそびれた商品があっても、ここで買い足しできそうですね。
と、構内を一回りしたところで、目ぼしいブランドはだいたい手に入ることがわかったんだけど、この程度なのかな~。う~ん、なんか物足りない。と思って、もう一回りしてみることに。
ロンドンのOxford Streetに本店がある高級デパートのJohn Lewis(ジョンルイス)がお店を出していました。店頭にクリスマス仕様のかわいいチョコやクッキーが並んでいるではありませんか。
John Lewisのロンドン本店
これはもしやと思って店内へ。あるある!!
おしゃれなデザインで日本人に大人気のチョコレート店、Charbonnel et Walker(シャルボネル・エト・ウォーカー)が棚いっぱいに。さらに、最近イギリス人の間で話題のHotel Chocolat(ホテルショコラ)のコーナーも。バッキンガム宮殿のギフトショップなどで売っているRoyal Collection(ロイヤルコレクション)の紅茶もある。
すごくレベルが高いぞ!!
まだ見落としているお土産があるのではないかと、構内をさらに一回り。
ここは、ファーストフード店のEAT.
サンドイッチの横にMarmite(マーマイト)が置いてある!「イギリスの納豆」との異名をもつこの不思議な商品を一瓶持って帰れば、帰国報告会でも盛り上がること間違いなし。
飛行機を待つイギリス人がたむろするパブの片隅に、化粧箱に入ったビール瓶を発見。London Pride(ロンドンプライド)は、ヒースロー空港近くの工場で製造されるロンドン市民に最も愛されているビールです。エールビールの独特の味が忘れられない方にぴったり。
と、第2ターミナルをぐるりと探検してみました。
それほど大きくない出発ロビーだけど、よーく店内を眺めてみると珍しいお土産がいろいろ見つかりました。皆さんもちょっと変わったお土産を探してみてはいかが?
(2017年更新版)
上の記事でも紹介したDuty Free Shop。昨年見たときはウィスキーだらけだった中央の棚にジンがずらりと並んでいました。
ロンドンではいまジンが大はやり。Sipsmith(シップスミス)やBeefeater(ビーフィーター)といったロンドン産のジンもあって、数も種類も豊富です。瓶もおしゃれなので、お酒好きへのお土産にばっちり!
John Lewisにも新たな品揃えが。ショーウィンドウに並ぶ紅茶の箱の模様に、なんか見覚えあるなと思って近づいてみると、なんと日本人に大人気のLiberty(リバティ)柄じゃないですか!
他にもデザインの素敵なWhitterd(ウィッタード)もあったりして、改めてこのお店、私たちの好みをわかっておられる!!
イギリス全土に展開する回転寿司チェーンのYo! Sushi。ここでお寿司を食べようとお勧めしているわけではない。理由はこちら。
お寿司の話はこの際置いとくとして、目をひいたのはレジ前に並んでいた海苔のパッケージ。Seaweed Snackと書かれたこの商品は、イギリス西部のウェールズで生産された焼き海苔なんです。いろいろ味付けがあって、どれもちょっと不思議な味がするけど、意外とおいしい。お友達へのネタ土産としていいんじゃないでしょうか。
2.第5ターミナル(BA)
ヒースロー空港の第5ターミナルは、英国最大の航空会社British Airwaysの発着のハブとなっているので、他のターミナルよりかなり規模が大きくなっています。ちなみに、イギリスでは国際線に乗るときも出国審査が無いので、第5ターミナルからは国内線も国際線もごっちゃに飛び立っていきます。
というわけで、気合を入れてめっちゃ広い出発ロビーを調査開始。
Harrodsの店舗も第2ターミナルよりずっと広い。食品もかなりの種類を揃えているようです。こんなに揃っているのなら、いつも激混みの本店にわざわざ行く必要ないんじゃないかな。
おー。Harrodsの店の中にEast India Company(イースト・インディア・カンパニー)のコーナーがある。日本ではあまり知られていないけど、イギリスの高級紅茶メーカーです。
こちらがEast India Companyのロンドン本店
下の階の奥の方に、Fortnum & Masonの店を発見。とても高級感あふれる店内。本店よりも立派なつくりで、ちょっと入りにくい?
ハリポタショップがオープンするのか。百味ビーンズとか買えるようになるのかな。
WHSmithも大きな店構え。クリスマス仕様のWalkersが並んでいました。Catwright & Butler(キャットライト&バトラー)のショートブレッドもおしゃれなパッケージで旅行客に人気。
Tobleroneの三角の箱が山積み。これはスイスのチョコ。
「イギリスに行ってきました」的なお土産ショップもありました。定番のショートブレッドや紅茶がいろいろ。
さて、Duty Free Shopもさぞ充実してるだろうと店内を覗くと、あれ?ウィスキーしかない。
これはおかしいと構内をウロウロしたところ、ありました!
