ロンドン食と農の便り(Monthly Report)

ロンドンの食とイギリスの農業について毎月レポートを書きます。

第9回 イギリスで買える日本食材(生鮮品編)

イギリスのスーパーマーケットにはいろんな野菜や果物が並んでいるけど、日本でお馴染みの食材とはちょっと違うな、と感じることはよくある。和食にはやはり日本の食材を使いたいところだが、果たしてイギリスでどれだけ日本食材が手に入るのか。

TESCOやSainsbury'sなどの現地系スーパーマーケットで手に入る日本食材は、大型店のアジアコーナーにほんのすこし並んでいる味噌や海苔くらい。生鮮品にお目にかかったことは一度もない。

日本食材のバラエティを求めるなら、Japan CentreやTK Trading、Atari-yaといった日系のお店に行くしかない。それでも店頭に並ぶ生鮮品の種類は限られている。

なぜ生鮮品が手に入らないのか。その原因は以下の3つに分類される。

①検疫上の理由などにより、日本から英国(あるいはEU)への輸出が禁止されている。(豚肉など)

②日本からの輸出時に商品を検査したり、日本で生産施設の認定を受ければ、英国への輸出は可能であるが、そのために必要となる多大な手間(コスト)をかける業者がいない。(ミカン、魚など)

③日本から英国への輸出に特に制度的な障壁は無いが、輸送時に傷んでしまったり、そもそも値段が高すぎて売れないといった問題があって、実際にはほとんど輸出されない。(イチゴ、メロンなど)

このように、課題は山積みではあるが、それでもなんとかイギリスまで辿り着いたいくつかの商品をご紹介していきたい。

 

1.野菜

野菜の多くは、日本から英国へ輸出するのに特別な検査や認定は必要とされない。日系スーパーをよくよく観察すれば、実際に日本産の野菜は少量ながら入ってきていることがわかる。

 

 f:id:LarryTK:20160503143358j:plain f:id:LarryTK:20160503143343j:plain f:id:LarryTK:20160503143300j:plain f:id:LarryTK:20160503143430j:plain

キュウリやカボチャ、イモ類などは、現地系スーパーで類似の商品を見かけるが、やはり日本産とは品種が違っていて、和食の食材として使うとなると違和感は否めない。日本産が欲しければ、日系スーパーに走っていって、ちょうど入荷されていることを祈るしかない。

 

f:id:LarryTK:20160503143345j:plain f:id:LarryTK:20160503143435j:plain f:id:LarryTK:20160503143712j:plain

今晩は鍋かなと思ったとき、現地系スーパーで野菜を揃えられるか。ほうれん草やレタス、クレソンなどの葉野菜は手に入るけれど、さっと湯通ししてポン酢で食べられるような野菜は少ない。中華系スーパーではハクサイなども見かけるが、ミズナのような柔らかい葉野菜は日系スーパーでないとなかなか手に入らない。

シイタケは最近のマッシュルームのブームに乗って、ヨーロッパでも多く作られているようだ。でも、日本産シイタケのような肉厚な商品にはお目にかかれない。

 

f:id:LarryTK:20160503143605j:plain f:id:LarryTK:20160503143711j:plain  f:id:LarryTK:20160515081746j:plain

大葉やわさびは、もともと英国の食生活には登場しなかった食材であるが、ハイエンドな日本料理店では見かけるようになってきた。イギリスのお金持ちの間にも浸透していくことを期待したい。

 

2.果物

果物は、病害虫を拡散させるリスクが高いため、輸出の際に検査が必要となるなど、手間がかかるものが多い。それでも、イギリスへの輸出が可能な商品はたくさんある。あとは、コストの問題さえ解決できれば、、、

 

f:id:LarryTK:20160504144850j:plain   f:id:LarryTK:20160503143837j:plain 

柿や梨は日本での輸出検査が必要であるが、イチゴやメロンは検査不要。いずれも、英国への輸出は可能なのに、なかなかスーパーの店頭には並ばない。果肉が軟らかくて傷みやすいという輸送面での課題も大きい。品質の高い日本産の果物に、ぜひとも南欧産と店頭で勝負してもらいたいものだ。

ミカンなどのかんきつ類の輸出は特に難しい。病害虫のまん延を防ぐため、登録された生産農園や選果施設からしか輸出ができず、このような登録を受けた農園・施設は日本国内にほとんど存在しない。(高知県北川村のユズ農園・施設くらい)

 

 3.水産物

魚や貝などの水産物は、認定・登録された施設からしかEUへ輸出できない。これは、EU域外から持ち込まれる水産物とEU内で流通する水産物との衛生管理のレベルを合わせるため。

EUへ水産物へ輸出するためには、卸売市場や水産加工施設などがEUの求めるHACCP基準(衛生基準)を満たしている必要がある。EUの要求する衛生管理のレベルは高く、例えば築地市場で売買される魚はEUへは輸出できない。

このため、イギリスのスーパーで見つけられる日本産の水産物の種類はかなり限定されている。

 

f:id:LarryTK:20160503143645j:plain 

日本産の冷凍ホタテは世界中で人気が高く、輸出体制も確立している。イギリスにもかなり入ってきているようだ。そういえば昔、アメリカでお馴染みのTrader Joe's の棚に並んでいるのを見つけて、びっくりしたことがある。

 

f:id:LarryTK:20160515082019j:plain   f:id:LarryTK:20160503143506j:plain

水産加工施設の認定は、魚種や加工品目ごとに行われるので、輸出できる魚種の幅がなかなか広がらない。これまでに加工施設が認定されて輸出可能となった魚種は、ホタテ、ブリ・ハマチ、サバ、マグロくらいか。

日系スーパーで扱われている魚も、多くは日本からの輸入品ではなく、世界中の海から集められている。そもそも日本でも、寿司ネタのほとんどはノルウェー産だったりインド洋産だったりするわけなので、水産とはそういう世界なんだろう。海はつながっているしね。

 

