ロンドン食と農の便り(Monthly Report)

ロンドンの食とイギリスの農業について毎月レポートを書きます。

第13回 ロンドン杯カップラーメン選手権

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ロンドンに来て1年。ラーメン大好きの私は、スーパーの棚に並ぶカップラーメンに手を伸ばしては、激しく後悔する日々を過ごしてきた。

それにしても、英国製のカップ麺はどこがダメなのか。もしかするとちょっとくらい見どころもあるのではないか。それで今回、英国製カップラーメンをずらりと並べ、味やにおい、外見など体系的に調査してみようと思い立った。

これだけのカップ麺を一人で食べるのは無理なので、うちの家のひとにも手伝ってもらった。ごめんよ~

それではさっそく、第1回ロンドン杯カップラーメン選手権のはじまりはじまり。まずは、精鋭5選手の入場行進だ!

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1.Pot Noodle (Unilever)

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大手スーパーで最もよく見かけるカップラーメンといえば、"Pot Noodle"だろう。1970年代に誕生し、現在は食品製造大手のUnileverから販売されている。年間1億7千万個製造されているそうだ。

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今回の選手権では、フレーバーを揃えるべく、できるだけチキン味に統一して買ってきた。

蓋を開けると、麺に白い粉が振りかけられていて、チキンの香りが漂ってくる。しょう油が入っている思われる袋を取り出してお湯を注ぐ。指示通りに2分待ってかきまぜ、さらに2分待ってまたかきまぜる。

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さて、時間になったので、たぶん完成。麺がまだ戻っていないように見えるが、構わず試食タイムに突入。

、、、やっぱり麺が硬い。そして油っぽい。スープは。。う~ん。なんて言うか、イギリスあるあるの例の味だ。いわゆるBluntな、味気のない味。パンチの効かない味。

そうだ、こういう時のためにしょう油の袋がついていたじゃないか!ぼじょぼじょと入れてみる。う~ん、このしょう油もまた味がない。。

今日これからの長い苦難を想像しつつ、完食。

 

2.Mug Shot (Symington's)

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食品製造大手のSymington'sから販売されている"Mug Shot"。商品名からもわかるとおり、マグカップに中味を開けてお湯を注ぐ袋タイプが主力であるが、カップタイプも広く販売されている。

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麺の上には、やはり粉が振りかかっている。指示通りにお湯を注いですぐにかき混ぜ、5分待つ。

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完成したと思われるので、試食タイム。やたらと短くて平べったい麺は、粉っぽいのが気になるものの、Pot Noodle より食べやすい。

スープはとろみがついてドロドロ。味は・・鶏を塩で茹でたときの茹で汁の味。いちおう食える味かなと思いながら食べ進んでいると、ん?スープの味が途端に濃くなった。こ、これは・・粉調味料の味そのままだ。スープがドロドロすぎて、底にたまった調味料がうまく混ざっていなかったのだ。舌に強い刺激を感じつつ、完食。

 

3.Speedy Noodle (Newgate)

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イギリスでは大手スーパーのプライベートブランド(PB)が普及していて、カップラーメンも例外ではない。各スーパーが自らのブランドのカップ麺製品を販売しているのだが、今回は出場希望が多かったので、PBには選手権への出場を自粛いただいていた。

ところが、ディスカウントストアLidlでNewgateの"Speedy Noodle"を買ってしまった後に、これもLidlのPBであることに気付く。しかし、せっかく買ったんだからと、今回は特別に出場を認めてあげた。

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やはり麺の上に白い粉。フタに"Ready in Minutes"と書いてあるが、いったい何分待てばいいのか書いてない。小さな説明書きを読み進めてようやくMinutesとは4分であることを知る。

f:id:LarryTK:20160912065209j:plain お湯を入れるとビニールのフタがふにゃふにゃに。

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4分後、試食開始。麺があまりに短くて箸で掬えない。ベビースターラーメンより短い。そして、ベビースターラーメンのように硬い。

細かく刻んだセージの葉が入っていて、ハーブの香りが漂ってくる。スープはなぜかカレーの味がして、どのフレーバーを買ったんだっけ、と何度もラベルを確認した。たしかにチキン味なのだが。