Duty Free Shopがもう一つありました。しかもこっちは食品専門店。Cadbury、Walkers、Twinings、Thorntonsといった有名ブランドのコーナーまで設けられていて、品揃えも充実。さすがBritish Airwaysのお膝元。お土産品もBritish Foodで固められておりました。
ところで、CadburyのDairy Milkを眺めていたとき、ふと気になって袋をひっくり返してみました。棚の上半分に並んでいたオリジナルのDairy Milkは、もちろん"Made in UK"。ところが、下半分のDairy Milk Caramelの裏面をみてびっくり。"Made in France"じゃないか!え~。「ロンドンの味」みたいなこと書いてあるのにフランス製なのか~。
イギリスは(まだ)EUの一部なので、EU域内の商品の移動は自由。どの国で作ってどの国で売ってもいいわけなんだけど、なんかね~。
ヨーロッパ人はこだわらないのかな。でも、我々はこだわるよね。重い荷物背負って日本へ持って帰った後にガクッとならないよう、念のため裏面を見てから買いましょう。
ということで、 空港のお土産売り場を駆け足で見てきました。老舗の銘柄から最近話題のブランドまで、バラエティ豊かな陳列棚をみていると、商品の由緒とか歴史とか、もっと知りたくなってきました。こんどは、ロンドンにある老舗の本店めぐりでもやってみますね。
(2017年更新版)
第5ターミナルにも久々に再訪問。
おー!ハリポタショップが開いてるじゃないですか。
ハリポタグッズは一揃いあるようですが、お菓子の品揃えがあまり多くなくて、私が見つけたのは、スライムゼリーとホグワーツ特急の板チョコと百味ビーンズの小箱くらいかな。
なんか日本で見たお菓子とパッケージが違うような気がするので、ファンの方にはいいお土産なのかもしれません。誰か詳しい方教えて!
(2019年更新版)
2年ぶりに第5ターミナルを訪問。
あれっ?ハリポタショップの場所が変わってる!店構えも広くなってました。この国でもハリポタ人気は根強いんですな。
スナックワゴンも充実。
空港ロビーのど真ん中に構えるオープンテラスのスタバ。イギリスやロンドン限定のカップが何種類も並んでいます。自分へのお土産にピッタリかな。
もちろん私も持ってます!
ヘルシーな寿司などを売るitsu(イツ)。私が第1回で特集した記念すべき日本食(?)チェーンもど~んと展開しています。
レジ前に日持ちしそうな商品が並んでいます。米粉ケーキとか、エビせんべいもどきとか、韓国海苔とか、かなりカオスな状況ですな。
そんな中に並んでいた「チョコレート枝豆」が気になって気になって、つい購入してしまいました。
日本へ持って帰ってきて、久々の実食レポート。
ん?枝豆は塩味だ。甘いのかしょっぱいのか、よくわからないけど、なぜか美味しいかも。あっという間に食べ尽くしてしまいました。
美味しいことにびっくり!
イギリスの不思議はまだまだ尽きませんな。
第14回 緑茶とグリーンティのあいだ
紅茶の国イギリスで、緑茶が流行っている。健康にいい"Super Food"などともてはやされている。TESCOの大規模郊外店では、お茶コーナーが棚5段分に広がっているが、そのうちの1段を緑茶が占拠していた。
そんなに緑茶が人気なのか。日本の誇るお茶の文化がイギリスにも受け入れられつつあるのだな。と思いながら、製品をひとつ手にとった。
TwiningsのGreen Tea Lemon & Ginger。日本ではお目にかからない風味だ。
裏面を見る。”Zhejiang (浙江省)、Jiangxi (江西省) 、Anhui (安徽省)で摘んだ茶葉を使っています”と書いてある。中国茶だ。
試しに一箱購入して淹れてみた。オレンジの水色と、強烈なレモンの香り。日本の誇る緑茶文化はいずこへ??
いや、ちょっと待て。
イギリスの緑茶ブームは、果たして日本が発信源なのか?頭の中に疑問符が沸いてきた。
いったいいつから、イギリスは緑茶を知っているのだろうか。「英国は紅茶の国、日本は緑茶の国、中国は烏龍茶の国」という常識は世界共通なのか。ほんとうに昔から常識だったのか。
私は、イギリスと緑茶の出会いを遡る旅に出ることにした。
1.Twinings
手始めに、手に取ったこの緑茶の起源を探してみる。Twinings本店は、ロンドンの二大中心地、WestminsterとCityを結ぶStrand通りの真ん中にある。
さて、Twiningsの店はどれでしょう?⇒⇒
⇒⇒正解はこちら。
Twiningsの創業は1706年。裁判所の正面に位置するこの地に、当時から店を構えていたという。300年以上、同じ場所でお茶を売り続けてきたわけだ。
Twiningsの創始者、Thomas Twiningさん。
店の中は異様に狭い。両手を伸ばすと左右の壁に届くくらい。壁沿いに製品が陳列されていて、店の奥は試飲コーナーと古い広告や文献を並べたミニ博物館になっている。
この店でも、予想外に緑茶が多い。全体の4分の1くらいを占めている。入り口脇にも緑茶が並ぶ。最近の流行に乗って緑茶を置き始めたようには思えない。もしや、昔から売られていたのではなかろうか?
2.お茶の歴史
Twiningsが設立された1706年には、イギリスでどんな風にお茶が飲まれていたのか?