4.肉類

肉類で日本からEUへ輸出できるのは牛肉だけ。豚・鶏肉や肉加工品、卵などは、すべて輸入禁止となっている。BSEや口蹄疫、鳥インフルエンザなど、いったん国内に持ち込まれると大打撃を食らうので、いずれの国も輸入には非常に慎重だ。

 

f:id:LarryTK:20160503143547j:plain 

和牛肉は、値段は高いが日系スーパーで手に入る。ちなみにHarrod'sでも手に入る。和牛を日本から輸出するには、認定を受けた施設で加工しなければならず、このような施設は日本全国に数か所しかない。

和牛は日本でもお高いが、ロンドンではさらに高い。なお、横に並んでいる和州牛はオーストラリア産。ブリティッシュレストランなどでも、"Wagyuバーガー"などがメニューに載っていることがあるが、オーストラリア産であることが多いので、店員に尋ねた方がいい。お値段は和牛に比べればお手頃。

 

f:id:LarryTK:20160504144325j:plain  f:id:LarryTK:20160504144444j:plain

肉エキスなど、加工食品の原材料として使われる食材も、日本からの輸出は禁止されている。イギリスで販売されているカレールゥの原材料を見れば、肉エキスが含まれていないことがわかる。 

 

以上、いろいろと食材を見てきた。あれっ、こんなものも輸入できないのか。と思うものも多いけど、まずはそのことを知った上でスーパーの棚をチェックしてみよう。食品業界のみなさんの努力の成果が見えてくるよ。

第8回 喧噪の街 愛しのEdgware Road

 

f:id:LarryTK:20160403165602j:plain

最近、引越しました。

これまで約半年、St John's Woodに住んでいました。とても静かできれいな住宅街。

ところが、そこから10分も歩いたところには、アラブ人の街、Edgware Roadが広がっているのです。センジョンとは打って変わって、昼も夜も人々がたむろし、店の明かりが消えない賑やかな街。

自分は、閑静な住宅街よりこっちの街の方が性に合ってたかも。ということで今回は、私の思い出アルバムの意味も込めて、愛すべきこの喧噪の街をご紹介します。

 

  f:id:LarryTK:20160403171558j:plain f:id:LarryTK:20160403171858j:plain

Edgware Road (エッジウェアロード)は、観光スポットのMarble ArchからSt John's Wood Roadまで、2マイルくらい続く道路沿いにいろんなお店が並びます。

どの店も、看板には必ずアラビア語が。たまに英語が見当たらない看板もあって、何を売ってるのかぜんぜんわからん!

レストランにはテラス席(歩道にはみ出してテーブルと椅子が並べてあるだけにみえるが、、)があって、水タバコの甘い香りが街を覆っています。おじさんたちが幸せそうに水タバコを吸ってるのをみると、いちど試してみたくなるなあ。

通りの中間地点にEdgware Roadという地下鉄の駅があります。これがまた、路線ごとに駅の位置がぜんぜん違っていて、しかも地下でつながっていない!ろくに案内板もないという、この街らしいグチャグチャな駅なので、来てみたいという方は要注意。

 

f:id:LarryTK:20160403171932j:plain 

あと、この街の名物?といえば、歩行者の道路横断。片道2車線の広い道路を、老若男女が昼夜を問わず横切ります。彼らには、信号とか横断歩道とかあんまり関係ないみたい。夜中にこの道路を運転するときとか、マジで怖いよ。

さて、次はこのブログの趣旨にそって、Edgware Roadの食にスポットを当てましょう。

 

1.食料品店

f:id:LarryTK:20160403171413j:plain

この街には、小さな食料品店がたくさんあります。どの店も、野菜や果物が溢れんばかりに店先に並んでます。看板は当然アラビア語。

f:id:LarryTK:20160403171338j:plain  f:id:LarryTK:20160403171248j:plain

中に入ると、ピクルスの瓶がズラリ。アラブ人はきっと野菜が好きなんだな。イギリス人にも見習ってもらいたいよ。

何かを安売りしてたけど、肝心の品名が読めない!

 

f:id:LarryTK:20160403173404j:plain f:id:LarryTK:20160403173432j:plain

別の店も覗いてみました。店の奥にはハラル対応の肉売り場。私たちには普通の肉屋との違いを見分けることができないけれど、ここの人々にとっては大事なことなのです。

 

 2.チャーチストリート・マーケット

f:id:LarryTK:20160403171215j:plain f:id:LarryTK:20160403172012j:plain

ロンドンにはオシャレなストリートマーケットがいくつもあって、地球の歩き方に載ってたりして日本人にも人気ですが、このマーケットはまったくオシャレじゃない!

毎日朝から昼過ぎまで、500mくらいの道路を封鎖して、古着やガラクタ(失礼。)、生鮮食品などのテントが並びます。いつも賑やかだけど、日本人どころかイギリス人の顔もあまり見ないな。 

 

f:id:LarryTK:20160403172308j:plain f:id:LarryTK:20160403171047j:plain

 マーケットのテントでいちばん目立っているのが、魚やさん。発泡スチロールの中にたくさんの種類の魚が並んでます。店の裏ではお兄さんたちが魚を捌いてる。こんな人ごみの中で… とても気になるけど、買う勇気がでない。。

 

3.レストラン

Edgware Roadにはたくさんレストランがあります。どの店も、夜中まで家族連れやグループがワイワイやっていて、大変繁盛している様子。

えっ?アラブ人の女性は戒律が厳しいから、レストランに入れないんじゃないかって?ええ、彼女たちはロンドンでも街へ出るときは必ずブルカを被ります。そうやって戒律を守って、そしてレストランで友達同士で楽しく談笑していますよ。

 

f:id:LarryTK:20160403171455j:plain f:id:LarryTK:20160403173525j:plain

シシカバブのお店。テイクアウェイができます。£8くらいだったかな。とても美味しかったので皆さんにも紹介したいけど、店の名前が長くて読めないのが残念。

焼きトマトと焼きししとう、それと山盛りのサラダにサルサ、ナンのようなパンとフライドライスがセットでついてきます。まるで日本の焼肉定食みたい。こうやって、肉・野菜・炭水化物をセットで提供する習慣は、ヨーロッパには無いよね。アラブは日本から遠く離れた地域だけど、同じアジア圏の食文化というところで、実はつながっているのかも。 

