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ロンドン食と農の便り(Monthly Report)

ロンドンの食とイギリスの農業について毎月レポートを書きます。

第3回 ロンドンのラーメンブームに秘められた可能性

 近頃ロンドンに増えつつあるラーメン店。味のレベルはなかなかに高く、(値段を除けば)日本人駐在員も満足している。今回はそんなロンドンのラーメン事情に焦点を当てたい。

なんだって?ロンドンまでやってきてラーメン屋巡りやってんの??という声が聞こえてきそうだ。いやいや、単にラーメンが好きだからというわけではない。(いや、ラーメンは好きだが。)この地でラーメンがさらに伸びていくポテンシャルがどれ程あるかを検証するのだ。(麺は伸びてはいけないが。)

ごちゃごちゃ言う前に、早速ラーメン巡りのスタートである。

 

1.IPPUDO

ロンドン中心部、大英博物館の近くのオフィス街に、お馴染みの一風堂(IPPUDO)が店を構えている。

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訪れた人は、全面ガラス張りのお洒落な外装にまず目を奪われる。店を入るとバーカウンターがあって、その奥のレセプションには案内係の美しい女性が控えている。 ここまででもう、この店がモダンなNYスタイルを目指していることが理解できるだろう。

店員たちの元気な”Irasshaimase!!”に迎えられて席に着く。白丸£10(=1850円)、赤丸£11(=2000円)に替え玉£1.5(=270円)は、財布には優しくないが、この国では許容される範囲内だ。味も極めて原点に忠実。麺が少し軟らかめにでてくるので、注文時に""KATAME!"と叫んだ方がよい。

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何度かこの店を訪れたが、客層の大半は中国系などアジア系で占められているようだ。世界中に店舗展開することで、どの国でも勢力を保つアジア系住民への浸透に成功している模様だ。

IPPUDOは、ロンドンにもう1軒店を出している。近年ロンドン東部でオフィス街として大規模に開発されたCanary Wharf に2店目がオープンした。

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仕事のついでに立ち寄ったのは平日の午後2時。店のピークは過ぎた感じだったが、それでも半分以上の席が埋まっていた。

真ん中に厨房があって、その周囲に大きなカウンターが配置されているのがこの店の特徴だ。「おひとりさま」の私は当然カウンターに通されたのだが、隣には白系の若い男性がひとり、さらにその隣にも東欧系の若い女性がやはりひとりでラーメンを啜っていた。

ロンドンではふつう、パブ・バーやコーヒー・ファーストフードチェーンくらいにしかカウンターがなく、ひとりでふらりとレストランに入るのが憚られる雰囲気がある。そんなとき、英国人はだいたいテイクアウトで済ますようだが、ロンドンのオフィス街にも「おひとりさま」の需要はあるはずだ。この新たな市場を開拓することができれば、ラーメン業界のさらなる躍進が期待できそうだ。

 

2.KANADA-YA

IPPUDOの道を隔てた目の前に、KANADA-YAがある。地元の情報誌に度々取り上げらる人気のとんこつラーメン店だ。

土曜の夕方、無性にラーメンが食べたくなって、KANADA-YAへ急行したが、長い行列。待つのを断念し、向かいのIPPUDOへ。

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この前は時間帯が悪かったと反省し、日曜12時の開店時に駆け付けたところ、さらに長い行列を目の当たりにして断念。また向かいのIPPUDOへ。

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結局まだ一度も店内に入れていないので、ラーメンのレポートをすることができません。

客層は、店外の行列を見る限り、8割方アジア系の模様。きっとアジア人の心を打つラーメンが提供されているのだろう。

 

3.Muga

新旧のラーメン店が集まるPiccadilly Circus からちょっと離れたところに最近オープンしたMugaがある。

カウンター主体のお洒落な店内に日本人オーナーが優しく迎えてくれる。塩、味噌、しょうゆ、とんこつといったオーソドックスなラーメンは、しょっぱすぎず脂っこすぎず、落ち着いた味わい。

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ラーメン1杯£9.90 (=1,800円)は平均的な値段だが、うれしいのはランチセット。ラーメンに半チャーハンか餃子がついて£8.90 (=1,600円)は、この界隈のランチ価格としては最安値だ。

店内には常連客らしいグループが何組か。学生時代のほとんどを”ラーメン+半チャーハンセット”で過ごした私には涙が出るほどありがたい店ではあるが、我々のそんなB級生活を知らない英国人が店に飛び込んできたら、このメニューの妙を果たして理解できるのだろうか。

それにしても、胃にも懐にも優しいラーメン屋さん。ぜひ頑張ってもらいたいところだ。

 

4.Bone Daddies

Piccadilly Circusの北東に広がるSoho地区は、エスニックな料理店やらパブやら怪しいマッサージ屋やらがひしめき合う混沌地帯。そんなごちゃ混ぜ文化をカッコいいと思う若者たちに支えられて、ラーメンは実力をつけてきた。

その中でも最先端をゆくラーメン店がBone Daddiesだ。白系もアジア系も東欧系も、若い男女が店外まで溢れかえっていて、店内にはロックンロールが響いている。

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メニューもまた最先端だ。Sour Pepper Ramen とか、T22とか、なんだかよくわからないが、注文してみれば、意外に本格的なラーメンが出てくるのが驚きだ。

ラーメンの基本はやはりスープと麺。これさえしっかりしていれば、少々奇抜なトッピングを加えたとしても、ラーメンの美味しさは揺るがない。本格ラーメンを提供しつつ、ロンドンの若者文化との融合を模索し続けるこの店の姿勢には敬服する。

これからもロンドンのラーメン界の先頭を突っ走っていただきたいところだ。

 

5.Shoryu

 日本食材卸売スーパーのJapan Centreが手掛けるとんこつラーメン屋。徐々に店を増やして、現在5店舗を経営する。

私が訪れたのはRegent St 店。Piccadilly Circus と Trafaflgar Circusの真ん中あたり、歴史的な建物が立ち並び、人々が常に行き来する大通りを歩いていると、”ええ?こんなところに!?”という感じでラーメン店が出現する。

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店内に入ると、店員がにこやかにやってきて、メニューを手渡しつつ「メニューの説明しようか?」と話しかけてくる。さすがに私は"No Thank you" だが、隣の客への説明を聞いていると、とんこつの原料は何か、トッピングはどうやって選ぶか、替え玉とは何かなど丁寧に解説している。確かに、初めてラーメン屋に入った人にはわからないことだらけだろう。ラーメンの客層を広げたいというこの店の意気込みが伝わってくる。

私が座ったのは表通りに面したカウンター席。一面ガラス張りなので外から丸見えだ。ひっきりなしに通り過ぎる人々がじろじろと店内を覗いてゆく。多くの英国人にとってラーメン屋はまだまだ珍しい存在なのだろう。

一組の白人カップルが足を止めた。店頭のメニューと店内を何度も見交わしては何やら相談している。私の食べかけのラーメンを覗き込んできたので、渾身の笑みを浮かべて美味そうに食べてやった。すると、とうとう意を決したのか、二人で店内に入ってきた。すかさず店員がメニューの説明を始める。

ロンドンのラーメンファンを二人増やすことに貢献した満足感で胸がいっぱいだ。(腹もいっぱいだ。)