角山栄著「茶の世界史」(中公新書)は、1980年に刊行された古い書籍だが、いまだ多くの示唆に富んでいる。この本を頼りに、イギリスにおけるお茶の歴史を遡っていくことにしたい。
お茶を飲む習慣がイギリスに伝わったのは17世紀。東インド会社がアジアから胡椒などを運んでいた時代だ。世界史の教科書を思い出してみよう。
1657年には、ロンドンのコーヒーハウスでお茶の販売が始まったとある。「英国は紅茶の国」というイメージがもう崩れた。コーヒーとお茶は、ほぼ同時代にイギリスに伝わって、同じように飲まれていたのだ。
さらに衝撃が続く。本書の記述を引用する。
「18世紀はじめには輸入茶の約55%が緑茶で、紅茶は約45%であったのが、その後紅茶の輸入がいちじるしい増加を示し、・・・緑茶と紅茶の地位が逆転してしまうのである。」
なんと!イギリスも昔は緑茶の国だったのだ。イギリス人は、300年も前から緑茶を知っていた。その大半が中国からの輸入だったという事実も看過しがたい。
この時代への想いを馳せるために、場所をすこし移動する。
3.V&A ミュージアム
歴史を勉強したいと思ったら、貴重な資料がすぐに見つかるのがイギリスの凄いところだ。Victoria & Albert Museumには、古い調度品や生活用品が時代の流れに沿って陳列されている。しかも、タダだ!
お目当てのものがさっそく見つかった。
17世紀当時、イギリスでは陶磁器を作る技術がまだ発達していなかったので、アジアから大量の皿やカップを輸入していた。上のカップは、17世紀後半に中国から輸入されたもの。当時の英国の貴族たちは、中国から輸入したカップで、中国から取り寄せた緑茶を飲んでいたのだ。
中国製ばかりではない。上のポットとカップは有田焼だ。当時、日本はオランダとしか貿易をしていなかったから、オランダを経由してイギリスに運ばれてきたのだろう。
上のカップに取っ手が無いことにお気づきだろうか。当時、お茶は湯呑を啜るように飲まれていた。この絵のカップにも取っ手が無い。
イギリスで飲まれるお茶が、いかにアジアと深く結びついてきたかがわかってきた。その奥に、緑茶文化を発展させていた日本とのつながりも見え隠れする。
別の機会にOxfordで訪れたAshmolean Museumにも、アジアから運ばれてきたカップが展示されていた。
ここもやっぱりタダだ。
左の写真のカップとソーサーは中国製、その隣の大きなカップは英国製。形から図柄まで、中国製に似せて作られている。右の写真のソーサーは中国製だが、御揃いの図柄のカップがイギリスで作られた。
このカップも取っ手がない。
17~18世紀のイギリス人にとって、アジアは神秘的で興味の尽きない文化に溢れていたようだ。
エキゾチックな風味のする緑茶を楽しんでいたイギリス人が、だんだん紅茶を好むようになり、いつしかそれがイギリス特有の文化となった。そしていまや、Wedgwoodのカップで紅茶を飲むイギリスの生活に、我々が憧れを抱いている。なんだか不思議な構図だ。
4.英国のグリーンティ
ロンドンのV&Aミュージアムに戻ろう。館内を歩き回って疲れてきたので、V&A ミュージアム内のカフェで休憩。ここもまたオシャレな内装で観光客に人気のスポットだ。
お茶の勉強に来た記念にお茶を一杯、とメニューを見上げて、あっ!と声をあげた。
メニューをじっと見つめる。お茶が3種類に分類されているのがわかる。Black teaとGreen teaとInfusion。Green teaのメニューには、オリエンタル煎茶とジャスミン茶。
私はようやく理解した。「グリーンティ=緑茶」と決めつけていた自分が間違っていた。
グリーンティとは、お茶のカテゴリーの名称だ。ワインがレッドとホワイトに分けられるように、ティはブラックとグリーンとインフュージョンに分類される。
緑茶は、水色が濃い緑で、茶葉の香りが立って、喉の奥に少し渋みが残らなければならない、というのは、我々の考える「緑茶」の定義だ。ブラックティが黒色でないように、「グリーンティ」はオレンジ色でもよいし、レモンで香りづけしてもよいし、はちみつの甘味が加わってもよい。「グリーンティ」の定義は、「緑茶」よりもはるかに広い。
5.イギリスのお茶の歴史(ふりかえり)
再び先の本を読み返しつつ、イギリスのお茶の歴史をざっくりと整理してみる。
昔、イギリスには茶葉がなかった。しかし英国人は、ラズベリーやカモミールを煎じたハーブティを飲んでいた。こちらで「インフュージョン」と呼ばれるこれらの飲み物は、茶葉を使わないから本来は「ティ」ではない。そして、こういったインフュージョンを楽しむ英国人の習慣が、その後アジアから伝わる茶の受け入れを容易ならしめていた。
17世紀になってアジア、特に中国から茶葉と陶磁器が大量に輸入されるようになり、お茶はコーヒーとともに大ブームとなった。初めにロンドンで話題となったのは緑茶であり、その後、インドでのお茶の生産なども始まって、紅茶がイギリス中に広く浸透するようになった。
もういちどTESCOの棚をみてほしい。5段あるお茶コーナーは、左から3段がブラックティ、次の1段がグリーンティ、右側の1段がインフュージョンとなっている。イギリス人は、たしかにブラックティがとても大好きだが、グリーンティもインフュージョンも大好きだ。300年の間、こうやっていろいろな種類のお茶を分け隔てなく楽しんできたのだ。