 

f:id:LarryTK:20160404010708j:plain f:id:LarryTK:20160404010752j:plain

この街にはチキン屋が多いのも特徴。この店もハラル対応してます。フライドチキンとチップスで£2.5は破格の安さ。味もしっかりついていて、ビールのおつまみに最適。

 

f:id:LarryTK:20160403171657j:plain f:id:LarryTK:20160403171625j:plain

Cafeという名のケバブ屋さん。夜中まで客足が絶えません。チキンとラムを選べます。£5で大量の肉を包んでくれるから、これだけでもうお腹いっぱいだ。

 

以上、Edgware Roadのご紹介でした。半年通っていたくらいでは、この街の奥深さにまだまだ到達していないと思うけど、なにか、日本の下町の光景をみている気がしました。月島あたりとイメージが被るかも。

特に食べ物に関しては、野菜や炭水化物を大事にしていることや、味付けがしっかりしていることなど、我々のB級グルメと近しいものを感じるね。 

私の愛しのEdgware Road。新しい家からはちょっと遠くなっちゃったけど、また訪れてみたいと思います。いっしょに探検してみようという勇気のある方、募集中です!

 

第7回 イギリスのおいしい朝ごはん

「イングリッシュ・ブレックファスト」という料理を知っていますか?

『イギリスで美味しい食事がしたければ、1日に3回朝食を取ればいい』 "To eat well in England, you should have a breakfast three times a day." (Somerset Maugham) という有名なフレーズには、昼にサンドイッチ、夜はパブでビールとチップスという質素な生活を送っていると、心から賛意を表したくなります。

ロンドンを一人で訪れたけれど、レストランでおひとりさまディナーはちょっと敷居が高いな...という方でも、朝のカフェなら気軽に入れるのも嬉しい。

今回は、そんな愛すべきイギリスの朝ごはん達のご紹介です。

 

1.フル・ブレックファスト

イギリスにやってきたら、まずは朝のカフェに入って「フル・ブレックファスト」(イングリッシュ・ブレックファスト)を注文してみたいところです。

 

f:id:LarryTK:20160228095851j:plain  

私が渡英して初めてひとりで入ったお店がここ。ホテルの近くにあった "Cafe Concerto" というイタリアっぽい雰囲気のチェーン店ですが、お昼まではイングリッシュ・ブレックファストを出しています。

中を覗くと、一人でコーヒー飲みながら新聞を読んでるおじさんもいて、東京のカフェと変わらない様子。メニューもわかりやすい。

勇気を出して"English Breakfast, please."と頼んでみました。そして出てきたのがこれ。

f:id:LarryTK:20160228095745j:plain

目玉焼き(Fried egg)とソーセージにベーコン、焼きトマトとハッシュドビーフ、焼いたマッシュルーム、ひよこ豆のトマト煮とカリカリ焼いたパン。大変ボリュームのある朝ごはんでした。今日はこれで十分満足。昼飯の心配をする必要もなくなった!

イングリッシュ・ブレックファストは、こうして私のお気に入りとなり、その後もいろんなお店で試してみることに。

 f:id:LarryTK:20160228095619j:plain  f:id:LarryTK:20160228095546j:plain f:id:LarryTK:20160306200208j:plain

さすがに定番中の定番メニューだけあって、どの店に入ってもほぼ同じ顔触れ。すこししょっぱめの味つけもほぼ同じ。

付け合わせをどれにするかとか、焼き方をどうするかとか、ゴタゴタ聞いてこないのも楽ちん。(パンをホワイトにするかブラウンにするかは聞かれることがある。)

味音痴のくせに値段だけやたら高いレストランにぶち当たって、後悔することの多い日々にあって、これだけはいつも安定した出来栄え。やはり伝統の味なんだな~。

イギリスに着いたばかりでどこへ行けばいいかわからない方、英語に自信がなくてレストランに入る勇気のない方、朝ごはんにイングリッシュ・ブレックファストを食べて、元気をつけてロンドン見物に出かけましょう!

 

f:id:LarryTK:20160228095956j:plain 

ちなみに、スコットランドのエジンバラで食べた朝ごはんがこれ。フル・スコテッィシュ・ブレックファストと書いてあって、スコットランド名物のハギス(羊の内臓のミンチ)を固めて焼いたもの(トマトの左下。その右側はブラックプディング)が付いてきました。いろいろ工夫されているものの、基本的なコンセプトはイングランドと変わらない感じ。

 

 2.その他の定番メニュー

 ロンドンのカフェの朝のメニューは、フル・ブレックファスト以外にもいろいろあります。でも、ラインナップはだいだいどこでも同じ。

 

f:id:LarryTK:20160228100211j:plain  

いま住んでるアパートの近くにあるカフェ。これまたイタリア系。イギリスのカフェ、もっと頑張れ~。

 

f:id:LarryTK:20160228100109j:plain  f:id:LarryTK:20160228100256j:plain

左はスクランブルエッグとスモークサーモン。右はマフィンの上にポーチドエッグとハムを乗せたエッグ・ベネディクト。酸っぱめのオランデーズソースがかかっているのが特徴です。 

f:id:LarryTK:20160228100343j:plain

 ポーチドエッグの中身を開けると、半熟の黄身がトロリ。

 

f:id:LarryTK:20160228100424j:plain

 エッグ・ベネディクトで卵の下敷きになっているハムをほうれん草に替えると、エッグ・フロレンティーナになります。写真は、ほうれん草がグラタン風になって出てきたもの。さすがイタリア人シェフ。料理に情熱を感じるな~。

さらにこの下敷きをスモークサーモンに替えると、エッグ・ロワイヤルとなります。食材を一つ変えるだけで別の料理になるなんて、ちょっとオシャレじゃないですか!

