第33回 現代に生きる王室御用達の名店コレクション(前編)
英国には「王室御用達」(Royal Warrant) 制度があります。
日本の「宮内庁御用達」は戦後に正式な制度で無くなってしまったそうですが、英国では15世紀頃から続くRoyal Warrantの伝統が、現代の合理的な認証制度に変身を遂げ、いまも800の業者が王室より紋章を授与されています。
日本からの旅行客に人気のスイーツ店や、駐在員の通うデパートなどでも、王室御用達の紋章を見つけることができます。
この紋章が商品に付いていると、なんだかリッチな気持ちになりますね。宝探しをする気持ちで、ロンドン市内で見つけられる紋章のコレクションに出かけてみませんか。
紋章探しに出かける前に、Royal Warrant についての基礎知識を少し。
現在使われている紋章は3種類。エリザベス女王、エディンバラ公(女王の旦那さん)、チャールズ皇太子(プリンス・オブ・ウェールズ)の3名に認証の権限があり、それぞれの紋章を授与しています。
1840年には王室御用達協会が設立され、業者からの申請の受理・審査などの手続きを行っています。いったん認証を受けたら一生安泰というわけではなく、5年毎に再審査され認証が更新されます。このあたりの手続きはとても合理的なのです。
王室御用達の認証を受けるのは、業者であって商品ではありません。王室が具体的にどの商品を買っているかは明らかにされていないため、商品のパッケージに女王の紋章がついていても、実際にその商品を女王が使っているとは限りません。
ただ、認証の際に「チョコレート製造」とか「紅茶商」といった業種の指定が行われるので、王室がその業者から購入する商品の種類については、だいたいの想像がつくようになっています。
前置きが長くなりました。では街へ繰り出しましょう。
1.Charbonnel et Walker
高級ブランド街 Bond Street に隣接して小さなお店を構える Charbonnel et Walker(シャルボネル エ ウォーカー)は、1875年から続く老舗チョコレート屋さん。エリザベス女王から「チョコレート製造」の認証を得ています。
若かりしエリザベス女王の写真も
マダム・シャルボネルの秘伝のレシピを守って手作りされているというトリュフ型のチョコが有名。そして、パッケージの美しさはピカイチですね。
高級チョコなので(私には)少々お高いように思えますが、お手軽に買える3個入、4個入の小さなパッケージもあります。そういえば、日本から来てバレンタイン用に爆買いしていったおねえさまもおられました。。
パッケージにしっかりと紋章
2.Prestat
Prestat(プレスタ)もまた、1902年から続く老舗チョコレート屋さん。「チャーリーとチョコレート工場」の作者 Roald Dahl のお気に入りの店だったということでも有名です。女王よりPurveyors of Chocolates (チョコレート専門店)との認証です。
がが~ん、改装中
Piccadillyに面したアーケード街に本店があったはずと訪ねて行ったところ、なんと改装休業中でがっかり。
気を取り直して。本店は後日訪問してレポートすることにして、今回はプレスタのチョコを買いにSelfrigdesまで足を延ばしました。
3.Selfridges
ロンドンの銀座通り Oxford Street に大店舗を構える Selfridges(セルフリッジ)は、1909年創業の高級デパート。デパートといえば Harrods(ハロッズ)が有名ですが、こちらの方が日本のデパートに通じる上品さがあって、個人的には好みです。
重量感あふれる玄関
化粧品コーナーをササっとすり抜け、チョココーナーへ。ロンドン土産にチョコをという方にはお勧めの品揃えです。先ほどのシャルボネルもあるし、もちろんプレスタもたくさんの種類が取り揃えられています。
充実のチョココーナー
プレスタのチョコは、棚を覗くたびに新しい商品が加わっているのが楽しいですね。
今回見つけたのは、London Gin (ロンドンジン)味。ジンは、いまロンドンで最も流行っている商品です。私も流行に乗って買ってしまいました。
こちらもパッケージに紋章
ところでここセルフリッジも、女王から認証を受けているはずなんですが、例の紋章が見つからない。店の内外もぐるぐる回ったし、オリジナル商品のパッケージも黄色い紙袋も眺め尽くしたけど、どこにも見当たりません。
セルフリッジが女王から認証を受けたのは2001年と、100年以上の歴史あるこのデパートとしては比較的最近のこと。高級デパートとしてのブランドが既に確立しているので紋章は不要なのかなと勝手に推測して いますが、ひょっとして私の見落としかも。見つけた方がいたらぜひご一報を。
4.Partridges
高級住宅街 Chelsea(チェルシー)の玄関口となるSloane Square に店を構えるPartridges(パートリッジ)は、正面にエリザベス女王の紋章が輝く高級食材スーパーです。
毎週土曜には店の前の広場で青空マーケットが開かれ、チェルシーの住人たちが集まります。優雅な休日ですな。
店内にも高級食材が並びます。英国産のジャムやクッキー、フランス産のテリーヌの奥にはアメリカ産のスナックなどもあって、目移りすることこの上ない。
オリジナルブランドの紅茶は、箱に女王の紋章が入っています。ティーバッグの一つずつにも紋章があって、毎回ロイヤルな気持ちでティータイムを楽しむことができます。
値段もお手頃で、お土産にお勧め。このお店でしか購入できないお値打ち品です。
5.Fortnum & Mason
Fortnum & Mason(フォートナム・メイソン)は、日本人には紅茶のブランドで有名ですが、Piccadilly本店は様々な食材やワインを揃えるデパートとなっています。女王からも「食材及び必需品商」と認証されていて、この店が紅茶専門店でないことがわかります。
フォートナム氏とメイソン氏の脇を通り、立派な紋章の下を潜る
1707年の創業以来、大英帝国の威信にかけて世界中から様々な食材を調達してきた フォートナム・メイソンの栄光の軌跡は、昨年発売された The Cook Book に詳しく紹介されています。
下の写真は、フォートナム・メイソンがはるばるインドから運んできたカレー粉と、北海で獲れるタラを組み合わせたKedgeree (ケジャリー)のレシピ。イギリスの伝統的な朝食メニューです。イギリス人も昔は美味しい料理を作っていたのね。
見返しに紋章をみつけた
紅茶が山と積まれた地上階を抜けて、らせん階段を降りていくと、地下は食品コーナーになっていて、オリジナルブランドの調味料や瓶詰などが並んでいます。
上の階には、いろいろな商品を組み合わせたhamper(ピクニックバスケット)も揃っています。 ビクトリア時代の貴族文化がそのまま残っているのですね。
お土産を買いにフォートナム・メイソンへ行ったら、地上階の紅茶だけでなく、他の階へもぜひ足を延ばしてください。おしゃれなエプロンやティーカップなど、ついつい買いたくなる商品がたくさん見つかりますよ。
王室御用達のお店はまだまだたくさんあって、とても1回では周りきれませんでした。次回も引き続き、コーヒー屋さんなど素敵なお店をご紹介します。