とあるホテルでのアフタヌーンティのメニュー。アールグレーやアッサム茶に混じって、煎茶やインフュージョンが載っている。「アフタヌーンティは紅茶で!」という既成概念を作っているのは我々の方だ。煎茶を楽しみながらスコーンを食べるのだって、立派なアフタヌーンティなのだ。
6.グリーンティの中の日本
翻って、緑茶ブームに沸くイギリスで、日本の緑茶はどのようにみられているのか。
我々の定義する「緑茶」は、グリーンティの一種ではあるけれど、イコールではない。グリーンティが売れているからといって、緑茶が受け入れられているとは限らない。
ロンドンで開催された健康食品の見本市。
世界中から自慢の健康食品が集まる中、あちらこちらのブースで抹茶が展示されているのが目についた。イギリス人のお姉さんがシャカシャカと点ててくれる。
グリーンティの人気が高まる中で、特に抹茶への注目度は高い。抹茶は、あのお点前とセットになったところで、ようやく日本のイメージと結びつくらしい。自然豊かな日本のポスターなども貼られていた。
様々なグリーンティの溢れるイギリスにあって、日本産品を際立たせるには、なんといっても抹茶を主軸に売り込んでいくしかないのではないか。そんなことを考えさせられた一日であった。
ただし、見本市に展示された抹茶の原産地を聞いて回ったら、中国、韓国、台湾との答えが返ってきた。日本のお茶を売り込むのは、かくも難しい。
第13回 ロンドン杯カップラーメン選手権
ロンドンに来て1年。ラーメン大好きの私は、スーパーの棚に並ぶカップラーメンに手を伸ばしては、激しく後悔する日々を過ごしてきた。
それにしても、英国製のカップ麺はどこがダメなのか。もしかするとちょっとくらい見どころもあるのではないか。それで今回、英国製カップラーメンをずらりと並べ、味やにおい、外見など体系的に調査してみようと思い立った。
これだけのカップ麺を一人で食べるのは無理なので、うちの家のひとにも手伝ってもらった。ごめんよ~
それではさっそく、第1回ロンドン杯カップラーメン選手権のはじまりはじまり。まずは、精鋭5選手の入場行進だ!
1.Pot Noodle (Unilever)
大手スーパーで最もよく見かけるカップラーメンといえば、"Pot Noodle"だろう。1970年代に誕生し、現在は食品製造大手のUnileverから販売されている。年間1億7千万個製造されているそうだ。
今回の選手権では、フレーバーを揃えるべく、できるだけチキン味に統一して買ってきた。
蓋を開けると、麺に白い粉が振りかけられていて、チキンの香りが漂ってくる。しょう油が入っている思われる袋を取り出してお湯を注ぐ。指示通りに2分待ってかきまぜ、さらに2分待ってまたかきまぜる。
さて、時間になったので、たぶん完成。麺がまだ戻っていないように見えるが、構わず試食タイムに突入。
、、、やっぱり麺が硬い。そして油っぽい。スープは。。う~ん。なんて言うか、イギリスあるあるの例の味だ。いわゆるBluntな、味気のない味。パンチの効かない味。
そうだ、こういう時のためにしょう油の袋がついていたじゃないか!ぼじょぼじょと入れてみる。う~ん、このしょう油もまた味がない。。
今日これからの長い苦難を想像しつつ、完食。
2.Mug Shot (Symington's)
食品製造大手のSymington'sから販売されている"Mug Shot"。商品名からもわかるとおり、マグカップに中味を開けてお湯を注ぐ袋タイプが主力であるが、カップタイプも広く販売されている。
麺の上には、やはり粉が振りかかっている。指示通りにお湯を注いですぐにかき混ぜ、5分待つ。
完成したと思われるので、試食タイム。やたらと短くて平べったい麺は、粉っぽいのが気になるものの、Pot Noodle より食べやすい。
スープはとろみがついてドロドロ。味は・・鶏を塩で茹でたときの茹で汁の味。いちおう食える味かなと思いながら食べ進んでいると、ん?スープの味が途端に濃くなった。こ、これは・・粉調味料の味そのままだ。スープがドロドロすぎて、底にたまった調味料がうまく混ざっていなかったのだ。舌に強い刺激を感じつつ、完食。
3.Speedy Noodle (Newgate)
イギリスでは大手スーパーのプライベートブランド(PB)が普及していて、カップラーメンも例外ではない。各スーパーが自らのブランドのカップ麺製品を販売しているのだが、今回は出場希望が多かったので、PBには選手権への出場を自粛いただいていた。
ところが、ディスカウントストアLidlでNewgateの"Speedy Noodle"を買ってしまった後に、これもLidlのPBであることに気付く。しかし、せっかく買ったんだからと、今回は特別に出場を認めてあげた。
やはり麺の上に白い粉。フタに"Ready in Minutes"と書いてあるが、いったい何分待てばいいのか書いてない。小さな説明書きを読み進めてようやくMinutesとは4分であることを知る。
お湯を入れるとビニールのフタがふにゃふにゃに。