それで、ここまで見てきたまとめの感想をひとつ。イギリスの朝ごはん、食材がすごく限られているような。パン、卵、ハム、サーモン、ほうれん草、ソーセージ、ベーコン、ポテト、マッシュルーム、トマト、ひよこ豆。これくらいの食材を使って、調理方法と組み合わせを工夫していろんなメニューを作る。それがイギリスの朝ごはんの素性なんだなと、至極納得。

 

 3.番外編

 f:id:LarryTK:20160228100630j:plain

これ何だかわかりますか。お粥かな?いやいや、甘い。いや、考えが甘いとかじゃなくて、味が。

中に入っているのはオーツ麦。アメリカではオートミールと呼ばれますが、こちらでは「ポリッジ」"porridge"と呼びます。

ポリッジがお粥とは異なるポイントは、『甘い』こと。どうして甘いかというと、オーツ麦を水ではなく、牛乳で煮ているから。いや、それだけでは甘くないね。牛乳お粥の上に、ハチミツとジャムをどびゃーとかけるから。

この甘い牛乳お粥が、ロンドンの若者に人気のヘルシー朝ごはんなんだそうです。

  

f:id:LarryTK:20160306220530j:plain f:id:LarryTK:20160306220350j:plain

ロンドン市内に多数展開するサンドイッチショップの"Pret A Manger"にも、朝はポリッジがずらりと並んでました。

ひとつ買って開けてみると、やはりオーツ麦の牛乳煮。ハチミツをドビャっとかけて食べます。甘い。お粥にはやっぱり塩かけて食べたいんだけどな。。

ああそうか、お粥だと思うからダメなんだ。牛乳を使うという意味では、お粥というよりも、コーンフレークに近いのかも。そう考えると、この甘さにも少しは納得できるかな。。。。

やっぱり俺は納得できねえ!!!

 

第6回 イギリスの田園風景

英国の首都ロンドンは、新旧の建物がひしめき合い、あらゆる人種が行き交う雑然とした街であるが、ここロンドンから車を郊外へ2時間も走らせれば、景色は一変する。

なだらかな丘を覆う一面の緑と、日がな草を食む羊や牛たち。こののどかな光景こそが、実はイギリスの多くの地域に見られる代表的な田園風景なのだ。

f:id:LarryTK:20160130065059j:plain

「田園風景」という言葉は、イギリスの田舎(Countryside)の描写としてよく使われるが、イギリスには田んぼが無いから、放牧地とじゃがいも畑が延々と広がっている光景を「田園」と称するのは若干ミスリーディングな気もする。

いずれにしても、英国の原風景ともいえるこの緑の丘から、私たちは、この国の奥深い歴史を学ぶことができそうなのだ。今回は、その第一歩を踏み出してみようと思う。

 

1.農地を取り囲む垣根

 

車を田舎に進めると、道は徐々に細くなり、対向車がすれ違うのも困難な道幅となってくる。そんな道の両脇には、高さ3メートルもありそうな生け垣が必ずそびえ立っていて、運転手の視界をさらに狭めてくる。

また、農地と農地の境目や、後で説明するフットパスと農地の間に、立派な石垣が組まれていることも多い。

f:id:LarryTK:20160121073353p:plain f:id:LarryTK:20160121071247j:plain

              (NFU HPより)

これらの 垣根は、農地をぐるりと囲んでいて、遠くからみても農地の境界が一目瞭然となっている。日本と違って一区画の農地面積がだだっ広い(農家1戸当たり農地面積は30倍以上!)から、一つの小高い丘を数枚のブロックに区切っているイメージだ。

垣根は、放牧された羊たちが外へ出ていかないように、部外者が農地に侵入しないように、しっかりと張り巡らされている。生け垣の保全に尽力する団体の情報では、英国内に40万km以上の生け垣があるそうだ。(出典:Hedgelink)

ああ、これがあの、歴史の教科書にむかし出てきた「エンクロージャー」(囲い込み)の結末なのね!などと勝手に感動していたが、なんだかどうも、何千年も前から農地は垣根で囲まれていて、英国の風物詩となってきたらしい。エンクロージャーによって新たに設置された垣根はほんの一部だとのこと。

イギリスの農地は、中世以前は開放耕地制(オープンフィールド)だったとか、16世紀と18世紀のエンクロージャーで多くの農地が囲い込まれたとか、俺に教えたやつ、ちょっとロンドンまで来い!

 

f:id:LarryTK:20160121071339j:plain

道路を走っていると、両脇に延々と生け垣やフェンスが続いていて、その向こう側に羊や馬が放牧されているのが見えるわけだが、あるとき、生け垣が突然途切れて、羊さんたちが道路脇にまではみ出している場所に出くわした。

なんだこれ、危ないじゃないか!と思って、なぜここにだけ垣根が無いのか、現地のおじさんに聞いてみた。

”ああ、ここはCommon Land だからね。”

おおおおおっっっ!!これが、あの「コモンズ」なのか!!!

私の感動を皆さんに伝えるのは難しい。私がむかし仕事で携わった「入会地」。日本の学者先生たちが好んで議論したがる「コモンズ」。それがいま、俺の目の前に広がっている!

すこし解説すると、コモンランド/コモンズ、日本語でいう入会地(いりあいち)とは、村人たちが共同で管理し、それぞれが自由に出入りして、英国であれば勝手に羊の放牧をしていい場所。日本ならシイタケや薪を取っていい場所をいいます。かなり古いデータだが、1989年時点で136万エーカー(54万ha)も残っているらしい。

単に勝手に入っていいよ、と言うだけでなく、それが村人たちの「権利」として確立しているところに、社会の成り立ちの複雑さが見え隠れする...

やっぱりうまく伝えられないや。今回のレポートは、羊さんたちが道路脇まではみ出してきていて、運転しているとヒヤリとする場所がある、というところまで。その先の解説は、私がもっと勉強してからご報告します。

 

2.フットパス

イギリス人はウォーキングが大好きだという話をよく聞く。田舎に行くと、たしかに必ずといっていいほどフットパス(遊歩道)が整備されている。

「遊歩道なんて、日本にもいっぱい整備されているよ」

いやいや、ここが違うんだな。「整備されている」というが、イギリスのフットパスは実はあんまり整備されていない。なになに、何言ってるの??

