第12回 コッツウォルズの農園
イギリスのコッツウォルズには農家レストランがたくさんあって、田舎に憧れる都会人が訪れてとても繁盛している。
渡英前、私は複数の人からそう聞いてきた。では早速みてみよう。と、コッツウォルズへ行ってみたんだが、あれれ??
コッツウォルズに散在するいくつもの町を覗いてみたが、どの町にもパブはあるけど農家レストランなんて見当たらない。町の外には、羊しか見当たらない。農家レストランはいずこに?
イギリスの農業に詳しい私の師匠に聞いてみた。
ああ、それたぶん、ディルズフォードのことだよ。日本の農家レストランのイメージとはだいぶ違うけどね。
というわけで、ディルズフォードの農家レストランへ直行だ!
1.Daylesfordへ
ロンドンから車で西へ2時間も行くと、道の両脇が緑に覆われ、丘を登ったり下ったりし始める。右にも左にも羊が現れてきたら、そこはもうコッツウォルズだ。
ディルズフォードは、コッツウォルズの中心的な町のひとつ、モートン-イン-マーシュのすこし手前にあるということだ。視界の悪い緑のトンネルをナビを頼りに走り続け、あれ、迷ったかも?と思った頃に小さな看板を見つける。
到着!
入り口からして、とてもオシャレだ。建物も見かけは古いが、センスよく改装されている。これはレベルが高いぞ。
2.まずは農園に
出発前にHPをチェックしたら ~週末はいちご狩りできます~ とあったので、まずはそちらに。
建物の中に入るとすぐに、⇒農園はあちら⇒ の看板。
店の中を素通りして裏口から外へ。
するとそこにはお兄さんが。私たちの農園へようこそ!
なんでも採っていいよ。の声に押されて農園へ。
ディルズフォード農園は、35年前にオーガニック農園として別の場所で開園し、その後、コッツウォルズに移ってきたとのこと。そんな昔から有機農業に目をつけていたとは、イギリスは歴史の長さが違う。
いちご畑。
広い農園だなーと思って見ていたけど、これは900haある農園のほんの一部だそうな。日本の畑とは規模が二桁違う。
ビニールハウスの中では、トマトやキュウリ、シシトウなど、いろんな野菜が育ってる。この国に来て、麦と牧草以外の農産物を初めてみた。
ビニールハウスのことを、お兄さんはポリトンネルと言ってたな。夏でも涼しいイギリスだが、ポリトンネルの中は高温多湿。野菜の生育には最適な環境のようだ。
摘んできたいちごと野菜は、ここで量り売りされる。いちご一山とキュウリ2本、シシトウ1本。むかし銭湯にあったような大きな秤に、いちごをちょこんと乗せる。ぜんぶで£4くらいだったかな。売る方も買う方も、まあ適当。
3.そして、農家レストラン
今回の訪問の主目的は、農家レストランだった。
休日のお昼どき、お客さんは満員。家族連れ、お年寄りグループ、カップルなど、客層も多彩で活気あふれている。
オープンキッチンの店内は広く、白を基調とした明るく清潔なデザイン。親切でイケメン/キレイな店員たちに、こだわりポイントを丁寧に説明するメニュー。
せっかく農家レストランに来たんだからと、3種類のサラダのコンビネーションを注文したら、採れたて新鮮なオーガニック野菜が山盛り。
肉もチーズも自家製のオーガニック。こちらにも、付け合わせの野菜が彩りを添える。
う~ん、うまい。ロンドンから2時間かけてやってくる価値あり。
レストランに併設されたショップには、農園で作られた食品がずらりと並んでいる。オシャレなパッケージに、どれだけ丹精込めて作られたか書き込まれている。ちょっと高めでも、つい手が出る。
ショップの前の庭で、コーヒーを飲んでくつろぐこともできる。優雅だ。
4.ところで
ディルズフォードの商品は、実はコッツウォルズまで行かなくても買える。
ロンドンにアンテナショップを3店舗を構え、オンラインショップも開設されている。
写真は、ノンッティング・ヒル店。
店内にはオーガニックの商品がいっぱい。コッツウォルズの農園から運ばれてきたことが説明されている。カフェも併設。オシャレな街に溶け込んだオシャレなお店となっている。
でもやっぱり、いちどコッツウォルズの農園を訪れた後の方が、この商品のありがたみを感じられる。
5.結論
コッツウォルズには、農家レストランが少なくともひとつあった。自分のイメージする「農家レストラン」とは、なんか違うけど。なんでだろ?
レストランもショップも、とてもとても洗練されている。料理も商品も。「田舎臭さ」をまったく感じない。
そもそもイギリス人には、「都会=スタイリッシュ、田舎=野暮ったい」という感覚が無いのかも。田舎や農業には「土の匂い」がついてくると思うんだけど。
イギリス人にとっての「田舎」とは何か?新たなテーマを見つけたところで、今回のレポートはここまで。