4分後、試食開始。麺があまりに短くて箸で掬えない。ベビースターラーメンより短い。そして、ベビースターラーメンのように硬い。
細かく刻んだセージの葉が入っていて、ハーブの香りが漂ってくる。スープはなぜかカレーの味がして、どのフレーバーを買ったんだっけ、と何度もラベルを確認した。たしかにチキン味なのだが。
スープがドロドロになるまで調味料の粉を溶かし続けると、フレーバーにかかわらずカレー味になるという新発見に感激しつつ、完食。
4.Deli Box Noodles (Batchelor's)
"Batchelor's"は100年を超える伝統あるスープ製品のブランドで、現在はPremier Foodsから販売されている。Premier Foodsといえば、今年春にカップヌードルの日清食品と業務提携することが発表され、大きな話題となった。
今回の出場商品の中で唯一、粉調味料の袋が別についている。麺の上にはグリーンピースも乗っている。やはり日清食品と提携するだけのことはある。きっとカップラーメンを美味しくしようと真剣に取り組んでいる会社なのだろう。食べる前から期待が高まる。
2分待ったらかき混ぜてまた2分。よしできた。試食開始。
一口食べたところで、うぷっ。。。。
粉ぐすりの味がする。麺からもヘンな味が染み出てくる。そして、くさい。家のひとたちが次々と脱落して食卓を離れていく。
"Mug Shor"のような薄い味とは違って、しっかりと味はついているのだ。日本のカップ麺を真似て、調味料の配合などで頑張って味付けしたのかもしれない。その結果がこれか。。。これよりは、鶏の茹で汁のBluntな味の方がまだ食べられる。
Premier Foodsのみなさん。ぜひ横浜のカップヌードルミュージアムへ行って、カップ麺の真髄を学んできていただきたい。これからの変身ぶりに期待してます。
でも今日は、俺ももう食べられない。カップ麺の神様ごめんなさい。
5.Kabuto Noodles
"Kabuto Noodle"は私にとって忘れられない商品だ。渡英したばかりの昨年8月、荒んだ食生活を送っていた私は、Sainsbury'sでカップラーメンを見つけて喜んで購入した。
大きな期待とともに勢いよく麺を啜りあげた私は、すぐさま現実を悟り、『オェ。スープも麺も、烈しくマズい』とFBに感想を書き残している。
さて、"Kabuto Noodle"とはあれ以来1年ぶりの再会だ。その間に何か変化しただろうか。
麺は卵色。調味料の臭いはあまりしない。麺に調味料が刷り込まれている模様。指示どおりに3~4分待ってかきまぜ、さらに1分待つ。
なんだか麺が長いぞ。
麺が伸びる伸びる~~。て、長すぎやろ!
なが~い麺を、ずるずるずるずる。ん?スープは薄いしょうゆ味で、すこし辛い。麺に香草がまとわりついてくる。これ、ラーメンじゃないや。タイヌードルのような東南アジアの風情がある。そう思うと、これは意外と食えるかも。
今回は、難なく完食した。日本のカップ麺と同じ味を求めるから、拒絶反応を起こすのだ。「カップラーメンはかくあるべし」という既成概念を超えて、世界の多様な味を楽しむ余裕がこの1年で私の中に生まれたのかな。
それとも、私の舌が単に鈍感になっただけか?
6、戦い終えて
ロンドン杯の5連戦は、予想以上にハードであった。戦い終えて、家のひとびとに「いちばん美味しかったのはどれか」と聞いたのは、私の誤りであった。もちろん答えは「該当なし」
それで改めて、「もう一度食べなければならないとすれば、あえて、どれを選ぶか」と苦渋の選択を迫った。悩んだ末に出た答えは、『Pot Noodle2票、Mug Shot2票』であった。
しかし、「イギリスのカップ麺は不味い」と決めつけてしまう前に、思い返しておかなければならない。これら5種類のカップ麺は、いずれも順調に販売されているのだ。英国の人々がこのカップ麺のどこに価値を見出しているのか、きっと私はまだまだ理解できていないのだろう。
でも、カップラーメン選手権は、もう、二度とやらない。
第12回 コッツウォルズの農園
イギリスのコッツウォルズには農家レストランがたくさんあって、田舎に憧れる都会人が訪れてとても繁盛している。
渡英前、私は複数の人からそう聞いてきた。では早速みてみよう。と、コッツウォルズへ行ってみたんだが、あれれ??
コッツウォルズに散在するいくつもの町を覗いてみたが、どの町にもパブはあるけど農家レストランなんて見当たらない。町の外には、羊しか見当たらない。農家レストランはいずこに?
イギリスの農業に詳しい私の師匠に聞いてみた。
ああ、それたぶん、ディルズフォードのことだよ。日本の農家レストランのイメージとはだいぶ違うけどね。
というわけで、ディルズフォードの農家レストランへ直行だ!
1.Daylesfordへ
ロンドンから車で西へ2時間も行くと、道の両脇が緑に覆われ、丘を登ったり下ったりし始める。右にも左にも羊が現れてきたら、そこはもうコッツウォルズだ。
ディルズフォードは、コッツウォルズの中心的な町のひとつ、モートン-イン-マーシュのすこし手前にあるということだ。視界の悪い緑のトンネルをナビを頼りに走り続け、あれ、迷ったかも?と思った頃に小さな看板を見つける。
到着!