日本で遊歩道といえば、歩道がコンクリで固められて、両側を安全柵が囲んでいて、ところどころにベンチやら観光案内やらが置かれているイメージだが、英国のフットパスは、林の中の自然に踏み固められた獣道みたいなもの。たまに迷子にならない程度に、ドングリマークの標識が出ているくらい。

なんだ、そんなもんか。とガッカリしないでいただきたい。何の珍しさもないように見えるこの獣道みたいなものから、イギリスの社会と歴史が垣間見えてくるのだ。

f:id:LarryTK:20160121071147j:plain f:id:LarryTK:20160130064803j:plain f:id:LarryTK:20160130064839j:plain 

 

下の写真をご覧いただきたい。フットパスを遮るように柵が設置されている。そう、この柵の向こう側は私有地なのだ。

フットパスの多くは、私有地を次々と横切って伸びている。だから、次の私有地に入るところには柵があって、頑丈なカギが掛けられている。何者かが柵を開けて羊を逃がしたりしないようにするためだ。

一方で、この柵には、フットパスを歩く人々が通り抜けられる工夫が施されている。2枚目の写真は、ロックをカチッと開けると扉が小さく開いて、すぐにまた元通りにロックされる仕組みだ。3枚目は、踏み台を登って柵をヒョイっと越えることができるようになっている。 

f:id:LarryTK:20160130064922j:plain f:id:LarryTK:20160130065003j:plain f:id:LarryTK:20160130065031j:plain

なぜこんなに面倒な柵を作るのか。それは、フットパスが、市民の歩く「権利」を実現するために整備されているからだ。

誰だって、自分の土地に他人が入ってくるのは嫌だ。そのせいで、自分の持っている羊が逃げてしまうなんてもってのほかだ。しかし、地主たちは、長年にわたる権利闘争によって市民が得た「歩く権利」を保障しなければならない。その利害のせめぎ合いの結果が、こんなに奇妙複雑な柵の形状に表れているのだ。

 

コモンランドといい、フットパスといい、のどかな田園風景からは想像し難い、長い歴史と権利調整の過程が刻み込まれている。英国の土地を巡る長い歴史をたどる旅は、まだ始まったばかりだ。 

第5回 "Wagamama"と"Yo! Sushi"はなぜイギリス人にウケるのか

英国にある日本料理店で、現地の人に受け入れられ、もっとも幅広く展開しているにも関わらず、日本人が決して立ち寄らない店がある。それが、今回取り上げる "Wagamama" と "Yo! Sushi"だ。ロンドンの街を歩いていると、そこかしこに店舗が見つかる。

日本人には頗る評判の悪いこの2つの日本料理店、いや、結論を少し先取りしていうとすれば、"Japanese Style Restaurant"と呼ぶべきなのだろうが、これらの店に潜入し、英国人を惹きつける魅力がどこにあるのかを探るのが、今回のレポートの主題である。

 

1.Wagamama

Wagamamaは、1992年に中国系イギリス人によって始められ、現在、イギリスを中心としてヨーロッパその他世界各国に140店舗以上を展開する。

私が訪れたのは、ロンドン中心部から少し北にあるFinchley Roadそばのショッピングモールに入る店舗。休日の夕方、そろそろお腹が空いてくるかなという頃だ。

ガラス張りの店内はかなり広く、私が入ったときはまだガランとしていた。店の片隅に身を寄せて様子を探ることにして、カップルの隣のテーブルに落ち着く。そのときはまだ、私の"Wagamama"ライフがこんなに楽しいものになろうとは思ってもみなかった...

f:id:LarryTK:20151213042437j:plain f:id:LarryTK:20151213042608j:plain

Wagamamaのメニューは、ラーメンに焼きそば、丼もの、カレーなど幅広い。ウェイターがやってきて、何やらいろいろ説明したそうにしていたが、それを遮って焼きそばを注文。それからだった。笑いが溢れそうになるのをずっとガマンするはめになったのは。

まずは、私の右隣にいた東欧系のカップル。

注文をとりにきたこれまた東欧系の若いウェイターに、彼女がいきなり「私、お腹空いてないんだよね」と言い出す。「腹減ってなかったら店来るな!」と日本人なら怒り出すところだが、ウェイター君は嫌な顔ひとつせず、少食の女性にお勧めのメニューを次々と紹介し始める。ついでにお互いの母国の話なんかも出てきて、5分ほど楽しい会話が続く。この女、おしゃべりに満足して帰っちゃうんじゃないかと心配し始めた頃、ついにカツカレーをご注文。

ついでに彼氏の方は、日本語の勉強でもしているのか、したり顔で彼女に「ヤサイとはベジタブルのことだよ」とか解説している。そんな彼が注文したのはパッタイ。いやそれ、日本食じゃないから・・・

ちなみに、カツカレーを食べ始めた彼女さん。途中で「このディッシュにカレーは合わないわ」と言い出して、カレーの代わりにテリヤキソースをぶっかけていました。カレーの神様がきっと泣いてる・・・

 

さて次、私の左隣に白人の若いお姉さんが一人で座った。イギリスにも「おひとりさま女子」がいるんだ!

彼女は座るなりウェイターに「私の注文はもう決まってるの」と言ってラーメンを注文。そしてメモ帳を取り出して、夢中で何やら執筆活動を始める。

ほどなくラーメンがやってきたが、執筆活動を止める気配はない。3分経過・・5分経過・・・。お姉さん、ラーメンは早く食べたほうがいいと思うんだけど。。

もう十分に麺が伸びたと思われる頃、ようやく食べ始めた。それでも美味しそうに食べてるんだから、俺の心配は余計なお世話ということか。

 

さらに左隣に座ったのは白人の老夫婦。日本食は初めてなのか、店に入ったところから、しきりにメニューを見ながらウェイターに何かを聞いている。

途中から話し声が聞こえてきたのだが、どうやらラーメンのスープがどんな味なのかをすべての種類のラーメンについて詳細に聞いているらしい。これまたウェイター君は嫌な顔ひとつせず、丁寧に解説を繰り返している。残念ながら、この老夫婦が注文を決断する前に、私がしびれを切らして店を出てしまった。お望みのラーメンは見つかったのだろうか。

私と入れ違いに入ってきたのは、若い白人夫婦と2人の子供。子供ははしゃいで店内を走り回っている。若夫婦はメニューをテーブルに放り出して、何やら真剣に話しこんでいる...

