第10回 英国コーヒー界の新参者 "Flat White"
イギリスは紅茶の国。と思って来てみたら、実は街中がコーヒー屋で溢れていた。地元の人々が飲んでいるのは、LatteやらMocaやら。東京とぜんぜん変わらない!と思いながらメニュー板をよく見たら、なにやら見慣れないものが。
その名は、"Flat White(フラットホワイト)"。カフェラテのようにカップのサイズが選べず、そしてすこし高い。これはいったい何なのか。試してみようではないか。
ということで、今回は、日本ではあまり馴染みのない"Flat White"を楽しみつつ、イギリスのコーヒーチェーンをご紹介していきます。
1.Flat Whiteとは何か??
"Flat White"をググってみると、これはいったい何か、ラテとはどこが違うのか、どうやって作るのかなど、 疑問とそれに対する答えがたくさん出てくる。やっぱりみんな不思議に思ってるんだね。
フラットホワイトは、オーストラリアやニュージーランドでは以前から飲まれていて、5年くらい前にイギリスへ持ち込まれたとのこと。アメリカに進出したのはほんの数年前。日本にはこれから入っていくのかも。
エスプレッソにミルクを注いで作るという基本的なコンセプトはラテと同じ。いまだにカプチーノとラテの違いも理解していないというのに、さらにバリエーションが増えたというわけだ。
ネット情報を辿ってみると、書いてあることが少しずつ違っていて余計に混乱するのだが、これをざっくりとまとめれば、フラットホワイトとはこういうもののようだ。
・ミルクの量がラテより少ないので、エスプレッソの味が前面に出てくる。
・ミルクを泡立てるときに、微小な泡(microfoam)を立てて、エスプレッソに注ぎ込む。その様子は「ベルベットのような(velvety)」と表現される。
さて、事前の勉強はここまで。いざ街へ出て、試してみようではないか。
2.Caffe Nero
いきなりビックリした!
カフェネロはイギリスのチェーン店だったんだ。イタリアから来た店だとずっと思ってた。だって、"The Italian Coffee Company"て書いてあるじゃないか。
気を取り直して。
カフェネロは、ロンドン中心部の賑やかな通りや駅前に数多く展開している。店構えは小さめで、商談の合間に時間を潰す風情のビジネスマンをよく見かける。テラス席でエスプレッソ1杯とタバコ1本吸って、すぐにまた出かけていくイメージ。
コーヒー豆はしっかりとローストされていて、濃い味わい。さすがに"Italian Coffee"を自認するだけある。
カフェネロは、イギリスに500店舗以上ある。他の国にも進出していて、世界全体で700店舗以上を展開しているようだ。
店の外も中も、かなりのFlat White押し。メニュー板には、手書きで欄外に付け足された形跡が。ブームが最近押し寄せてきていることを物語る。
じゃーん。カフェネロのFlat White。
エスプレッソの上にミルクをドバドバ入れるラテとは違って、エスプレッソの中にそっとミルクを注ぎ込む感じ。コーヒーに自分でスジャータを入れるとき、コーヒーが飛び散らないように、そっと注ぎ込むよね。あのスジャータがベルベット状の上品なミルクに置き換わったイメージ。
だから、フラットホワイトはサイズを選べないのだ。ラテのようにミルクの量を増やすことができない。
それでは飲んでみよう。一口めから、エスプレッソの味がガツンとくる。同時に、ミルクも入ってくるので、口の中に苦みが残ることはない。
これはうまいぞ。カフェネロご自慢の濃いエスプレッソが、さらに深い味わいとなった。早速、フラットホワイトのファンになりました。
2.Starbucks Coffee
スタバはイギリスにもたくさんあります。750店舗ほどあるらしい。
この国でもスタバは、ちょっとオシャレな雰囲気。店構えも一風変わったところが多くて、店内には若者が多い気がする。
東京でもそうだったけど、スタバに入るときには、「スタバに入っていく自分」を妙に意識したりして、なんか行動がぎこちなくなったりしませんか?そんなの俺だけかな。
イギリスにFlat Whiteを初めて持ち込んだコーヒーチェーンは、スタバだったらしい。2009年の暮れのこと。今ではメニュー板にもしっかりと載っている。
スタバのFlat Whiteは、エスプレッソ2杯で作っているようだ。たしかに味が濃い。
でもちょっと、ミルクが多いような気が。ラテアートが無いのは別にいいんだけど。ラテのダブルショットとの違いをあまり感じない。
フラットホワイトは、プラコップに入れるとミルクが上層に溜まってしまって、エスプレッソの中に「ベルベットのように」注ぎ込む感じが引き立たないのかもしれない。
3.Costa Coffee
さて次は、コスタコーヒー。イギリスでいちばんお店の多いコーヒーチェーン。その数は1700店舗を超える。ヨーロッパ大陸でもよくみかける。世界中に3000店舗ほどあるとのこと。
郊外にもたくさんあって、店内も広く、地元民の憩いの場となっている。私の家の近くのコスタは、週末になると中東系の移民がたくさん集まってきて、あちらこちらで賑やかに親交を深めておられます。
ちなみに余談ながら、コスタは高速道路のドライブインにも必ずある。通路の右側にコスタの店舗。左側にもコスタの店舗。
外に出ると、またコスタの店舗。ダメ押しで、コンビニの中にもコスタの自販機。いくらなんでも、コスタ多すぎない?
さて、本題に戻ろう。
フラットホワイトは、メニュー板のいちばん上に書いてある。コスタでは、スタバより少し遅れて2010年からイギリス全土に展開しているとのこと。
早速フラットホワイトを注文。バリスタのお姉さんが真剣な顔つきにかわった。エスプレッソに、そおっとそおっと、ミルクを流し込む。途中で何度もミルクのカップを台に置いて、トントンと底を揺さぶる。これが「ベルベット」を作り出す秘訣なのかも。
コスタのフラットホワイト。店内用も持ち帰り用も、見事な出来栄え。この1杯にかけるバリスタの情熱が、ラテアートに浮かび上がっている。
エスプレッソの深い味わいが、ベルベットのように柔らかなミルクとともに口の中に流れ込んでくる。これがフラットホワイトの醍醐味なのだろう。
満足しました。ごちそうさま。