入り口からして、とてもオシャレだ。建物も見かけは古いが、センスよく改装されている。これはレベルが高いぞ。
2.まずは農園に
出発前にHPをチェックしたら ~週末はいちご狩りできます~ とあったので、まずはそちらに。
建物の中に入るとすぐに、⇒農園はあちら⇒ の看板。
店の中を素通りして裏口から外へ。
するとそこにはお兄さんが。私たちの農園へようこそ!
なんでも採っていいよ。の声に押されて農園へ。
ディルズフォード農園は、35年前にオーガニック農園として別の場所で開園し、その後、コッツウォルズに移ってきたとのこと。そんな昔から有機農業に目をつけていたとは、イギリスは歴史の長さが違う。
いちご畑。
広い農園だなーと思って見ていたけど、これは900haある農園のほんの一部だそうな。日本の畑とは規模が二桁違う。
ビニールハウスの中では、トマトやキュウリ、シシトウなど、いろんな野菜が育ってる。この国に来て、麦と牧草以外の農産物を初めてみた。
ビニールハウスのことを、お兄さんはポリトンネルと言ってたな。夏でも涼しいイギリスだが、ポリトンネルの中は高温多湿。野菜の生育には最適な環境のようだ。
摘んできたいちごと野菜は、ここで量り売りされる。いちご一山とキュウリ2本、シシトウ1本。むかし銭湯にあったような大きな秤に、いちごをちょこんと乗せる。ぜんぶで£4くらいだったかな。売る方も買う方も、まあ適当。
3.そして、農家レストラン
今回の訪問の主目的は、農家レストランだった。
休日のお昼どき、お客さんは満員。家族連れ、お年寄りグループ、カップルなど、客層も多彩で活気あふれている。
オープンキッチンの店内は広く、白を基調とした明るく清潔なデザイン。親切でイケメン/キレイな店員たちに、こだわりポイントを丁寧に説明するメニュー。
せっかく農家レストランに来たんだからと、3種類のサラダのコンビネーションを注文したら、採れたて新鮮なオーガニック野菜が山盛り。
肉もチーズも自家製のオーガニック。こちらにも、付け合わせの野菜が彩りを添える。
う~ん、うまい。ロンドンから2時間かけてやってくる価値あり。
レストランに併設されたショップには、農園で作られた食品がずらりと並んでいる。オシャレなパッケージに、どれだけ丹精込めて作られたか書き込まれている。ちょっと高めでも、つい手が出る。
ショップの前の庭で、コーヒーを飲んでくつろぐこともできる。優雅だ。
4.ところで
ディルズフォードの商品は、実はコッツウォルズまで行かなくても買える。
ロンドンにアンテナショップを3店舗を構え、オンラインショップも開設されている。
写真は、ノンッティング・ヒル店。
店内にはオーガニックの商品がいっぱい。コッツウォルズの農園から運ばれてきたことが説明されている。カフェも併設。オシャレな街に溶け込んだオシャレなお店となっている。
でもやっぱり、いちどコッツウォルズの農園を訪れた後の方が、この商品のありがたみを感じられる。
5.結論
コッツウォルズには、農家レストランが少なくともひとつあった。自分のイメージする「農家レストラン」とは、なんか違うけど。なんでだろ?
レストランもショップも、とてもとても洗練されている。料理も商品も。「田舎臭さ」をまったく感じない。
そもそもイギリス人には、「都会=スタイリッシュ、田舎=野暮ったい」という感覚が無いのかも。田舎や農業には「土の匂い」がついてくると思うんだけど。
イギリス人にとっての「田舎」とは何か?新たなテーマを見つけたところで、今回のレポートはここまで。
第11回 Royal Ascot 大研究
イギリスがEUから離脱することになって、「なんてこった。イギリスはもうオワリだ。」という声をきく。そのとおりだ。これからのイギリスには、大きな変動と困難が待ち受けているだろう。
しかし、ひとつだけ確かなことがある。何百年と続いてきたイギリスの伝統、EUなんて影も形もなかった頃から受け継がれてきたイギリスの文化や習慣は、これからもちっとも変わらないということだ。
その代表格が、アスコット競馬場で開催されるロイヤル・アスコットだ。
ロイヤル・アスコットの起源は1711年に遡る。王室の居城であるウィンザー城から7マイルほど離れたこの地に、アン女王が「馬を走らせるのに最適だ」と言って競馬場を作らせたのが始まりとされる。それから300年以上もの間、イギリスの短い夏の幕開けを告げるため、ロイヤル・アスコットは毎年開催され続けてきた。
英国全土がEU残留か離脱かで揺れ動いた2016年6月もまた、ロイヤル・アスコットはいつもと変わらぬ華やかさで幕を開けた。
日本でも競馬好きの方ならロイヤル・アスコットの噂を聞いたことはあるだろう。ただ、その格式の高さゆえ、私なんてとてもとても行けないわ。と思っている人も多いだろう。
そんな皆さんに、今回は、華やかで楽しくて、そして実は誰でも参加可能な、ロイヤル・アスコットの魅力をお伝えしたい。
1.アスコット競馬場への行き方
アスコット競馬場はどこにあるのか?