 

f:id:LarryTK:20151213042714j:plain

私が食べた焼きそばの味はどうだったかって?そんなことはどうでもいいんだよ。ちゃんと完食しました。

それよりも、この店にとって大切なことは、私といっしょにいた東欧系のカップルも、白人のお姉さんも、老夫婦も、若い家族も、家に帰ったときに「今日はJapaneseを食べて楽しかった」と思ってもらえること。そんなサービスをこの店は届け続けているのです。

 

2.Yo! Sushi

Yo! Sushiは、回転寿司スタイルのレストラン。1997年創立以来店舗を増やし、現在、ロンドンを中心に70店舗以上。海外にも進出している。

今回はBaker Street駅に直結した店舗に潜入。Wagamama同様、日本人駐在員の評判がかなり芳しくないこの店の実態に迫った。

f:id:LarryTK:20151228075454j:plain  f:id:LarryTK:20151228075848j:plain

日曜午後3時という閑散時でもあり、私が入ったときにいた客は、東洋系4人家族とおひとりさまの旅行者らしいおばさんのみ。定点観測のため1時間ほど粘ったところ、その間に、白人と黒人のおじさん2人連れが来ては去り、白人の父子が来ては去り、東欧系の女性二人組が来ては去り、中華系のカップルが来るといった状況。かなり回転が速い。寿司の回転じゃなくて、客の、ね。

f:id:LarryTK:20151228080049j:plain  f:id:LarryTK:20151228080144j:plain

ベルトコンベヤーには、カリフォルニアロール(写真左:£3.6=650円)と枝豆その他が少々回っている。コンベヤーはスカスカだが、店員は特にこれを埋める気はないらしい。

ちなみに、カリフォルニアロールにサーモンを載せて七味をかけるとサーモンドラゴンロール(写真右:£4.5=810円)となる。どの皿も蓋に値札のようなものが貼ってあって、これで製造時間がわかる仕組みになっている。

この店の寿司がマズいという日本人は多いが、果たしてどうか。現地系スーパーでサンドイッチと並んで売っている寿司ロールと比べて、どれだけ違いがあるだろうか。というか、カリフォルニアロールなんて、誰が作ってもウマくもマズくもならないように思うけど。

f:id:LarryTK:20151228080318j:plain

この店の売りは、なんといってもメニューのわかりやすさにある。日本食の知識がまったくなくても、回っている皿をとるか、あるいはメニューの写真を指差せば注文ができる。実際、客の多くは、座ったらまずコーラを注文し、それからメニューを手当り次第に指差していた。

ところで余談だが、客の注文した寿司が既にコンベヤーで回っているとき、店員はどうするか。日本では必ず新しい寿司を握って出してくると思うが、ここでは店員がコンベヤーを見廻してヒョイとその皿を持ってくる。この国に「新鮮さ」という概念は無い。

 

店内には料理担当が2人、ウェイトレスが1人。シェフという雰囲気ではなく、客の注文に応じてマニュアル通りに淡々と小皿を作るアルバイト職人の様相。

スキルの不要な調理法を確立して、回転の速い客を捌く。サービスを最低限に抑え、広い店内を少ない店員で回す。わかりやすいメニューで一見客の敷居を下げる。これってまさにファストフードの戦略だよな。

"Japanese Style"と「回転寿司」というアイデアを活用した新たな形態のファストフード店。それがYo! Sushiだ。

そうだとすれば、日本国内で複数のハンバーガチェーンが競っているように、競合が現れればロンドンも激戦地帯となるだろう。Yo! Sushiの質が低いとみるならば、高品質にこだわって勝負することも可能だと思う。ただ、1500円超の時給が求められるハイパー物価高のこの地で、大規模なシステムを整えた寿司チェーン店を新たに立ち上げることができるかどうか。これまでのところ、そんな気概のある日本人を私は知らない。

f:id:LarryTK:20151228080229j:plain

ロール系寿司3皿と焼きそば、味噌汁(お代わり自由)を注文して、£19ちょっと。これでお腹いっぱいにはなる。この国ではFish & Chipsとコーラで£15を超えるわけだから、まあまあ許容範囲か。

それから、焼きそばは完食できませんでした。どの店でも焼きそばはハズレがないと思っていたのだが。。

第4回 英国スーパーマーケット界の"風雲児" ALDIとLIDL

英国のスーパーマーケット界は、"Big Four"といわれる大型チェーン店、すなわち、Tesco, Asda, Sainsbury's, Morrisons の寡占状態が長らく続いてきた。そこに割って入ろうとしているのが、ドイツからやってきたディスカウント店、Aldi(アルディ)とLidl(リドル)である。 

f:id:LarryTK:20151128150035p:plain

                                                            出典 Kantar Worldpanel

11月、AldiとLidlを合わせて、イギリスにおけるシェアの1割を突破したことがニュースとなった。3年前には5%だったというから、競争の激しいこの業界にあって、破竹の勢いで勢力を伸ばしているということだ。

AldiとLidlの特徴は、何を差し置いても、商品価格の安さだ。これが業界全体の値引き合戦を誘発しているのだが、どのスーパーもこの2店にはかなわない。Asdaの社長が「Aldiとの価格差を半分に縮めたい」と述べているのを見たことがあるが、戦う前から白旗を挙げているようなものだ。

スーパーマーケット界を挙げた価格競争の影響は、各所に現れている。低価格帯で勝負してきた業界最大手のTescoが売り上げとシェアを減らし、米国Walmart傘下のAsdaも振るわない。

