第4回 英国スーパーマーケット界の"風雲児" ALDIとLIDL
英国のスーパーマーケット界は、"Big Four"といわれる大型チェーン店、すなわち、Tesco, Asda, Sainsbury's, Morrisons の寡占状態が長らく続いてきた。そこに割って入ろうとしているのが、ドイツからやってきたディスカウント店、Aldi(アルディ)とLidl(リドル)である。
出典 Kantar Worldpanel
11月、AldiとLidlを合わせて、イギリスにおけるシェアの1割を突破したことがニュースとなった。3年前には5%だったというから、競争の激しいこの業界にあって、破竹の勢いで勢力を伸ばしているということだ。
AldiとLidlの特徴は、何を差し置いても、商品価格の安さだ。これが業界全体の値引き合戦を誘発しているのだが、どのスーパーもこの2店にはかなわない。Asdaの社長が「Aldiとの価格差を半分に縮めたい」と述べているのを見たことがあるが、戦う前から白旗を挙げているようなものだ。
スーパーマーケット界を挙げた価格競争の影響は、各所に現れている。低価格帯で勝負してきた業界最大手のTescoが売り上げとシェアを減らし、米国Walmart傘下のAsdaも振るわない。
ロンドンの好景気を反映して住宅価格などの高騰が進む中、食料品価格は下落が続き、英国の消費者物価指数の上昇に歯止めをかけている。英国市民には嬉しいニュースだが、一方で、供給サイドへの買いたたきも社会問題となっている。農民が牛を連れてスーパーに殴り込みをかけるニュースを見たことがないだろうか。これも価格競争の結末の一端である。
さて、そんな話題のAldiとLidlだが、高品質志向の日本人駐在員には、あまり訪れる機会もないだろう。そこで、今回私が潜入取材してみることにした。
1.ALDI
ドイツに拠点を置くディスカウントスーパーマーケットのAldiは、1990年にイギリスへ進出し、現在500店舗以上を英国内に展開している。
今回私は、ロンドン中心部から車で1時間ほど北へ向かったNorth Finchleyの店舗を訪れた。近くには、日本人駐在員が多く住む閑静な住宅街が広がるが、この店に買い物に来る日本人はそう多くはないだろう。
商店の立ち並ぶ幹線道路沿いにAldiを発見。午後5時だというのにすっかり暗くなった街に、"ALDI"の文字が輝いている。外から見た感じでは、他のスーパーマーケットと大差ない店構えだ。
店内に潜入。明るくて整然としている。仕入れ箱をくり抜いて、そのまま陳列しているのが特徴。見たところ、箱にもともとミシン目を入れて切り取りやすくしているようだ。キレイに並んでいるので見た目に違和感はない。
大量買いする人は、キャスター付きのカゴをガラガラ引いて店内を回る。日本では見たことがないな。
客層が下がってくると陳列が荒れるのは、欧米ではいずこも同じ。衣料品コーナーが少し荒れていたが、床に商品が散乱していないだけ、Pr○m○○kよりよほどマシかと。
レジも整然としている。お姉さんたちの愛想もよい。これはAldiの雇用待遇が他のスーパーマーケットより良いからかもしれない。英国政府が提唱するLiving Wage(生活水準賃金(最低賃金よりも高い))に合わせることをいち早く宣言したのがAldiである。
てなことで、いつの間にやらこんなに買ってしまいました。パスタもチキンも美味しかった。Aldiよありがとう。また来るよ。
2.LIDL
Lidlもまた、ドイツに拠点を置くディスカウントスーパーマーケット。1994年にイギリスへ進出し、600店舗以上を展開する。
土曜の午後、ロンドン北西部のCricklewoodにある店舗へ行ってみた。移民の多い街である。
人と車で大混乱の狭い道を抜けたところに、Lidlを見つけた。店構えは広いが、駐車場が意外と狭くて、ここでもまた大混乱。
なんとか店内に入りました。やはり箱のまま陳列されている。店舗が大きいためか、生鮮品も充実。農場で箱詰めされたままの状態で販売されている。
客が多くなると陳列が荒れてくるのは避けられないことなのか。。
客も多いが、店員の姿もたくさん目に入る。夢中になって買い物カゴに商品を放り込む客たちと、次々に新たな箱を運んでくる店員とのせめぎ合いの中で、なんとか店の秩序が維持されている。
みんなあまりに大量買いするので、レジも混乱気味。それでもレジ係の対応は悪くない。様々なスーパーマーケットを見てきたが、店の高級さとレジ係のサービスは反比例するように思うのは私だけか。
自分も少しばかりお買い物して、店を出た。今度来るときは、周りの客に勢いで負けないよう、しっかり準備して来よう。
最後はお買い物日記みたいになってしまったが、以上がAldiとLidlの訪問記でした。どちらの店も、店内の清潔さ、商品の品質、店員のサービスともに納得できるレベルを維持している。それでいて、この低価格が実現できるのはなぜか。さらに興味が深まるばかりだ。