アスコット競馬場は、ロンドンの西部約30マイルのところにあって、ロンドンから日帰りできる。電車なら1時間でアスコット駅に着いて、駅から10分歩けばもう競馬場だ。車でも1時間くらいで到着する。
近くのウィンザー城に住むエリザベス女王は、ロンドン中心部にあるバッキンガム宮殿との間を頻繁に行き来している。春にオバマ大統領が来英したときも、ウィンザー城で女王とランチした後にロンドンへ戻って、夕食はケンジントン宮殿だったはず。キャメロン首相が卒業したイートン校もこの近くにある。ここは、ロンドン郊外にありながら、ロンドンの中枢との強いつながりを持つ地域なのだ。
ところで、アスコット競馬場で競馬を楽しむチャンスは、ロイヤル・アスコットに限らない。
どういうことか。ロイヤル・アスコットとは、6月後半の5日間だけ、エリザベス女王臨席の下で行われる王室主催の競馬開催のことをいう。
昔は、ロイヤル・アスコットを開催する5日間しかこの競馬場は使用されなかったそうだが、現在では、7月のキングジョージ6世&クイーンエリザべスステークスなど、通常の競馬開催も行われている。8月には各国騎手対抗のシャーガーカップも行われ、毎年日本の騎手も参戦する。
これらは王室主催ではないが、アスコット競馬場の華やかな雰囲気を味わうには十分だ。夏休みにロンドン旅行を計画されている方は、ぜひ競馬場の開催日をチェックして、日程に組み込めるかどうか検討してみていただきたい。
ロイヤル・アスコットのときだけ、ウィンザー城の衛士が競馬場を警備しにくる。
2.いざ、ロイヤル・アスコットへ!
私は今回、車にて参戦した。11時頃に到着。事前に買った駐車券を提示し、誘導されるままに駐車スペースに入る。といっても、芝生の上に適当に止めていくだけだが。
車を降りてまずビックリ。周りの人々が次々とテントを組み立て始めた。テーブルの上にワインとサンドイッチを並べて、ピクニックの開始。あれれ~、競馬は見ないの??
そうなのだ。ロイヤル・アスコットの第一競走は、午後2時30分出走。なぜそんなに遅いかは後でわかる。とにかく、それまでは優雅にランチタイム。
で、競馬場はどっち?とまわりを見渡して、あっと気付く。ここ、競馬場の内馬場じゃないか。いつの間にかトンネルをくぐって場内に入っていたわけだ。
駐車場からスタンドまで、馬場を横切って歩いていく。ちなみに帰りも同じく馬場を横切る。レースの合間に観客が馬場を横断するなんて、日本では考えられないな。
3.噂のドレスコード
ロイヤル・アスコットといえば、厳しいドレスコードで有名だ。機関車トーマスのトップハムハット卿のような格好をしなければ中に入れないと思われているだろう。
アスコット競馬場は、実のところどのようなドレスコードを要求しているのか?競馬場のHPの記載を丁寧に読み解いていきたい。
その前に、入場券の仕組みを理解しておきたい。ロイヤル・アスコット開催には、ロイヤル・エンクロージャー(招待客のみ)、アン女王エンクロージャー(特別チケット)、ウィンザーエンクロージャー(一般チケット)の3つのカテゴリーがある。
アン女王エンクロージャーのチケットは誰でも買える。入場料は日によって異なるが、だいたい£70くらい。一般チケットは£25くらい。
ちなみに、ロイヤル・エンクロージャーも、招待客はチケットを買って中に入る。入場料£150。高けー
入場券の種類によって、競馬場内で観戦できるエリアが異なる。エンクロージャーとは「囲い込み」という意味。世界史で習ったとおり。場内を柵で囲い込んで、特別客用のエリアとしている。ゴール板前はロイヤル・エンクロージャー、その外側にアン女王エンクロージャーといった具合に。そして、エリア毎にドレスコードが違っている。
上の写真に見えるゲートがロイヤル・エンクロージャーの入り口。このようなゲートがいくつかあって、その内側の仕切られたエリアがロイヤル・エンクロージャーとなっている。
右の写真を見ていただきたい。手前側がロイヤル・エンクロージャーで、スタンドの真ん中に柵があって、その向こう側がアン女王エンクロージャー。人口密度が違っているのがわかるだろう。
それでは、エリアごとのドレスコードを見て行こう。
(1)ロイヤル・エンクロージャーのドレスコードは、評判通りの厳しさだ。
男性は「黒かグレーのモーニング・ドレス」と決まっていて、
・ウェストコート及びネクタイ着用
・黒かグレーのトップハット着用
・黒無地の靴着用
とある。まさにトップハムハット卿の世界なのだが、スタイルはほぼ1種類なので迷うことはない。貸衣装屋で「ロイヤル・アスコット向け一式」を借りてくるだけだ。
ちなみに、私もご縁があって「ロイヤル・アスコット向け一式」を借りて中へ。
やっぱり、日本人には、似合わね~。
一方、女性のドレスコードは次のとおり細かく決められていて、何を着ていけばいいのか迷うことこの上ない。
・ドレス・スカートは、膝上以上の適切な長さであること。
・ドレス・上着は、1インチ以上のストラップがあること。
・ジャケット・ストールがあった方がよい。ただし、その場合でもドレス・上着はドレスコードを守る必要がある。
・パンツスーツは認められる。この場合、長丈で素材・色が調和している必要がある。
・帽子着用は必須。帽子の代わりに直径10cm以上で固い素材でできたヘッドピースでもよい。
・ストラップレス、オフショルダー、ホルターネック、スパゲッティストラップは禁止。
・お腹は隠れている必要あり。
・ファシネーターは禁止。
こんなにルールが細かいと、着る服が見つからないとお困りだろうか。実際は、意外とそうでもない。
老いも若きも、みな思い思いにオシャレしている。まるで仮装大会さながらの衣装も見られる。それでもきちんとドレスコードは守られているのだ。
ロイヤル・アスコットでは、地味な服装の方がかえって目立ってしまう。自信をもってお気に入りのドレスを着て行こう!