ロンドンの好景気を反映して住宅価格などの高騰が進む中、食料品価格は下落が続き、英国の消費者物価指数の上昇に歯止めをかけている。英国市民には嬉しいニュースだが、一方で、供給サイドへの買いたたきも社会問題となっている。農民が牛を連れてスーパーに殴り込みをかけるニュースを見たことがないだろうか。これも価格競争の結末の一端である。

 さて、そんな話題のAldiとLidlだが、高品質志向の日本人駐在員には、あまり訪れる機会もないだろう。そこで、今回私が潜入取材してみることにした。

 

1.ALDI

ドイツに拠点を置くディスカウントスーパーマーケットのAldiは、1990年にイギリスへ進出し、現在500店舗以上を英国内に展開している。

今回私は、ロンドン中心部から車で1時間ほど北へ向かったNorth Finchleyの店舗を訪れた。近くには、日本人駐在員が多く住む閑静な住宅街が広がるが、この店に買い物に来る日本人はそう多くはないだろう。

 f:id:LarryTK:20151126115333j:plain

商店の立ち並ぶ幹線道路沿いにAldiを発見。午後5時だというのにすっかり暗くなった街に、"ALDI"の文字が輝いている。外から見た感じでは、他のスーパーマーケットと大差ない店構えだ。

f:id:LarryTK:20151126115426j:plain  f:id:LarryTK:20151126115510j:plain

店内に潜入。明るくて整然としている。仕入れ箱をくり抜いて、そのまま陳列しているのが特徴。見たところ、箱にもともとミシン目を入れて切り取りやすくしているようだ。キレイに並んでいるので見た目に違和感はない。

f:id:LarryTK:20151126115620j:plain

大量買いする人は、キャスター付きのカゴをガラガラ引いて店内を回る。日本では見たことがないな。

f:id:LarryTK:20151126115658j:plain

客層が下がってくると陳列が荒れるのは、欧米ではいずこも同じ。衣料品コーナーが少し荒れていたが、床に商品が散乱していないだけ、Pr○m○○kよりよほどマシかと。

f:id:LarryTK:20151126115846j:plain

レジも整然としている。お姉さんたちの愛想もよい。これはAldiの雇用待遇が他のスーパーマーケットより良いからかもしれない。英国政府が提唱するLiving Wage(生活水準賃金(最低賃金よりも高い))に合わせることをいち早く宣言したのがAldiである。

f:id:LarryTK:20151126115750j:plain

てなことで、いつの間にやらこんなに買ってしまいました。パスタもチキンも美味しかった。Aldiよありがとう。また来るよ。

 

.LIDL

Lidlもまた、ドイツに拠点を置くディスカウントスーパーマーケット。1994年にイギリスへ進出し、600店舗以上を展開する。

土曜の午後、ロンドン北西部のCricklewoodにある店舗へ行ってみた。移民の多い街である。

f:id:LarryTK:20151129020554j:plain

人と車で大混乱の狭い道を抜けたところに、Lidlを見つけた。店構えは広いが、駐車場が意外と狭くて、ここでもまた大混乱。

f:id:LarryTK:20151129020656j:plain  

なんとか店内に入りました。やはり箱のまま陳列されている。店舗が大きいためか、生鮮品も充実。農場で箱詰めされたままの状態で販売されている。

f:id:LarryTK:20151129020738j:plain

客が多くなると陳列が荒れてくるのは避けられないことなのか。。

客も多いが、店員の姿もたくさん目に入る。夢中になって買い物カゴに商品を放り込む客たちと、次々に新たな箱を運んでくる店員とのせめぎ合いの中で、なんとか店の秩序が維持されている。

f:id:LarryTK:20151129020858j:plain f:id:LarryTK:20151129021958j:plain

みんなあまりに大量買いするので、レジも混乱気味。それでもレジ係の対応は悪くない。様々なスーパーマーケットを見てきたが、店の高級さとレジ係のサービスは反比例するように思うのは私だけか。

自分も少しばかりお買い物して、店を出た。今度来るときは、周りの客に勢いで負けないよう、しっかり準備して来よう。

 

最後はお買い物日記みたいになってしまったが、以上がAldiとLidlの訪問記でした。どちらの店も、店内の清潔さ、商品の品質、店員のサービスともに納得できるレベルを維持している。それでいて、この低価格が実現できるのはなぜか。さらに興味が深まるばかりだ。

第3回 ロンドンのラーメンブームに秘められた可能性

 近頃ロンドンに増えつつあるラーメン店。味のレベルはなかなかに高く、(値段を除けば)日本人駐在員も満足している。今回はそんなロンドンのラーメン事情に焦点を当てたい。

なんだって?ロンドンまでやってきてラーメン屋巡りやってんの??という声が聞こえてきそうだ。いやいや、単にラーメンが好きだからというわけではない。(いや、ラーメンは好きだが。)この地でラーメンがさらに伸びていくポテンシャルがどれ程あるかを検証するのだ。(麺は伸びてはいけないが。)

ごちゃごちゃ言う前に、早速ラーメン巡りのスタートである。

 

1.IPPUDO

ロンドン中心部、大英博物館の近くのオフィス街に、お馴染みの一風堂(IPPUDO)が店を構えている。

f:id:LarryTK:20151024070654j:plain

訪れた人は、全面ガラス張りのお洒落な外装にまず目を奪われる。店を入るとバーカウンターがあって、その奥のレセプションには案内係の美しい女性が控えている。 ここまででもう、この店がモダンなNYスタイルを目指していることが理解できるだろう。

店員たちの元気な”Irasshaimase!!”に迎えられて席に着く。白丸£10(=1850円)、赤丸£11(=2000円)に替え玉£1.5(=270円)は、財布には優しくないが、この国では許容される範囲内だ。味も極めて原点に忠実。麺が少し軟らかめにでてくるので、注文時に""KATAME!"と叫んだ方がよい。

f:id:LarryTK:20151024070721j:plain   f:id:LarryTK:20151024070746j:plain

何度かこの店を訪れたが、客層の大半は中国系などアジア系で占められているようだ。世界中に店舗展開することで、どの国でも勢力を保つアジア系住民への浸透に成功している模様だ。