スープがドロドロになるまで調味料の粉を溶かし続けると、フレーバーにかかわらずカレー味になるという新発見に感激しつつ、完食。 

 

4.Deli Box Noodles (Batchelor's)

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"Batchelor's"は100年を超える伝統あるスープ製品のブランドで、現在はPremier Foodsから販売されている。Premier Foodsといえば、今年春にカップヌードルの日清食品と業務提携することが発表され、大きな話題となった。

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今回の出場商品の中で唯一、粉調味料の袋が別についている。麺の上にはグリーンピースも乗っている。やはり日清食品と提携するだけのことはある。きっとカップラーメンを美味しくしようと真剣に取り組んでいる会社なのだろう。食べる前から期待が高まる。

f:id:LarryTK:20160912065711j:plain 2分待ったらかき混ぜてまた2分。よしできた。試食開始。

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一口食べたところで、うぷっ。。。。

粉ぐすりの味がする。麺からもヘンな味が染み出てくる。そして、くさい。家のひとたちが次々と脱落して食卓を離れていく。

"Mug Shor"のような薄い味とは違って、しっかりと味はついているのだ。日本のカップ麺を真似て、調味料の配合などで頑張って味付けしたのかもしれない。その結果がこれか。。。これよりは、鶏の茹で汁のBluntな味の方がまだ食べられる。

Premier Foodsのみなさん。ぜひ横浜のカップヌードルミュージアムへ行って、カップ麺の真髄を学んできていただきたい。これからの変身ぶりに期待してます。

でも今日は、俺ももう食べられない。カップ麺の神様ごめんなさい。

 

5.Kabuto Noodles

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"Kabuto Noodle"は私にとって忘れられない商品だ。渡英したばかりの昨年8月、荒んだ食生活を送っていた私は、Sainsbury'sでカップラーメンを見つけて喜んで購入した。

大きな期待とともに勢いよく麺を啜りあげた私は、すぐさま現実を悟り、『オェ。スープも麺も、烈しくマズい』とFBに感想を書き残している。

さて、"Kabuto Noodle"とはあれ以来1年ぶりの再会だ。その間に何か変化しただろうか。

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麺は卵色。調味料の臭いはあまりしない。麺に調味料が刷り込まれている模様。指示どおりに3~4分待ってかきまぜ、さらに1分待つ。

f:id:LarryTK:20160912070511j:plain なんだか麺が長いぞ。

f:id:LarryTK:20160912070540j:plain 麺が伸びる伸びる~~。て、長すぎやろ!f:id:LarryTK:20160912071957p:plain

なが~い麺を、ずるずるずるずる。ん?スープは薄いしょうゆ味で、すこし辛い。麺に香草がまとわりついてくる。これ、ラーメンじゃないや。タイヌードルのような東南アジアの風情がある。そう思うと、これは意外と食えるかも。

 今回は、難なく完食した。日本のカップ麺と同じ味を求めるから、拒絶反応を起こすのだ。「カップラーメンはかくあるべし」という既成概念を超えて、世界の多様な味を楽しむ余裕がこの1年で私の中に生まれたのかな。

それとも、私の舌が単に鈍感になっただけか?

 

6、戦い終えて

ロンドン杯の5連戦は、予想以上にハードであった。戦い終えて、家のひとびとに「いちばん美味しかったのはどれか」と聞いたのは、私の誤りであった。もちろん答えは「該当なし」

それで改めて、「もう一度食べなければならないとすれば、あえて、どれを選ぶか」と苦渋の選択を迫った。悩んだ末に出た答えは、『Pot Noodle2票、Mug Shot2票』であった。

しかし、「イギリスのカップ麺は不味い」と決めつけてしまう前に、思い返しておかなければならない。これら5種類のカップ麺は、いずれも順調に販売されているのだ。英国の人々がこのカップ麺のどこに価値を見出しているのか、きっと私はまだまだ理解できていないのだろう。

でも、カップラーメン選手権は、もう、二度とやらない。