(2)アン女王エンクロージャーでは、ドレスコードも若干緩くなる。
男性は、
・スーツ・Yシャツ・ネクタイ着用。
なので、スーツでオッケーということ。
女性は、
・帽子、ヘッドピース又はファシネーター着用。
・ストラップレス、薄生地のストラップは禁止。
・パンツは長丈。ショートパンツ禁止。
・お腹は隠れいてる必要あり。
となっている。つまり、肩とお腹をみせるな。スカートは長く。帽子をかぶってこい。ということ。ちょっとしたヨソ行きの服で大丈夫なようだ。
(3)ウィンザー・エンクロージャーでは、
・スマートな服が望ましいが、ドレスコードは無し。ただし、レプリカのスポーツシャツは禁止。
つまりは普段着でよいということ。ただ、周囲の人々の雰囲気を考えれば、それなりにオシャレしていった方がいいことは間違いない。
ロイヤル・アスコットに限らず、イギリスで競馬場へ行く機会があれば、少しばかりのオシャレをして行くことをお勧めする。なぜなら、この国では競馬場は美しく華やかな社交の場だからだ。肩肘を張る必要はない。ちょっといい服を着て、ワインやシャンパンを飲みながら、お気に入りの馬にすこしお金をかけて応援する。そんなイギリス流の楽しみ方をぜひ体験していただきたい。
4.女王陛下の到着
午後2時、スタンド前直線走路の向こう側に、エリザベス女王の乗った馬車が現れた。ロイヤル・プロセッションが始まる。昔はウィンザー城から馬車に乗って来たそうだ。つまり、女王がウィンザー城から競馬場に到着するのを待って、ようやく競馬を始めるというわけだ。だから、第一競走の発走が遅いのだ。
それはまた、女王の御召し物に全員が釘付けになる瞬間でもある。この日は、青空色のドレスにオレンジの帽子。なんと鮮やかな!帽子の色を賭けさせるブックメーカーがあったが、きっと万馬(帽)券に違いない。
女王を乗せた馬車は、メインスタンドの前をゆっくり通過する。マーチングバンドがGod Save the Queenを演奏し、一同が帽子を脱いでご挨拶する。
パドックをぐるっと1周して、女王が降車したところで、ようやく第1レースの馬がパドックに登場する。いよいよ競馬の開始である。
女王の観戦ブース。鮮やかな帽子のお陰で遠くからでもよくわかる。
5.レース開始!
ロイヤル・アスコット開催では、1日に6レースが組まれる。開始は遅いが、この時期のイギリスは日も長い(9時頃まで明るい)ので、焦ることはない。
レース自体は、通常開催とさほど変わるものではない。パドックの中も外も、トップハットと華やかな帽子で埋め尽くされるのが面白い。
パドックの観客席も、ロイヤル・エンクロージャーとそれ以外のエリアに分かれている。一般エリアは混雑しているが、馬の調子を見るには十分である。パドックの最前列に早い時間から陣取って、女王陛下の到着を待つことも可能だ。相当間近で見ることができる。
ブックメーカーも通常どおり馬券を売っている。£5か£10の単勝やガンバレ馬券を買って応援するのが、この国の競馬の楽しみ方のようだ。
この日、ロイヤル・アスコット開催3日目のメインレースはゴールドカップ(GⅠ)。2マイル4ファロン(4000m)という、日本の平地競走で最も長いステイヤーズステークス(3600m)よりさらに長い距離で争われるこのレースは、1807年から続いているというから、距離も長ければ歴史も長い、いかにもイギリスらしいレースである。
私の隣に立っていた美しいドレスの女性が、最後の直線で「○×号いけー」みたいな叫び声をあげていた。どの国でも競馬は楽しい。
長距離を走ってヘトヘトに疲れた馬と騎手が戻ってくる。優勝者には、エリザベス女王自らがトロフィーを授与するとのことで、パドックへ行ってみたが、関係者にもみくちゃにされてよく見えなかった。
6.レースの外で
レースを終えてスタンド裏に出ると、競馬そっちのけでおしゃべりに夢中な人がたくさん。ロイヤル・アスコットのもう一つの魅力は、多彩でおしゃれなお酒の数々だ。ワインにシャンパン、英国名物のピムス、もちろんエールビールも。イギリスのお酒の紹介は、また別の回に特集を組んでみたい。
優雅にアフタヌーン・ティーを楽しんでいる人たちもいる。競馬場の魅力はレースだけではない。巨大なピクニック広場、あるいはパーティー会場の真ん中で馬が走っているイメージ。
レースが終わっても帰る人は多くない。レース後にコンサートが行われる。パーティーはまだまだ終わらない。