IPPUDOは、ロンドンにもう1軒店を出している。近年ロンドン東部でオフィス街として大規模に開発されたCanary Wharf に2店目がオープンした。

f:id:LarryTK:20151024070812j:plain     f:id:LarryTK:20151024070947j:plain

仕事のついでに立ち寄ったのは平日の午後2時。店のピークは過ぎた感じだったが、それでも半分以上の席が埋まっていた。

真ん中に厨房があって、その周囲に大きなカウンターが配置されているのがこの店の特徴だ。「おひとりさま」の私は当然カウンターに通されたのだが、隣には白系の若い男性がひとり、さらにその隣にも東欧系の若い女性がやはりひとりでラーメンを啜っていた。

ロンドンではふつう、パブ・バーやコーヒー・ファーストフードチェーンくらいにしかカウンターがなく、ひとりでふらりとレストランに入るのが憚られる雰囲気がある。そんなとき、英国人はだいたいテイクアウトで済ますようだが、ロンドンのオフィス街にも「おひとりさま」の需要はあるはずだ。この新たな市場を開拓することができれば、ラーメン業界のさらなる躍進が期待できそうだ。

 

2.KANADA-YA

IPPUDOの道を隔てた目の前に、KANADA-YAがある。地元の情報誌に度々取り上げらる人気のとんこつラーメン店だ。

土曜の夕方、無性にラーメンが食べたくなって、KANADA-YAへ急行したが、長い行列。待つのを断念し、向かいのIPPUDOへ。

f:id:LarryTK:20151024071710j:plain 

この前は時間帯が悪かったと反省し、日曜12時の開店時に駆け付けたところ、さらに長い行列を目の当たりにして断念。また向かいのIPPUDOへ。

 f:id:LarryTK:20151024071744j:plain

結局まだ一度も店内に入れていないので、ラーメンのレポートをすることができません。

客層は、店外の行列を見る限り、8割方アジア系の模様。きっとアジア人の心を打つラーメンが提供されているのだろう。

 

3.Muga

新旧のラーメン店が集まるPiccadilly Circus からちょっと離れたところに最近オープンしたMugaがある。

カウンター主体のお洒落な店内に日本人オーナーが優しく迎えてくれる。塩、味噌、しょうゆ、とんこつといったオーソドックスなラーメンは、しょっぱすぎず脂っこすぎず、落ち着いた味わい。

f:id:LarryTK:20151024072052j:plain  f:id:LarryTK:20151024072151j:plain

ラーメン1杯£9.90 (=1,800円)は平均的な値段だが、うれしいのはランチセット。ラーメンに半チャーハンか餃子がついて£8.90 (=1,600円)は、この界隈のランチ価格としては最安値だ。

店内には常連客らしいグループが何組か。学生時代のほとんどを”ラーメン+半チャーハンセット”で過ごした私には涙が出るほどありがたい店ではあるが、我々のそんなB級生活を知らない英国人が店に飛び込んできたら、このメニューの妙を果たして理解できるのだろうか。

それにしても、胃にも懐にも優しいラーメン屋さん。ぜひ頑張ってもらいたいところだ。

 

4.Bone Daddies

Piccadilly Circusの北東に広がるSoho地区は、エスニックな料理店やらパブやら怪しいマッサージ屋やらがひしめき合う混沌地帯。そんなごちゃ混ぜ文化をカッコいいと思う若者たちに支えられて、ラーメンは実力をつけてきた。

その中でも最先端をゆくラーメン店がBone Daddiesだ。白系もアジア系も東欧系も、若い男女が店外まで溢れかえっていて、店内にはロックンロールが響いている。

f:id:LarryTK:20151024072552j:plain  f:id:LarryTK:20151024072641j:plain

メニューもまた最先端だ。Sour Pepper Ramen とか、T22とか、なんだかよくわからないが、注文してみれば、意外に本格的なラーメンが出てくるのが驚きだ。

ラーメンの基本はやはりスープと麺。これさえしっかりしていれば、少々奇抜なトッピングを加えたとしても、ラーメンの美味しさは揺るがない。本格ラーメンを提供しつつ、ロンドンの若者文化との融合を模索し続けるこの店の姿勢には敬服する。

これからもロンドンのラーメン界の先頭を突っ走っていただきたいところだ。

 

5.Shoryu

 日本食材卸売スーパーのJapan Centreが手掛けるとんこつラーメン屋。徐々に店を増やして、現在5店舗を経営する。

私が訪れたのはRegent St 店。Piccadilly Circus と Trafaflgar Circusの真ん中あたり、歴史的な建物が立ち並び、人々が常に行き来する大通りを歩いていると、”ええ?こんなところに!?”という感じでラーメン店が出現する。

f:id:LarryTK:20151024073016j:plain   f:id:LarryTK:20151024073104j:plain

店内に入ると、店員がにこやかにやってきて、メニューを手渡しつつ「メニューの説明しようか?」と話しかけてくる。さすがに私は"No Thank you" だが、隣の客への説明を聞いていると、とんこつの原料は何か、トッピングはどうやって選ぶか、替え玉とは何かなど丁寧に解説している。確かに、初めてラーメン屋に入った人にはわからないことだらけだろう。ラーメンの客層を広げたいというこの店の意気込みが伝わってくる。

私が座ったのは表通りに面したカウンター席。一面ガラス張りなので外から丸見えだ。ひっきりなしに通り過ぎる人々がじろじろと店内を覗いてゆく。多くの英国人にとってラーメン屋はまだまだ珍しい存在なのだろう。

一組の白人カップルが足を止めた。店頭のメニューと店内を何度も見交わしては何やら相談している。私の食べかけのラーメンを覗き込んできたので、渾身の笑みを浮かべて美味そうに食べてやった。すると、とうとう意を決したのか、二人で店内に入ってきた。すかさず店員がメニューの説明を始める。

ロンドンのラーメンファンを二人増やすことに貢献した満足感で胸がいっぱいだ。(腹もいっぱいだ。)