ロンドン食と農の便り(Monthly Report)

ロンドンの食とイギリスの農業について毎月レポートを書きます。

第32回 速報 Lambing Season(子羊の季節)到来!

 

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日本では桜が開花すると「春がきた!」と感じますよね。イギリスに春の到来を告げるのは "Lambing" なんです。

"Lambing" とは、「子羊(lamb)の出産」です。羊は秋に発情期が来るので、寒くて暗い冬を越えて、ようやく明るく暖かくなってくる3月末から4月にかけて、一斉に子羊が生まれます。

 

この季節には、農場を開放してLambingを見学できるようにする農家もたくさんあります。いってみましょう!

f:id:LarryTK:20180413062203j:plain f:id:LarryTK:20180413062253j:plain 子どもたちがいっぱい

 

イングランド南部のPortsmouth(ポーツマス)近くの農場。 

羊小屋を覗くと、生まれたばかりの子羊が、お母さんにペロペロされていました。まだ足元がおぼつかない感じ。

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下の写真は昨年の光景。初めは立てなかった赤ちゃんが、お母さんにペロペロ(licking)されているうちにあっという間に立てるようになります。

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お腹のどってりと大きくなったお母さん羊(ewe)が大量に群れています。お腹が重すぎて地面にへたり込んでおります。

羊の赤ちゃんは、通常は双子で産まれます。たまに三つ子や四つ子のこともあるとのこと。妊婦(羊)検診でソナーを当てて赤ちゃんの数を確認し、スプレーの色で区別して管理しています。 

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出産の光景をみたくて、羊小屋の前で待ってみました。体を壁にゴシゴシ擦り付けるのは出産の前兆と聞いて、しばらく粘ってみたけど、出産の瞬間には立ち会えず。残念。

 

出産の合間も農場の飼育員たちは大忙し。羊たちに消毒液を塗って、飲み水を汲んで藁を敷いて、清潔な環境を作ります。

子羊のしっぽを輪っかで縛る(tail docking)のも重要な仕事です。しっぽが長いままだと、ハエがたかったりして衛生状態が悪くなり、皮膚病になってしまうとのこと。

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先ほど出産した親子も、柵で囲まれたプライベートルーム(pen)に移動していました。ここでしばらく親子水入らずで暮らします。

 

羊小屋の中で数日過ごした後、子羊はお母さんといっしょに牧場デビューします。広々とした牧場のあちらこちらで、お母さん羊にぴったりくっついて子羊が移動している姿は、なんともかわいらしいですな。

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農場をただ開放するだけではなく、観光農園として施設を整えて、動物とのふれあいの機会などを提供しているところもあります。

ここはCotswolds(コッツウォルズ)の観光農園。大人も子どももきゃあきゃあ言いながら、子羊にミルクをやっています。

f:id:LarryTK:20180411161922j:plain f:id:LarryTK:20180411161953j:plain かわいすぎる

飼育員のおねえさんが、Lambingの仕組みを詳しく説明してくれています。英語が難しくてよく理解できなかったけど、隣にいたお子さまたちはわかったのかな??

f:id:LarryTK:20180411162035j:plain f:id:LarryTK:20180411162058j:plain やめてくれよ~て顔がおもろい

別の農場では、飼育員が子羊を抱いて子どもたちの間を廻っていました。おっかなびっくりの子どもの周りではしゃぐ大人たち。

子どもたちに紛れて手を差し出したら、指を噛まれてしまった!しかしご心配無用。まだ歯が無いので痛くありません。太い指をお母さんのおっぱいと間違えたのでしょうか。

f:id:LarryTK:20180413061233j:plain f:id:LarryTK:20180413061315j:plain 指をかみかみ

 

どの農場も、ベビーカーひいた家族連れや遠足の幼稚園児などで大そう賑わっておりました。イギリスの都会の人々には、週末に子どもを連れて郊外へ出て、自然や動物と触れ合おうという意識が強いように思います。

農場の方も、遊び場を設けたりスナックコーナーを出店したりして、子どもを飽きさせないように工夫しているようです。

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農家の方々がどのように働いているかを間近に見る貴重な機会でもあり、農業の現場と都市の住民との距離を縮めることにも役立っているようです。

ただ、ひとつ気になるのは、「子羊がかわいい!」というところばかりが強調されていること。羊はペットではありません。私たちは彼らの命を頂いて生きているという事実に気づかないふりをしているというのも、この国の特徴かもしれません。